ひとことで言うと

  • 複製ポートフォリオとは、株式と無リスクの借入れ・貸付けを組み合わせて、オプションと同じ損益を生むように作ったポートフォリオです。
  • 保有する株式の数はオプションのデルタ(株価1円の変化に対するオプション価格の変化)に等しくなります。
  • 無裁定なら、オプション価格は複製ポートフォリオを作るコストに一致します。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「デルタと複製ポートフォリオ」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (3) オプション取引の仕組みと評価
協会の学習ポイント オプションにおけるデルタと複製ポートフォリオの構築方法について理解する。

デルタと複製ポートフォリオとは

オプションの損益は、株価によって決まります。そこで「株式を何株か持ち、足りない分をお金の借入れ(または貸付け)で調整する」ことで、どの状態でもオプションとまったく同じ金額を受け取れるポートフォリオを作ることができます。これを複製ポートフォリオと呼びます。

保有株数=デルタ

1期間二項モデルで考えると、株価が上がった状態と下がった状態のオプションのペイオフの差を、株価の差で割った値が、必要な株数になります。これはまさに「株価の変化に対するオプション価格の変化」、つまりデルタです。デルタはヘッジ比率とも呼ばれ、逆にオプションを1単位売った人がデルタ分の株式を買えば、株価変動のリスクを打ち消せます(デルタ・ヘッジ)。

コールは「株式の買い+借入れ」、プットは「株式の空売り+貸付け」

コールのデルタは0〜1なので、株式を一部買い、その資金の一部を借入れでまかなう形になります。プットのデルタは−1〜0なので、株式を空売りし、その代金を含めて無リスク資産で運用(貸付け)する形になります。ブラック=ショールズ式のコール価格S × N(d1) − K × e−rT × N(d2)も、「N(d1)株の買い」と「借入れ」による複製コストとして読むことができます。

複製は動的に組み替える必要がある

デルタは株価や時間の経過によって変わります(その変化の度合いがガンマです)。そのため、多期間の二項モデルや現実の市場では、株価が動くたびに保有株数と借入額を調整し直す必要があります。これをダイナミック・ヘッジ(動的複製)と呼び、ポートフォリオ・インシュアランスなどの戦略の基礎にもなっています。

押さえておきたい公式

Δ = (Cu − Cd) ÷ (Su − Sd)1期間二項モデルのデルタ(ヘッジ比率)
B = (Δ × Sd − Cd) ÷ (1+r)コール複製のための借入額(現在価値)
C = Δ × S − Bオプション価格=複製ポートフォリオのコスト
記号 意味
Su、Sd 上昇時・下落時の株価
Cu、Cd 上昇時・下落時のオプションのペイオフ
B 借入額(マイナスなら貸付け)
r 1期間の無リスク金利

具体例で確認

株価100円が1期間後に120円か90円になり、無リスク金利は5%、権利行使価格100円のコールとプットを複製します。

コールの複製

  1. ペイオフ:上昇時20円、下落時0円
  2. デルタ:(20 − 0) ÷ (120 − 90) = 0.6667株
  3. 借入額:(0.6667 × 90 − 0) ÷ 1.05 = 60 ÷ 1.05 ≒ 57.14円
  4. コスト:0.6667 × 100 − 57.14 ≒ 9.52円
  5. 確認:上昇時 0.6667 × 120 − 60 = 20円、下落時 0.6667 × 90 − 60 = 0円で、コールと一致します。

プットの複製

ペイオフは上昇時0円、下落時10円なので、デルタは(0 − 10) ÷ 30 ≒ −0.3333株(1/3株の空売り)です。上昇時に空売りの買戻しに40円必要なので、40 ÷ 1.05 ≒ 38.10円を貸し付けます。コストは−33.33 + 38.10 ≒ 4.76円です。C − P = 9.52 − 4.76 = 4.76円 = 100 − 100 ÷ 1.05となり、プット・コール・パリティとも整合しています。

試験で問われやすいポイント

  • デルタ=(Cu − Cd) ÷ (Su − Sd)の計算と、借入額・オプション価格を順に求める手順がよく問われます。
  • コールは株式の買い+借入れ、プットは株式の空売り+貸付けという組合せの向きを取り違えないように注意しましょう。
  • 借入額は満期に返す金額を無リスク金利で割り引いた現在価値である点が、計算ミスにつながりやすいポイントです。
  • デルタは株価や時間で変わるため、継続的な組替え(動的複製)が必要という点も確認されやすいです。
  • 記述式では、複製ポートフォリオと無裁定の考え方から、なぜオプション価格が一意に決まるのかを説明させる形に備えておくと安心です。

要点まとめ

  • 複製ポートフォリオ=株式と借入れ・貸付けでオプションの損益を再現したもの
  • 保有株数=デルタ(ヘッジ比率)
  • コール=株式の買い+借入れ、プット=株式の空売り+貸付け
  • オプション価格=複製コスト(無裁定)。デルタが動くので組替えが必要

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。