事業リスクと財務リスクとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- レバレッジとは「てこ」の意味で、固定的な費用があることで、売上や営業利益の小さな変化が利益の大きな変化につながる効果をいいます。
- 人件費や減価償却費などの固定費による営業利益のブレが事業リスク(営業レバレッジ)、支払利息による純利益のブレが財務リスク(財務レバレッジ)です。
- 株主が負うリスクは、この事業リスクと財務リスクを合わせたものになります。
この記事では、証券アナリスト1次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「レバレッジと事業・財務リスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅱ/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (9) 企業のリスク管理と運転資本管理 |
| 協会の学習ポイント | コーポレートファイナンスにおけるレバレッジの概念および企業の事業リスク、財務リスクについて理解する。 |
レバレッジと事業・財務リスクとは
企業の利益は、売上高から費用を差し引いて求めます。費用のうち、売上に比例して増減する変動費(原材料費など)と違い、固定費(人件費、減価償却費、賃借料など)は売上が増えても減っても一定額かかります。このため、固定費の多い企業では、売上が少し増えただけで利益が大きく増え、少し減っただけで利益が大きく減ります。これがレバレッジの効果です。
事業リスクと営業レバレッジ
事業リスクとは、事業そのものの性質から生じる営業利益(EBIT)の変動のことです。景気や需要による売上の変動に加えて、費用構造に占める固定費の割合が大きいほど営業利益のブレは大きくなります。固定費による増幅効果を営業レバレッジといいます。大規模な設備を持つ装置産業などは、一般に営業レバレッジが高くなります。
財務リスクと財務レバレッジ
財務リスクとは、資金調達を負債に頼ることで生じる、株主に帰属する利益(純利益・EPS)の追加的な変動のことです。支払利息は営業利益の大小にかかわらず支払う必要がある「財務上の固定費」なので、負債が多いほど、営業利益の変化が純利益により大きく伝わります。この増幅効果を財務レバレッジといいます。
2つのリスクの組み合わせ
売上の変動は、営業レバレッジで営業利益の変動に増幅され、さらに財務レバレッジで純利益の変動に増幅されます。事業リスクは主に事業の選択や費用構造で決まり、財務リスクは経営者の資金調達の判断で変えられます。事業リスクの高い企業が負債を多く使うと、全体のリスクが過大になりやすいため、事業リスクを踏まえて資本構成を考えることが大切です。
整理しておきたいポイント
| 項目 | 事業リスク | 財務リスク |
|---|---|---|
| 変動するもの | 営業利益(EBIT) | 純利益・EPS(株主の利益) |
| 原因となる固定費 | 固定的な営業費用(人件費、減価償却費など) | 支払利息などの財務費用 |
| レバレッジ | 営業レバレッジ | 財務レバレッジ |
| 主な決定要因 | 業種、需要の安定性、費用構造 | 負債の比率(資本構成) |
| 負担する者 | 債権者と株主の全体 | 株主(負債がなければ生じない) |
具体例で確認
売上高がどちらも1,000、営業利益もどちらも200のA社とB社を比べます。A社は変動費率40%・固定費400、B社は変動費率70%・固定費100です。
| 項目 | A社(固定費が多い) | B社(固定費が少ない) |
|---|---|---|
| 売上1,000のとき | 1,000 − 400 − 400 = 200 | 1,000 − 700 − 100 = 200 |
| 売上1,100(+10%)のとき | 1,100 − 440 − 400 = 260(+30%) | 1,100 − 770 − 100 = 230(+15%) |
| 売上900(-10%)のとき | 900 − 360 − 400 = 140(-30%) | 900 − 630 − 100 = 170(-15%) |
同じ売上の変化でも、固定費の多いA社のほうが営業利益の変動が大きく、事業リスクが高いことがわかります。さらにA社が支払利息100を負担していると、税引前利益は100から160(+60%)または40(-60%)へと動き、財務レバレッジによって変動がもう一段増幅されます。
試験で問われやすいポイント
- 事業リスク=営業利益の変動、財務リスク=負債利用による純利益(EPS)の追加的な変動という定義の区別が問われやすいです。
- 営業レバレッジの源泉は固定営業費用、財務レバレッジの源泉は支払利息であることを押さえましょう。
- 固定費の割合が高いほど、負債が多いほど、利益の変動が大きくなるという影響の方向が狙われやすいです。
- レバレッジは利益が増えるときも減るときも変動を同じように増幅する点(下落時も大きく減る)に注意しましょう。
- 財務リスクは負債がなければ生じず、株主が負担するという点も確認しておきましょう。
要点まとめ
- レバレッジは固定的な費用によって利益の変動が増幅される効果
- 事業リスクは固定営業費用による営業利益のブレ(営業レバレッジ)
- 財務リスクは支払利息による純利益・EPSのブレ(財務レバレッジ)
- 株主のリスクは事業リスクと財務リスクの組み合わせで決まる
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
