ひとことで言うと

  • DDM・FCFE割引モデル・残余利益モデルは、いずれも「株主に帰属する将来の価値」を現在価値に直して株式価値を求めるモデルです。
  • 前提(予測の整合性、クリーン・サープラス関係など)がそろえば、3つのモデルは理論上同じ価値になります。
  • 違うのは「何を予測して割り引くか」という切り口です。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「3つのモデルの関係」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/株式分析
大分類 (3) 株式価値評価モデルの基礎
協会の学習ポイント 残余利益モデルとDDM、FCFE割引モデルの相互関係について理解する。

DDM・FCFE割引モデル・残余利益モデルの関係とは

株式価値を求める代表的なモデルには、配当を割り引く配当割引モデル(DDM)、株主に帰属するフリー・キャッシュフローを割り引くFCFE割引モデル、自己資本の簿価に残余利益の現在価値を加える残余利益モデル(RIM)があります。どれも株主の立場から見た価値を求め、割引率には株主資本コストkを使う点で共通しています。

DDMと残余利益モデルはつながっている

DDMは配当の流れだけを見ます。ここに「期末自己資本=期首自己資本+利益−配当」というクリーン・サープラス関係を代入して配当を利益と自己資本で書き換えると、DDMの式は数学的に残余利益モデルの式に変形できます。つまり、クリーン・サープラス関係が成り立ち、同じ予測(利益・配当・自己資本)を使う限り、2つのモデルの答えは一致します。

残余利益モデルは、価値を「すでに手元にある自己資本」と「これから資本コストを超えて稼ぐ分」に分けて表示し直したものだと考えるとわかりやすいでしょう。

DDMとFCFE割引モデルの関係

FCFEは「株主に配ろうと思えば配れるお金」です。企業がFCFEを毎期すべて配当として支払う(配当=FCFE)なら、DDMとFCFE割引モデルは同じ価値になります。現実には配当が安定志向で決められ、FCFEと一致しないことも多いため、使うデータによって結果に差が出ることがあります。

実務で結果がずれる理由

理論上は一致しても、実際には予測の前提がモデルごとに異なったり、最終年度以降の価値(ターミナル・バリュー)の置き方が違ったりするため、計算結果はずれることがよくあります。「どのモデルが正しいか」ではなく、「前提がそろえば一致する」という理解がポイントです。

押さえておきたい公式

DDM:V0 = Σ Dt ÷ (1+k)t配当の現在価値合計
FCFE割引モデル:V0 = Σ FCFEt ÷ (1+k)t株主に帰属するフリー・キャッシュフローの現在価値合計
残余利益モデル:V0 = B0 + Σ (Et − k × Bt−1) ÷ (1+k)t期首自己資本+残余利益の現在価値合計
Bt = Bt−1 + Et − Dtクリーン・サープラス関係(DDMと残余利益モデルをつなぐ条件)

具体例で確認

期首の1株当たり自己資本B0=1,000円、ROE=10%(一定)、配当性向40%(内部留保率60%)、株主資本コストk=8%の企業を考えます。成長率はg=10%×0.6=6%です。

期首自己資本 利益E 配当D 残余利益RI=E−8%×B
1年目 1,000.0円 100.0円 40.0円 20.0円
2年目 1,060.0円 106.0円 42.4円 21.2円
3年目 1,123.6円 約112.4円 約44.9円 約22.5円

配当も残余利益も毎年6%ずつ伸びています。

  • DDM(ゴードン・モデル):V0=40÷(0.08−0.06)=2,000円
  • 残余利益モデル:V0=1,000+20÷(0.08−0.06)=1,000+1,000=2,000円
  • FCFE割引モデル:借入の増減がなく、FCFEを全額配当する(FCFE=配当40円)と仮定すれば、同じく2,000円

同じ前提から出発すると、3つのモデルがぴったり同じ価値を示すことが確認できます。

試験で問われやすいポイント

  • DDMと残余利益モデルが一致するための前提として、クリーン・サープラス関係が問われやすいです。
  • 3つのモデルはいずれも株主価値を求め、割引率は株主資本コストである点が確認されやすいです(WACCで割り引くFCFFとの混同に注意)。
  • 「残余利益モデルはDDMより理論的に高い(低い)価値を出す」といった記述は誤り、というひっかけが狙われやすいです。
  • DDMとFCFE割引モデルが一致するのは配当=FCFEのとき、という条件が問われやすいです。
  • 同じ数値例をDDMと残余利益モデルの両方で計算させる問題にも慣れておきましょう。

要点まとめ

  • 3モデルとも株主価値を求め、株主資本コストで割り引く
  • クリーン・サープラス関係のもとでDDMと残余利益モデルは一致する
  • 配当=FCFEならDDMとFCFE割引モデルも一致する
  • 違いは「何を予測するか」であり、前提がずれると結果もずれる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。