【CFA®︎ L1 Portfolio Construction LM2】Portfolio Risk and Return: Part II を要点解説|CML・システマティック・リスク・ベータ・CAPMとSML・パフォーマンス指標

Learning Module 2「Portfolio Risk and Return: Part II(ポートフォリオのリスクとリターン Part II)」は、無リスク資産とリスク資産の組み合わせ、資本配分線と資本市場線、システマティック・リスクと非システマティック・リスク、リターン生成モデルとベータ、CAPMと証券市場線、そしてシャープ・レシオなどのパフォーマンス指標を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM2のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM2には9つのLOSがあります。
- LOS 1:無リスク資産とリスク資産のポートフォリオを組み合わせることの意味を説明するdescribe the implications of combining a risk-free asset with a portfolio of risky assets
- LOS 2:資本配分線(CAL)と資本市場線(CML)を説明するexplain the capital allocation line (CAL) and the capital market line (CML)
- LOS 3:システマティック・リスクと非システマティック・リスクを説明し、非システマティック・リスクを負っても追加のリターンを期待すべきでない理由を説明するexplain systematic and nonsystematic risk, including why an investor should not expect to receive additional return for bearing nonsystematic risk
- LOS 4:リターン生成モデル(マーケット・モデルを含む)とその用途を説明するexplain return generating models (including the market model) and their uses
- LOS 5:ベータを計算・解釈するcalculate and interpret beta
- LOS 6:資本資産価格モデル(CAPM)をその前提とともに説明し、証券市場線(SML)を説明するexplain the capital asset pricing model (CAPM), including its assumptions, and the security market line (SML)
- LOS 7:CAPMを用いて資産の期待リターンを計算・解釈するcalculate and interpret the expected return of an asset using the CAPM
- LOS 8:CAPMとSMLの応用を説明し、示すdescribe and demonstrate applications of the CAPM and the SML
- LOS 9:シャープ・レシオ、トレイナー・レシオ、M²、ジェンセンのアルファを計算・解釈するcalculate and interpret the Sharpe ratio, Treynor ratio, M2, and Jensen’s alpha
LM2のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 資本市場線(CML)は資本配分線の特殊なケースで、効率的なリスク・ポートフォリオが市場ポートフォリオであるもの
- 投資家の予想が異なる(異質な期待)場合、投資家ごとに資産の評価が異なるため、全員に共通の最適リスク・ポートフォリオは得られない
- 投資家は借入をして市場ポートフォリオに投資することで、ポートフォリオにレバレッジをかけられる
- システマティック・リスクは市場や経済全体に影響し分散できないリスクで、非システマティック・リスクは相関の低い資産の組み合わせで分散により消せる個別のリスク
- ベータ・リスク(システマティック・リスク)は価格づけされリターンを得られるが、非システマティック・リスクは価格づけされない
- 資産の期待リターンはベータ・リスクに依存し、CAPM E(Ri) = Rf + βi[E(Rm) − Rf] で計算できる
- 証券市場線(SML)はCAPMを表したもので、効率的かどうかにかかわらずすべての証券に適用される
- CAPMの期待リターンは資本予算の意思決定、ポートフォリオのパフォーマンス評価(シャープ・レシオ、トレイナー・レシオ、M²、ジェンセンのアルファ)、証券選択に利用できる
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:無リスク資産とリスク資産の組み合わせ
無リスク資産とリスク資産ポートフォリオを組み合わせると、期待リターンと標準偏差の関係は直線になります。無リスク資産は分散も相関もゼロなので、ポートフォリオの標準偏差はリスク資産の比率に比例します。
- 組み合わせのリスク・リターンは直線上に並ぶ
- σ_p = (1 − w₁)σ_i(w₁:無リスク資産の比率)
- 貸付ポートフォリオ:無リスク資産を保有(w₁ > 0)
- 借入ポートフォリオ:無リスク金利で借りてリスク資産に投資(w₁ < 0)
- 無リスク資産を加えると最適リスク・ポートフォリオ以外のリスク資産ポートフォリオより優位に
