ひとことで言うと

  • コーポレートガバナンス・コードは上場企業側の行動原則、スチュワードシップ・コードは機関投資家側の行動原則で、両者は「車の両輪」と呼ばれます。
  • どちらも法律ではなく、プリンシプルベースコンプライ・オア・エクスプレイン(従うか、従わない理由を説明する)という手法をとります。
  • 企業と投資家の建設的な対話を通じて、中長期的な企業価値の向上を目指します。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「2つのコードと企業価値」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (3) コーポレートガバナンス
協会の学習ポイント コーポレート・ガバナンスコードとスチュワードシップ・コードの企業価値への影響について理解する。

CGコードとスチュワードシップ・コードとは

日本では、2014年に機関投資家向けの「日本版スチュワードシップ・コード」が金融庁の有識者検討会により策定され、2015年には上場企業向けの「コーポレートガバナンス・コード」が東京証券取引所の上場規則として適用されました。その後、両コードとも環境の変化に合わせて改訂が重ねられています。

コーポレートガバナンス・コード(企業側)

上場企業が、株主をはじめとする利害関係者の立場を踏まえ、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための原則です。株主の権利・平等性の確保、株主以外のステークホルダーとの協働、適切な情報開示と透明性、取締役会等の責務、株主との対話という基本原則で構成されています。独立社外取締役の活用、政策保有株式の方針開示、資本コストを意識した経営などが具体的な論点として知られています。

スチュワードシップ・コード(投資家側)

機関投資家が、投資先企業との目的を持った対話(エンゲージメント)などを通じて企業価値の向上や持続的成長を促し、顧客・受益者の中長期的なリターンを高めるための原則です。方針の策定と公表、利益相反の管理、投資先企業の状況の把握、議決権行使の方針と結果の公表などが求められます。受け入れは任意ですが、受け入れた機関投資家は各原則への対応を公表します。

企業価値への影響の考え方

ファイナンスの観点では、両コードは経営者と株主の間のエージェンシー問題を和らげる仕組みと捉えられます。取締役会の監督機能が強まり、投資家の目が資本効率に向くことで、資本コストを下回る投資や過大な現預金・政策保有株式の保有が見直されやすくなります。その結果、キャッシュフローの改善やリスクの低下を通じて企業価値の向上が期待されます。一方で、形だけの対応(ひな型的な説明)にとどまる、短期的な還元要求に偏るといった懸念もあり、実質的な運用が重要とされます。

整理しておきたいポイント

項目 コーポレートガバナンス・コード スチュワードシップ・コード
対象 上場企業 機関投資家(受け入れは任意)
位置づけ 取引所の上場規則として適用 受け入れを表明した機関が対応を公表
手法 プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレイン プリンシプルベース、コンプライ・オア・エクスプレイン
主な内容 株主の権利、情報開示、取締役会の責務、株主との対話 方針の公表、利益相反管理、対話、議決権行使
企業価値への経路 経営の監督強化、資本効率の改善 対話による規律づけ、議決権行使

具体例で確認

C社は多額の政策保有株式を持ち、社外取締役も少数でした。コーポレートガバナンス・コードへの対応として、政策保有の方針と保有の合理性の検証結果を開示し、独立社外取締役を増やしました。同時に、スチュワードシップ・コードを受け入れた機関投資家が、保有の縮減と資本効率の改善を対話で求めました。

C社は政策保有株式の一部を売却し、その資金を成長投資と自社株買いに振り向けました。これにより、低収益の資産が減ってROEが改善し、投資家からの評価も高まりました。企業側と投資家側の2つのコードが、同じ方向に働いた例です。

試験で問われやすいポイント

  • CGコードは企業側、SSコードは機関投資家側の原則であり、両者が「車の両輪」とされる点が問われやすいです。
  • プリンシプルベース・アプローチコンプライ・オア・エクスプレインの意味(法的な強制ではなく、実施しない場合は理由を説明する)を押さえましょう。
  • 両コードがエージェンシー・コストの低減や資本効率の改善を通じて企業価値に影響するという経路を説明できるようにしましょう。
  • 形式的な対応にとどまる、短期志向の要求を招くといった限界・批判もあわせて理解しておくと安心です。
  • 記述式では、政策保有株式や社外取締役などの具体的な論点が企業価値にどう効くかを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • CGコード=上場企業の原則、SSコード=機関投資家の原則
  • どちらもプリンシプルベースで、コンプライ・オア・エクスプレインを採用
  • 対話と監督の強化でエージェンシー問題を和らげ、企業価値の向上を目指す
  • 形式的な対応ではなく、実質を伴う運用が重要

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。