海外企業の企業価値評価とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 海外企業の評価では、キャッシュフローと資本コストの通貨・インフレの前提をそろえることが最も重要です。
- 現地通貨のキャッシュフローは現地通貨の資本コストで、円に換算したキャッシュフローは円の資本コストで割り引きます。
- 前提が整合していれば、どちらの方法でも同じ価値になります。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「海外企業の企業価値評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業価値評価 |
| 協会の学習ポイント | 海外企業の企業価値評価について理解する。とくに、キャッシュフローと資本コストの整合性に注意する。 |
海外企業の企業価値評価とは
海外企業(または海外子会社)をDCF法で評価する場合も、基本の考え方は国内企業と同じです。ただし、キャッシュフローは現地通貨で生まれ、金利やインフレ率も国によって違うため、どの通貨で計算するかを最初に決め、その前提を最後まで一貫させる必要があります。
2つのアプローチ
1つ目は現地通貨で評価する方法です。現地通貨建てのFCFを現地通貨の資本コストで割り引き、求めた現在価値を直物(スポット)為替レートで円に換算します。2つ目は自国通貨(円)で評価する方法です。将来の現地通貨建てFCFを、各年の予想為替レート(先渡レートなど)で円に換算し、円の資本コストで割り引きます。
予想為替レートを金利差(またはインフレ率の差)と整合的に置けば、2つの方法の結果は一致します。逆に、「現地の高いインフレを織り込んだキャッシュフローを、円の低い割引率で割り引く」といった組み合わせをすると、価値を大きく過大評価してしまいます。
そのほかの注意点
カントリーリスクをどう扱うかも論点になります。資本コストに上乗せ(カントリー・リスク・プレミアム)する方法と、政情不安などのシナリオをキャッシュフロー側に確率で織り込む方法があり、両方に重ねて反映する二重計上は避けます。また、現地の税制や、利益を本国へ送金するときの規制・課税も、キャッシュフローの見積もりに影響します。
押さえておきたい公式
| キャッシュフロー | 使う割引率 |
|---|---|
| 現地通貨建て(名目) | 現地通貨の名目資本コスト |
| 円換算(名目) | 円の名目資本コスト |
| 実質(インフレ除き) | 実質資本コスト |
具体例で確認
1年後に100ドルのFCFが見込める米国事業を評価します。ドルの割引率7%、円の割引率3%、直物レートは1ドル=150円とします(簡単にするため、割引率の差は金利差と整合しているとします)。
- ドルで評価:100 ÷ 1.07 ≒ 93.46ドル → × 150 ≒ 14,018.69円
- 予想為替レート:150 × 1.03 ÷ 1.07 ≒ 144.39円
- 円で評価:100 × 144.39 ≒ 14,439.25円 → ÷ 1.03 ≒ 14,018.69円
前提がそろっているので、両方の結果は一致します。もし100ドルを直物の150円で換算した15,000円を円の割引率3%で割り引くと約14,563円となり、金利差から見込まれるドル安(円高)を無視したことで価値を過大評価してしまいます。
試験で問われやすいポイント
- キャッシュフローの通貨と割引率の通貨を一致させるという原則が中心です。
- 現地通貨で評価して直物で換算する方法と、予想為替レートで換算して円で割り引く方法が一致する条件が問われやすいです。
- 名目と実質の整合(フィッシャー式)もあわせて押さえましょう。
- 記述式では、不整合な前提を指摘し、どう直すべきかを計算過程とともに説明させる形が考えられます。
- カントリーリスクを割引率とキャッシュフローの両方に反映する二重計上に注意しましょう。
要点まとめ
- 海外企業の評価では、キャッシュフローと資本コストの通貨・インフレ前提をそろえる
- 現地通貨で評価して直物換算、または予想レートで円換算して円で割引
- 予想為替レートが金利差と整合していれば両者は一致する
- カントリーリスク、税制、送金規制にも注意する
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
