ひとことで言うと

  • 複数の投資案件を比べるときの基本は、企業価値を最も高める(NPVの合計が最大になる)組み合わせを選ぶことです。
  • 資金に制約がある場合(資本制約)は、収益性指数(PI)を目安にしつつ、予算内でNPV合計が最大になる組み合わせを探します。
  • どちらか一方しか選べない相互排他的投資ではIRRではなくNPVで判断し、耐用年数が異なる案件等価年価(EAA)などで比べます。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「複数の投資事業の意思決定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (4) 投資の意思決定
協会の学習ポイント 複数の投資事業にかかる意思決定方法について理解する。

資本制約と相互排他的投資とは

1つの投資案件だけを評価するなら、NPVがプラスであれば採択するというルールで十分です。しかし実際には、複数の案件を同時に検討することがほとんどで、「予算が足りない」「同じ土地にはどちらか一方しか建てられない」「設備の寿命が違う」といった条件がつきます。こうした場面でも、判断の基準はあくまで企業価値の増加、つまりNPVの合計です。

資本制約がある場合

投資に使える資金に上限がある状態を資本制約(キャピタル・ラショニング)といいます。このときは、投資額1単位あたりの価値を示す収益性指数(PI)の高い順に採択していくのが一つの目安です。ただし、案件を途中で分割できない場合は、PIの順に並べるだけでは予算を使い切れず、NPV合計が最大にならないことがあります。その場合は、予算内の組み合わせを比べてNPV合計が最大のものを選びます。

相互排他的な案件の場合

どちらか一方しか選べない案件では、NPVとIRRの順位が食い違うことがあります。原因は、投資規模の違いや、キャッシュフローの発生時期の違いです。IRRは「率」なので規模を反映できず、また途中のキャッシュフローをIRRで再投資するという暗黙の前提を持っています。企業価値の増加額を直接示すのはNPVなので、順位が食い違ったらNPVを優先します。IRRで確認したい場合は、2案の差額のキャッシュフローのIRR(増分IRR)が資本コストを上回るかを見ます。

耐用年数が異なる案件の場合

同じ目的の設備でも、寿命が2年のものと3年のものをNPVだけで比べるのは公平ではありません。寿命が長いほうが、その分多くのキャッシュフローを含むからです。このため、同じ投資を繰り返すと仮定して期間をそろえる反復投資法(最小公倍数法)や、NPVを毎年の均等額に直した等価年価(EAA)で比べます。

押さえておきたい公式

PI = 将来CFの現在価値 ÷ 初期投資額 = 1 + NPV ÷ 初期投資額PI>1ならNPV>0
EAA = NPV ÷ 年金現価係数(r, n)年金現価係数 = [1 − (1+r)−n] ÷ r
記号 意味
PI 収益性指数(プロフィタビリティ・インデックス)
EAA 等価年価(NPVを毎年の均等額に換算したもの)
r 資本コスト(割引率)
n 耐用年数

具体例で確認

例1:予算1,000の資本制約

案件 投資額 NPV PI
A 600 180 1.30
B 400 140 1.35
C 500 160 1.32

PIの高い順にBとCを選ぶと、投資額900でNPV合計は300です。残り100ではAを実行できません。一方、AとBの組み合わせなら投資額1,000ちょうどでNPV合計は320となり、こちらが最適です。分割できない案件では、組み合わせの比較が必要なことがわかります。

例2:耐用年数が異なる設備(資本コスト8%)

  1. 設備X:寿命2年、NPV100 → EAA = 100 ÷ 1.7833 ≒ 56.08
  2. 設備Y:寿命3年、NPV140 → EAA = 140 ÷ 2.5771 ≒ 54.32

NPVだけ見るとYが大きく見えますが、毎年の均等額に直すとXが上回ります。繰り返し更新する前提なら、Xを選ぶのが合理的です。

試験で問われやすいポイント

  • 相互排他的投資でNPVとIRRの順位が食い違う原因(規模の違い・キャッシュフローの時期の違い)と、NPVを優先する理由が問われやすいです。
  • 資本制約下でのPIの使い方と、案件が分割できない場合はPI順では最適にならないことがあるという注意点を押さえましょう。
  • 耐用年数が異なる案件はEAAや反復投資法で比べる点、年金現価係数の計算が狙われやすいです。
  • 増分IRR(差額キャッシュフローのIRR)による判断も確認しておきましょう。
  • 記述式では、複数案件のデータから採択すべき組み合わせを求めさせ、計算過程と判断理由を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 複数案件の選択でも、基準は企業価値の増加(NPV合計の最大化)
  • 資本制約ではPIが目安だが、分割できない案件は組み合わせで比較する
  • 相互排他的案件で順位が食い違えば、IRRよりNPVを優先する
  • 耐用年数が異なる案件は、EAAや反復投資法で期間をそろえて比べる

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