ひとことで言うと

  • DCF法(割引キャッシュフロー法)は、企業が将来生み出すフリー・キャッシュフロー(FCF)を資本コスト(WACC)で割り引いて、事業価値を求める方法です。
  • 事業価値に非事業資産を加えて企業価値とし、そこから有利子負債などを差し引いて株主価値を求めます。
  • 予測期間の価値と、それ以降をまとめたターミナル・バリューの2つに分けて計算するのが一般的です。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「DCF法による企業価値評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (8) 企業価値評価
協会の学習ポイント 割引キャッシュフロー(DCF)法による企業価値評価について理解する。

DCF法とは

DCF法は、「企業の価値は、その企業が将来生み出すキャッシュフローの現在価値で決まる」という考え方に基づく評価方法です。会計上の利益ではなく、実際に事業から生まれ、資金の提供者(株主と債権者)に分配できる現金に注目する点が特徴です。

フリー・キャッシュフロー(FCF)

企業全体を評価するときに使うFCFは、事業が生み出したキャッシュから、事業を続けるために必要な投資を差し引いた残りです。支払利息を差し引く前の、株主と債権者の両方に帰属するキャッシュフローであることがポイントです。そのため、割引率には株主資本コストと税引後の負債コストを加重平均したWACCを使います。FCFと割引率の対応関係(全資本提供者向けのFCFにはWACC)をそろえることが、DCF法で最も大切な整合性です。

評価の流れ

まず、事業計画をもとに一定期間(たとえば5〜10年)のFCFを予測します。次に、予測期間の最終年度より先の価値をターミナル・バリュー(継続価値)としてまとめて計算します。これらをWACCで割り引いて合計したものが事業価値です。事業価値に、事業に使っていない余剰資金や投資有価証券などの非事業資産を加えると企業価値になり、そこから有利子負債(および非支配株主持分など)を差し引くと株主価値が求まります。

DCF法の長所と注意点

DCF法は、企業固有の成長性や収益性、リスクを直接反映できる理論的な方法です。一方で、FCFの予測や、WACC、永久成長率の置き方によって結果が大きく変わります。特にターミナル・バリューが価値全体の大半を占めることが多いため、前提の妥当性を感応度分析で確かめ、マルチプル法などでクロスチェックすることが大切です。

押さえておきたい公式

FCF = 税引後営業利益(NOPAT) + 減価償却費 − 設備投資 − 運転資本の増加NOPAT = 営業利益 × (1 − 税率)
事業価値 = Σ FCFt ÷ (1 + WACC)t + TVn ÷ (1 + WACC)nTVn = FCFn+1 ÷ (WACC − g)
株主価値 = 事業価値 + 非事業資産 − 有利子負債
記号 意味
FCFt t年目のフリー・キャッシュフロー
WACC 加重平均資本コスト
TVn 予測期間の最終年度(n年目)時点のターミナル・バリュー
g 予測期間後の永久成長率

具体例で確認

ある企業のFCFは、1年目100億円、2年目110億円、3年目120億円と予測され、4年目以降は毎年2%で成長します。WACCは8%、非事業資産は150億円、有利子負債は800億円、発行済株式数は1億株です。

  1. 予測期間のFCFの現在価値:100 ÷ 1.08 ≒ 92.59、110 ÷ 1.082 ≒ 94.31、120 ÷ 1.083 ≒ 95.26、合計 ≒ 282.16億円
  2. 3年目末のターミナル・バリュー:120 × 1.02 ÷ (0.08 − 0.02) = 2,040億円
  3. その現在価値:2,040 ÷ 1.083 ≒ 1,619.42億円
  4. 事業価値:282.16 + 1,619.42 ≒ 1,901.58億円
  5. 株主価値:1,901.58 + 150 − 800 ≒ 1,251.58億円、1株当たり約1,252円

事業価値のうち約85%をターミナル・バリューが占めており、成長率やWACCの前提が結果を大きく左右することがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • FCFの計算要素(NOPAT、減価償却費、設備投資、運転資本の増加)と、支払利息を差し引かない点が問われやすいです。
  • 企業全体のFCFにはWACC、株主に帰属するFCF(FCFE)には株主資本コストという、割引率との対応に注意しましょう。
  • 事業価値→企業価値→株主価値の順に、非事業資産を加え有利子負債を差し引く手順を、計算過程とともに示せるようにしましょう。
  • ターミナル・バリューの割引は予測期間の最終年度から行う(n乗で割る)点がひっかけになりやすいです。
  • 記述式では、ターミナル・バリューの比重が大きいことや、感応度分析の必要性を説明させる問題に備えましょう。

要点まとめ

  • DCF法は将来のFCFの現在価値で事業価値を求める
  • 企業全体のFCFはWACCで割り引く
  • 事業価値+非事業資産−有利子負債=株主価値
  • ターミナル・バリューの比重が大きく、前提の検証が欠かせない

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