ひとことで言うと

  • キャリーは、債券を保有することで得られる利息(利回り)収入です。資金を借りて持つ場合は、利回りから調達コストを引いた分がキャリーになります。
  • ロールダウンは、イールドカーブが右上がりで変わらないとき、時間の経過で残存期間が短くなり、より低い利回りで評価されることで生まれる値上がり益です。
  • キャリーとロールダウンを合わせたものはローリング・イールドと呼ばれ、金利が動かない場合に期待できるリターンの目安になります。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「キャリーとロールダウン」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (9) 債券ポートフォリオによる投資戦略
協会の学習ポイント 債券投資から得られる収益の源泉(キャリーとロールダウン)について理解する。

キャリーとロールダウンとは

債券投資のリターンは、「金利が動かなくても得られる部分」と「金利が動くことで生まれる部分」に分けて考えると整理しやすくなります。キャリーとロールダウンは前者、つまりイールドカーブが今の形のまま変わらないと仮定したときに得られる収益の源泉です。

キャリー

キャリーは、債券を持っていることで受け取るクーポンや、利回りに相当する収益です。自己資金で保有するなら利息収入そのものがキャリーですが、レポ取引などで資金を借りて保有する場合は、債券の利回りから調達金利を引いた差がキャリーになります。調達金利のほうが高ければ、キャリーはマイナス(ネガティブ・キャリー)です。

ロールダウン

右上がりのイールドカーブでは、年限が短いほど利回りが低くなります。5年債を買って1年たつと、その債券は残存4年の債券になります。カーブの形が変わらなければ、この債券は4年の(より低い)利回りで評価されるため、価格が上がります。これがロールダウン(ロールダウン効果)で、カーブの傾きが急な年限ほど大きくなります。カーブが右下がり(逆イールド)の場合は、逆に値下がり要因になります。

リターン全体の中での位置づけ

債券のトータル・リターンは、おおまかに「ローリング・イールド(キャリー+ロールダウン)」「金利見通しに基づく価格変化(デュレーションやコンベクシティによる部分)」「スプレッドの変化」「信用損失」「為替の変動」などに分解できます。キャリーとロールダウンは、金利やスプレッドが動かない前提でのベースとなる期待リターンであり、そこに金利の見通しなどを加えて最終的な期待リターンを考えます。

押さえておきたい公式

ローリング・イールド = キャリー + ロールダウンイールドカーブが変わらないと仮定した場合の期待リターン
ロールダウン ≒ (Pt − P0) ÷ P0Ptは、期末の残存期間に対応する現在のカーブ上の利回りで評価した価格
記号 意味
P0 現在の債券価格
Pt カーブ不変の前提で評価した期末の債券価格

具体例で確認

クーポン1.0%(年1回払い)の5年債を価格100(利回り1.0%)で購入します。現在の4年債の利回りは0.8%で、1年後もイールドカーブの形は変わらないとします。

  1. キャリー:1年間のクーポン収入は1.0なので、キャリーは1.0 ÷ 100 = 1.00%
  2. 1年後、この債券は残存4年となり、4年の利回り0.8%で評価されます。価格は約100.78(クーポン1.0を0.8%で4年間割り引いた現在価値と、元本100の現在価値の合計)
  3. ロールダウン:(100.78 − 100) ÷ 100 ≒ 0.78%
  4. ローリング・イールド:1.00% + 0.78% ≒ 1.78%

もしカーブが平坦で4年債も1.0%なら、1年後の価格は100のままでロールダウンはゼロ、リターンはキャリーの1.00%だけになります。カーブの傾きがロールダウンの源泉であることがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • キャリーとロールダウンの定義と、両者が「カーブ不変」を前提にしたリターンであることが問われやすいです。
  • ロールダウンが生まれるのは右上がりのカーブのときで、逆イールドではマイナスになるという方向に注意しましょう。
  • 資金を借りて保有する場合のキャリーは利回り − 調達金利で、マイナスにもなりうる点がひっかけになりやすいです。
  • 期末価格を「期末の残存年限の利回り」で評価し直すロールダウンの計算手順を正確に押さえましょう。
  • 2次の記述式では、トータル・リターンをローリング・イールド、金利変化、スプレッド変化などに分解して説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • キャリーは保有による利息収入(借入で保有するなら利回り − 調達金利)
  • ロールダウンは、カーブ不変のもとで残存期間が短くなることで生じる値上がり益
  • 右上がりのカーブの傾きが急なほどロールダウンは大きい
  • キャリー+ロールダウン=ローリング・イールドで、期待リターンの土台になる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。