ひとことで言うと

  • 信用リスク量は、デフォルト確率(PD)デフォルト時損失率(LGD=1 − 回収率)デフォルト時エクスポージャー(EAD)の3要素で考えます。
  • 平均的に見込まれる損失が期待損失(EL)= PD × LGD × EADです。
  • 期待損失を超えて発生しうる損失は非期待損失(UL)とよばれ、信用VaRなどで計測します。

この記事では、証券アナリスト1次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「信用リスク量の計測」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/債券分析
大分類 (7) 社債投資と信用リスクの分析
協会の学習ポイント 信用リスク量の計測における基本的な要素および手法について理解する。

信用リスク量の計測とは

社債や貸出金を保有するとき、「どのくらい損をする可能性があるか」を数字でつかむのが信用リスク量の計測です。その基本は、損失を決める3つの要素に分解して考えることです。

3つの基本要素

  • デフォルト確率(PD):一定期間(通常1年)のうちに発行体がデフォルトする確率です。格付ごとの過去のデフォルト実績や、財務データを使ったモデル、市場価格などから推計します。
  • デフォルト時損失率(LGD):デフォルトしたときに失う割合で、1 − 回収率です。担保の有無や弁済順位によって大きく変わり、担保付や上位の債権ほど回収率が高くなります。
  • デフォルト時エクスポージャー(EAD):デフォルトした時点で回収が必要な金額(元本など)です。

期待損失と非期待損失

3つの要素を掛け合わせたものが期待損失(EL)で、平均的に見込まれる損失です。期待損失はあらかじめ見込めるコストなので、スプレッドや貸出金利、引当金でカバーすべきものと考えられます。

しかし実際の損失は、平均を大きく上回ることがあります。この「平均からの上振れ」が非期待損失(UL)です。一定の信頼水準(例えば99%)で起こりうる最大損失から期待損失を差し引いたものを信用VaRとして計測し、自己資本で備えるべき額の目安とします。

ポートフォリオでの注意点

期待損失は個々の債券の期待損失を足し合わせればポートフォリオ全体の値になります。一方、非期待損失は、発行体同士のデフォルトの起こりやすさの連動(デフォルト相関)によって変わり、単純な合計にはなりません。同じ業種や地域に集中していると相関が高く、損失の上振れが大きくなります。これが分散投資や集中リスク管理が重視される理由です。

押さえておきたい公式

EL = PD × LGD × EADLGD = 1 − 回収率
信用スプレッド ≒ PD × LGDリスク・プレミアムや流動性プレミアムを無視した単純化した関係。スプレッドから市場が織り込むPDを逆算する考え方にも使う
PD 一定期間内のデフォルト確率
LGD デフォルト時の損失率(1 − 回収率)
EAD デフォルト時のエクスポージャー(金額)
EL / UL 期待損失(平均) / 非期待損失(平均からの上振れ)

具体例で確認

次の3銘柄を保有しているとします。

銘柄 EAD PD 回収率 期待損失
A社債 1億円 2% 40% 1億 × 0.02 × 0.6 = 120万円
B社債 5,000万円 0.5% 40% 5,000万 × 0.005 × 0.6 = 15万円
C社債(劣後) 3,000万円 5% 20% 3,000万 × 0.05 × 0.8 = 120万円

ポートフォリオ全体の期待損失は、単純に合計して255万円です。また、A社債について「スプレッド ≒ PD × LGD」で考えると、2% × 60% = 1.2%となり、少なくとも年120bp程度のスプレッドがないと予想損失を埋め合わせられないことが分かります。

試験で問われやすいポイント

  • EL = PD × LGD × EAD の計算で、LGDに回収率をそのまま使わない(1 − 回収率にする)こと。
  • 担保や弁済順位が回収率(LGD)に影響する点。
  • 期待損失はスプレッドや引当金でカバーし、非期待損失は自己資本で備えるという役割分担。
  • 期待損失は合計できるが、非期待損失はデフォルト相関の影響を受け、単純合計にならない点。
  • スプレッド ≒ PD × LGD は単純化した関係で、実際のスプレッドにはプレミアムも含まれる点。

要点まとめ

  • 信用リスク量はPD・LGD・EADの3要素で考える。
  • 期待損失 EL = PD × LGD × EAD、LGD = 1 − 回収率。
  • 非期待損失は平均を超える損失で、信用VaRで計測する。
  • ポートフォリオでは、デフォルト相関や集中リスクが損失の上振れを左右する。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。