投資評価とインフレーションとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 投資の評価では、名目キャッシュフローは名目割引率で、実質キャッシュフローは実質割引率で割り引くという整合性が大原則です。
- 名目と実質の割引率は、(1+名目) = (1+実質) × (1+インフレ率)の関係で結びついています。
- 減価償却の節税効果のように名目額で固定されたものは、インフレで実質価値が目減りする点に注意が必要です。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「インフレーションの影響」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (4) 投資の意思決定 |
| 協会の学習ポイント | 投資の意思決定におけるインフレーションの影響を理解する。 |
投資の意思決定とインフレーションとは
投資プロジェクトの評価では、将来のキャッシュフローを予測し、それを割引率で現在価値に直してNPVを計算します。このとき、キャッシュフローを「将来実際に受け取る金額(名目)」で予測するのか、「物価上昇の影響を除いた今日の購買力ベース(実質)」で予測するのかによって、使うべき割引率が変わります。
市場で観察される金利や資本コストは、通常インフレ予想を含んだ名目値です。そのため、実務では名目キャッシュフローを名目の資本コストで割り引くのが一般的です。実質キャッシュフローを使う場合は、名目の資本コストからインフレの影響を取り除いた実質割引率を使います。どちらで計算しても、整合的に行えばNPVは同じになります。
よくある誤り
典型的な誤りは、実質キャッシュフローを名目割引率で割り引いてしまうことです。分子にはインフレが入っていないのに、分母にはインフレが入っているため、価値を過小評価し、本来採択すべき投資を見送ってしまうおそれがあります。逆に、名目キャッシュフローを実質割引率で割り引くと、価値を過大評価します。
インフレで価値が変わる項目
整合的に計算していても、インフレがNPVそのものを変えることがあります。代表例が減価償却費による節税効果です。減価償却費は取得原価をもとに名目額で固定されているため、インフレが高いほど、その節税効果の実質的な価値は小さくなります。また、売上が名目で増えると売掛金や在庫などの運転資本も名目で増え、追加の資金負担が生じます。販売価格とコストのインフレ率が異なる場合も、利益率が変化します。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| r名目 | 名目割引率(名目の資本コスト) |
| r実質 | 実質割引率 |
| i | 期待インフレ率 |
| CFt | t年後のキャッシュフロー |
具体例で確認
初期投資270で、今日の物価ベース(実質)で毎年100のキャッシュフローが3年間得られるプロジェクトを考えます。実質割引率は5%、期待インフレ率は2%です。
- 名目割引率:1.05 × 1.02 − 1 = 0.071 → 7.1%
- 実質ベース:100 ÷ 1.05 + 100 ÷ 1.052 + 100 ÷ 1.053 ≒ 272.32
- 名目ベース:名目CFは102、104.04、106.12。これを7.1%で割り引くと、同じく ≒ 272.32
- NPV = 272.32 − 270 ≒ +2.32(採択)
もし誤って実質CFの100を名目割引率7.1%で割り引くと、現在価値は約261.95となり、NPVは約−8.05と計算されて、本来採択すべき投資を棄却してしまいます。
試験で問われやすいポイント
- 名目CF×名目割引率、実質CF×実質割引率という整合性の原則が最も問われやすいです。
- 名目・実質割引率の換算では、近似式(足し算)ではなく(1+実質)×(1+インフレ率)の厳密な式を使う指示があるかに注意しましょう。
- 実質CFを名目割引率で割り引くと過小評価になる、という誤りの方向が狙われやすいです。
- 減価償却の節税効果は名目で固定されているため、インフレで実質価値が下がる点が論点になります。
- 記述式では、インフレ率を変えたときのNPVの変化を計算させたり、その理由を説明させたりする形が考えられます。
要点まとめ
- 名目CFは名目割引率で、実質CFは実質割引率で割り引く
- (1+名目)=(1+実質)×(1+インフレ率)で相互に換算できる
- 整合的に計算すれば、名目・実質どちらでもNPVは同じ
- 減価償却の節税効果や運転資本は、インフレで実質的な影響を受ける
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
