株主資本コスト(CAPM)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 株主資本コストとは、株主がその企業の株式に投資するときに要求するリターン(期待収益率)のことです。
- 代表的な推定方法はCAPMで、安全利子率 + ベータ × 市場リスクプレミアムで求めます。
- 配当割引モデルから逆算する方法もあり、負債が増えるとベータが上がり株主資本コストも上がります。
この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「株主資本コストの計算」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (5) 資本コストと資本構成 |
| 協会の学習ポイント | 株主資本コストの計算方法(CAPM等)について理解する。 |
株主資本コストとは
株主資本コストは、株主から資金を調達するときの資本コストです。配当のように支払額が約束されているわけではないため「コストがかからない」と誤解されがちですが、株主はリスクを負って投資している分、国債などより高いリターンを期待しています。その期待に応えられなければ株価が下がるため、企業にとっては明確なコストです。
株主資本コストは直接観察できないため、モデルを使って推定します。代表的なのがCAPM(資本資産評価モデル)と、配当割引モデル(DDM)から逆算する方法です。
CAPMによる推定
CAPMでは、投資家が報われるのは分散投資で消せない市場全体に連動するリスク(システマティック・リスク)だけだと考えます。その大きさを表すのがベータ(β)で、市場全体が1%動いたときにその株式が平均して何%動くかを示します。株主資本コストは、安全利子率に「β×市場リスクプレミアム」を上乗せして求めます。
実務では、安全利子率に長期国債利回り、ベータに過去の株価データからの回帰推定値、市場リスクプレミアムに過去の実績や将来予想に基づく値が使われます。どの値を使うかで結果が変わる点に注意が必要です。
配当割引モデルから逆算する方法
定率成長の配当割引モデル P0=D1÷(k-g) をkについて解くと、k=D1÷P0+g となります。現在の株価と予想配当、成長率から、市場が織り込んでいる株主資本コストを求める方法です。配当が安定していて成長率を見積もりやすい企業に向いています。
負債とベータの関係
同じ事業でも、負債が多いほど株主の負うリスクは大きくなり、ベータ(レバード・ベータ)が上がります。負債のない状態のベータをアンレバード・ベータといい、法人税を考慮すると βL=βU×[1+(1-t)×D÷E] の関係で換算します(ハマダの式)。類似企業のベータを使って非上場企業などの株主資本コストを推定するときに用います。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| rf | 安全利子率(リスクフリー・レート) |
| E[RM] − rf | 市場リスクプレミアム |
| β、βL、βU | ベータ、レバード・ベータ、アンレバード・ベータ |
| D1、P0、g | 来期の予想配当、現在の株価、配当成長率 |
| D、E、t | 負債、株主資本(時価)、法人税率 |
具体例で確認
例1:CAPM
安全利子率1%、市場リスクプレミアム6%、ベータ1.2の企業の株主資本コストは、1% + 1.2 × 6% = 8.2%です。ベータが0.8なら1%+0.8×6%=5.8%となり、市場より値動きが小さい株式ほど株主資本コストは低くなります。
例2:配当割引モデルからの逆算
株価2,000円、来期の予想配当60円、配当成長率2%なら、60 ÷ 2,000 + 2% = 3% + 2% = 5%です。
例3:負債によるベータの調整
アンレバード・ベータ0.8の事業を、負債資本比率(D÷E)0.5、税率30%で営む場合、βL = 0.8 × (1 + 0.7 × 0.5) = 1.08です。安全利子率1%、市場リスクプレミアム6%なら、株主資本コストは1%+1.08×6%≒7.48%になります。
試験で問われやすいポイント
- CAPMの式 rf+β×(E[RM]-rf) の計算が基本です。市場の期待収益率と市場リスクプレミアムのどちらが与えられているかを読み違えないようにしましょう。
- ベータはシステマティック・リスクの尺度で、個別リスク(分散で消せるリスク)は株主資本コストに反映されないという点が問われやすいです。
- DDMからの逆算 D1÷P0+g では、分子が今期ではなく来期の配当である点がひっかけになりやすいです。
- 負債を増やすとベータと株主資本コストが上昇するという方向と、アンレバード・ベータとの換算を確認しましょう。
- 株主資本コストは通常、負債コストより高いこと、税引後調整(×(1-t))は株主資本コストには行わないことも押さえておきましょう。
要点まとめ
- 株主資本コストは株主の要求収益率で、企業にとって明確なコスト
- CAPMでは安全利子率+β×市場リスクプレミアムで求める
- 定率成長DDMからはD1÷P0+gで逆算できる
- 負債が増えるとレバード・ベータが上がり、株主資本コストも上がる
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
