WACC法とAPV法とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 負債がある企業の価値を求める方法には、負債の節税効果を割引率(WACC)に織り込むWACC法と、負債がない場合の価値に節税効果の現在価値を足すAPV法があります。
- 前提をそろえれば、どちらの方法でも同じ企業価値になります。
- WACC法は目標資本構成が安定している場合、APV法は負債の額が計画的に変わるLBOなどの場合に向いています。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「WACC法とAPV法」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業価値評価 |
| 協会の学習ポイント | 負債がある企業について、節税効果をWACCに反映させるWACC法と、節税効果を加算するAPV法による企業価値評価を理解する。 |
WACC法とAPV法とは
法人税がある世界では、支払利息が損金になるため、負債を使うと税金が減り、その分だけ資金提供者全体が受け取るキャッシュが増えます(負債の節税効果)。企業価値評価では、この節税効果をどこで反映させるかによって、2つの方法があります。
WACC法
WACC法では、キャッシュフローには節税効果を含めないFCF(負債がないとした場合の税金で計算したもの)を使い、割引率の側で負債コストを税引後(rD×(1−t))にすることで節税効果を反映させます。1本の割引率で計算できるため簡便で、実務で最も広く使われています。ただし、WACCは資本構成(負債と株主資本の比率)を一定と仮定しているため、負債比率が大きく変わる場合には、年ごとにWACCを計算し直す必要があり、扱いにくくなります。
APV法(調整現在価値法)
APV法では、まず企業が負債をまったく使わない場合の価値(アンレバード価値)を、FCFをアンレバードの資本コスト(事業そのもののリスクに見合う資本コスト)で割り引いて求めます。そこに、負債の節税効果の現在価値を別に計算して加えます。価値の源泉を「事業そのもの」と「資金調達の効果」に分けて示せるため、わかりやすいのが長所です。負債の返済スケジュールが決まっているLBOのように、負債の額が大きく変わるケースに向いています。必要に応じて、財務困難コストなど他の資金調達の影響も加減できます。
節税効果の割引率
APV法で節税効果を割り引く率は、負債の前提によって変わります。負債の額が一定で固定されている場合は、節税効果は負債と同じくらい確実なので負債コストで割り引きます。一方、負債比率を一定に保つ(事業価値に応じて負債額を増減させる)場合は、節税効果も事業のリスクを帯びるため、アンレバードの資本コストで割り引くのが整合的とされます。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| V、E、D | 企業価値、株主資本価値、負債価値 |
| rE、rD | 株主資本コスト、負債コスト(税引前) |
| rU | アンレバードの資本コスト(負債がない場合の資本コスト) |
| t | 法人税率 |
具体例で確認
毎年のFCFが100で永久に一定、アンレバードの資本コストrUが10%、負債400を永久に維持(負債コスト4%)、法人税率30%とします。
APV法
- アンレバード価値:100 ÷ 0.10 = 1,000
- 節税効果の現在価値:0.30 × 400 = 120
- 企業価値:1,000 + 120 = 1,120(株主資本価値は1,120 − 400 = 720)
WACC法
- 株主資本コスト(MM命題・税あり):rE = 10% + (10% − 4%) × (1 − 0.3) × 400 ÷ 720 ≒ 12.33%
- WACC:720 ÷ 1,120 × 12.33% + 400 ÷ 1,120 × 4% × 0.7 ≒ 7.93% + 1.00% ≒ 8.93%
- 企業価値:100 ÷ 0.0893 ≒ 1,120
前提をそろえれば、2つの方法は同じ価値になります。WACC法では節税効果がWACCの低下(10%→約8.93%)という形で表れています。
試験で問われやすいポイント
- WACC法は割引率で、APV法はキャッシュフロー(加算項目)で節税効果を反映するという違いが問われやすいです。
- WACC法でFCFから節税効果を差し引いたり、税引前の負債コストを使ったりすると、節税効果の二重計上や漏れになる点に注意しましょう。
- 負債額一定のとき節税効果の現在価値がt×Dになる計算と、APVとWACC法の結果が一致することを計算過程で示せるようにしましょう。
- APV法が向いている場面(LBO、負債比率が大きく変わる場合)を記述式で説明できるようにしましょう。
- 節税効果の割引率が負債の前提(額一定か比率一定か)で変わる点も押さえておきましょう。
要点まとめ
- WACC法は税引後負債コストを使ったWACCで節税効果を反映する
- APV法はアンレバード価値に節税効果の現在価値を加える
- 前提をそろえれば両者の企業価値は一致する
- 資本構成が一定ならWACC法、負債額が変わるならAPV法が扱いやすい
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