LOS 2:資本配分線(CAL)と資本市場線(CML)
CALは無リスク資産と任意のリスク・ポートフォリオの組み合わせを表す直線で、そのリスク・ポートフォリオを市場ポートフォリオとしたものがCMLです。投資家が同質的な期待を持つなら、全員が同じ市場ポートフォリオを保有します。
- CML:CALのうち最適リスク・ポートフォリオが市場ポートフォリオのもの
- CMLの傾き=市場ポートフォリオのシャープ・レシオ
- 市場ポートフォリオの保有はパッシブ運用の考え方と整合
- CML上の点:市場ポートフォリオと無リスク資産の組み合わせ
- 借入金利が貸付金利より高い場合、CMLは市場ポートフォリオの点で折れ曲がり、右側(借入部分)の傾きが緩やかになる
LOS 3:システマティック・リスクと非システマティック・リスク
総リスクは、市場全体に影響するシステマティック・リスクと、個別企業に固有の非システマティック・リスクに分けられます。非システマティック・リスクは分散投資でコストをかけずに消せるため、市場はそれにリスク・プレミアムを支払いません。
- 総分散=システマティック分散+非システマティック分散
- システマティック・リスク:金利、景気、インフレなど市場全体の要因、分散不可能
- 非システマティック・リスク:個別企業・業種の要因、分散可能
- 分散でほぼゼロにできるリスクに報酬は払われない
- リターンに反映されるのはシステマティック・リスク(ベータ)のみ
LOS 4:リターン生成モデルとマーケット・モデル
リターン生成モデルは、資産のリターンを1つまたは複数の要因で説明するモデルです。市場の超過リターンだけを要因とするのがマーケット・モデル(単一指数モデル)で、ベータの推定などに使われます。
- マルチファクター・モデル:マクロ経済、ファンダメンタル、統計的要因
- 例:ファーマ・フレンチの3ファクター(市場、規模、バリュー)、カーハートの4ファクター(+モメンタム)
- 単一指数モデル:E(R_i) − R_f = β_i[E(R_m) − R_f]
- マーケット・モデル:R_i = α_i + β_iR_m + e_i
- 回帰の切片が α、傾きが β、誤差項 e は個別(非システマティック)リスクを表す
LOS 5:ベータの計算と解釈
ベータは、市場ポートフォリオのリターンの変化に対する資産リターンの感応度で、システマティック・リスクの尺度です。市場との共分散を市場の分散で割って求め、市場ポートフォリオのベータは1になります。
- β = Cov(R_i, R_m)/σ_m² = ρ_i,m σ_i/σ_m
- β = 1:市場と同じシステマティック・リスク
- β > 1:市場より変動が大きい、β < 1:小さい
- 無リスク資産のベータは0
- ポートフォリオのベータは構成資産のベータの加重平均
LOS 6:CAPMの前提とSML
CAPMは、資産の期待リターンがベータで表されるシステマティック・リスクだけで決まるとするモデルで、それをグラフにしたものが証券市場線(SML)です。SMLは、効率的なポートフォリオだけでなく個別証券を含むすべての資産に適用されます。
- 前提:投資家はリスク回避的で効用最大化、平均・分散で判断
- 前提:同質的な期待、単一期間、無リスク金利で無制限に貸借可能
- 前提:摩擦のない市場(取引コスト・税金なし)、資産は無限に分割可能、投資家はプライス・テイカー
- SML:横軸ベータ、縦軸期待リターン、傾きは市場リスク・プレミアム
- CMLは横軸が標準偏差で効率的ポートフォリオのみ、SMLは横軸がベータで全資産
LOS 7:CAPMによる期待リターンの計算
CAPMの期待リターンは、無リスク金利に、ベータ×市場リスク・プレミアムを加えたものです。この期待リターンは、投資家の要求収益率や資本コストとして使われます。
- 市場リスク・プレミアム=E(R_m) − R_f
- ベータが高いほど期待リターンが高い
- 期待リターンは要求収益率・資本コストとして利用
- ベータが0なら期待リターンは無リスク金利
LOS 8:CAPMとSMLの応用
CAPMとSMLは、資本予算での割引率の設定、ポートフォリオのパフォーマンス評価、証券選択に応用されます。予想リターンがSMLより上にある証券は割安、下にある証券は割高と判断されます。
- 資本予算:CAPMの期待リターンをプロジェクトの割引率として使用
- 証券選択:予想リターン > CAPMの要求リターン(SMLより上)なら割安で買い
- 予想リターン < CAPMの要求リターン(SMLより下)なら割高
- ポートフォリオ構築:SMLを使って証券を選び、最適ポートフォリオを構築
- パフォーマンス評価:シャープ・レシオ、トレイナー・レシオ、M²、ジェンセンのアルファ
LOS 9:シャープ・レシオ・トレイナー・レシオ・M²・ジェンセンのアルファ
シャープ・レシオとM²は総リスク(標準偏差)で、トレイナー・レシオとジェンセンのアルファはシステマティック・リスク(ベータ)でリスク調整したパフォーマンス指標です。十分に分散されたポートフォリオならベータ系、そうでなければ総リスク系が適しています。
- シャープ・レシオ=(R_p − R_f)/σ_p
- トレイナー・レシオ=(R_p − R_f)/β_p
- M²=(R_p − R_f)σ_m/σ_p + R_f(市場と同じ総リスクに調整したリターン)、M² − R_m がM²アルファ
- ジェンセンのアルファ=R_p − [R_f + β_p(R_m − R_f)]
- シャープ・レシオとM²は同じ順位を与える、トレイナー・レシオとジェンセンのアルファはベータ基準
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