証券アナリスト(CMA)2次試験で問われる「デリバティブ分析」。1次で先物やオプションの基本を学んだものの、2次のテキストでは多期間二項モデル、ブラック=ショールズ・モデル、スワップション、CDSなどが次々に登場し、「2次では結局何ができるようになればいいの?」と戸惑う方も多いはずです。

この記事では、日本証券アナリスト協会が公表している「主要学習事項と学習ポイント」に沿って、2次のデリバティブ分析で要するに何を学ぶのかを、学習ポイントを1つずつかみくだいて解説します。

2次のデリバティブ分析で学ぶこと

  • オプションの値段を本格的に計算する:多期間二項モデルやブラック=ショールズ・モデルで価値を求め、デルタなどの感応度を理解する
  • 金利・通貨・信用のデリバティブを評価する:金利スワップ、通貨スワップ、キャップ・フロア、スワップション、CDSの仕組みと価値の出し方
  • デリバティブで運用とリスク管理をする:ヘッジ、デュレーションや資産配分の調整、ポートフォリオ・インシュアランスなど実践的な使い方

デリバティブ分析の基本情報

試験科目 2次「証券分析とポートフォリオ・マネジメント」(株式分析・債券分析・デリバティブ分析・ポートフォリオ・マネジメント)
試験での出題 午前・午後の総合試験の中で出題(記述式)
学習ポイント数 32項目(大分類4つ)
1次とのつながり 1次では(1)デリバティブの種類と機能、(2)先物・先渡取引、(3)オプション取引、(4)金利・通貨デリバティブ、(6)デリバティブを用いた投資戦略の基礎を学びます。2次では(3)(4)(6)をより深く掘り下げ、さらに(5)クレジット・デリバティブが加わります

全体像:4つの大分類

大分類 ひとことで言うと
(3) オプション取引の仕組みと評価 リスク中立の考え方を軸に、二項モデルとブラック=ショールズ・モデルでオプションの価値と感応度を求める
(4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ 金利スワップ・通貨スワップ、キャップ・フロア、スワップション、債券先物オプション・通貨オプションの仕組みと評価
(5) クレジット・デリバティブ 信用リスクだけを取引するCDSの仕組み、価格の決まり方、リスク管理と投資への使い方
(6) デリバティブを用いた投資戦略 先物・オプション・スワップを使ってヘッジやポートフォリオの調整を行う実践的な手法

各大分類の表にある学習ポイント名をクリックすると、用語解説の記事で意味と試験で問われやすいポイントを確認できます。

参考:1次も含めた大分類の全体像

協会の「主要学習事項と学習ポイント」では、1次と2次で大分類に同じ通し番号を使っています。2次のデリバティブ分析に(1)と(2)が出てこないのは、これらを1次で学ぶためです。2次は1次の内容を前提に出題されるので、全体の流れを参考に確認しておきましょう。

大分類 扱う試験 ひとことで言うと
(1) デリバティブの種類と機能 1次のみ デリバティブとは何か、どんな種類があり、どこで取引されているのかを知る
(2) 先物・先渡取引の仕組みと評価 1次のみ 「将来の売買をいま約束する」取引の仕組みと、その理論価格の決まり方を学ぶ
(3) オプション取引の仕組みと評価 1次・2次 リスク中立の考え方を軸に、二項モデルとブラック=ショールズ・モデルでオプションの価値と感応度を求める
(4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ 1次・2次 金利スワップ・通貨スワップ、キャップ・フロア、スワップション、債券先物オプション・通貨オプションの仕組みと評価
(5) クレジット・デリバティブ 2次のみ 信用リスクだけを取引するCDSの仕組み、価格の決まり方、リスク管理と投資への使い方
(6) デリバティブを用いた投資戦略 1次・2次 先物・オプション・スワップを使ってヘッジやポートフォリオの調整を行う実践的な手法

1次で学ぶ内容は【証券アナリスト1次】デリバティブ分析の記事で学習ポイントごとに解説しています。

(3) オプション取引の仕組みと評価

ポイント:オプションの「適正な値段」を計算する理論の中心です。状態価格・リスク中立確率という考え方から出発し、多期間二項モデル、ブラック=ショールズ・モデル、感応度(グリークス)、インプライド・ボラティリティ、エキゾチック・オプションまで学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
状態価格・リスク中立確率 将来の各状態で1円を受け取る権利の値段(状態価格)や、リスク中立確率で期待値をとって無リスク金利で割り引くと、オプション価値が求まるという考え方
多期間二項モデル(ヨーロピアン) 株価が上下に動くツリーを何期間も重ね、満期の価値から1期ずつ割り引いてさかのぼり、ヨーロピアン・オプションの価値を求める
多期間二項モデル(アメリカン) 各ノードで「いま権利行使した価値」と「持ち続けた価値」を比べて大きい方をとり、途中行使できるアメリカン・オプションを評価する
ブラック=ショールズ・モデルの概要 株価が対数正規分布に従い、ボラティリティや金利が一定などの前提のもとで、オプション価格を式で表すモデルの考え方
BSモデルによる価値算出 コールの価値=株価×N(d1)-権利行使価格の現在価値×N(d2)などの式を使い、ヨーロピアン・オプションの価値を計算する
感応度指標(グリークス) 株価に対するデルタ、デルタの変化を表すガンマ、時間経過のセータ、金利のロー、ボラティリティのベガが、それぞれ何を表すか
デルタと複製ポートフォリオ 株式をデルタ分だけ保有し、残りを借入れ・貸付けで調整すると、オプションと同じ損益を生むポートフォリオを作れる
インプライド・ボラティリティ 市場のオプション価格からモデルを逆算して求める、市場が織り込むボラティリティ。相対的な割高・割安の比較や市場の見方の把握に使う
エキゾチック・オプション バリア・オプション、アジアン・オプション、デジタル・オプションなど、標準的なオプションと条件が異なるものの種類と特徴
モンテカルロ法・複雑な格子法 乱数で多数の価格経路を作って評価するモンテカルロ法や、三項モデルなど複雑な格子を使い、式で解きにくいオプションを評価する

(4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ

ポイント:金利や為替のリスクを取引するデリバティブを扱います。スワップは「契約時点の価格決定(プライシング)」と「その後の価値評価(バリュエーション)」を区別すること、キャップ・フロアやスワップションはオプションとして理解することがポイントです。

学習ポイント 学ぶ内容
金利スワップの仕組み 固定金利と変動金利を交換する取引。固定払い・変動受けにより、変動金利の借入れを実質的に固定金利に変えるといった使い方
スワップと金利先渡契約の関係 金利スワップは、支払日ごとの金利先渡契約(FRA)を束ねたものとみなせるので、その合計として価値を考えられる
スワップのプライシングとバリュエーション 契約時に価値がゼロになる固定金利(スワップレート)の決め方と、契約後に金利が動いたときのスワップの価値の求め方
通貨スワップによる管理 異なる通貨の元本と金利を交換し、外貨建ての借入れを自国通貨建てに変えるなど、債務やキャッシュフローを管理する方法
通貨スワップの価値評価 2つの通貨の債券を持ち合っている(一方をロング、他方をショート)とみなし、それぞれの現在価値を為替レートでそろえて差を計算する
キャップ・フロア・カラー 金利の上限を保証するキャップ、下限を保証するフロア、両方を組み合わせたカラーの仕組み、価格評価と使い方
スワップション 将来、決められた条件で金利スワップを始める権利(オプション)。仕組み、価格評価と、将来の借入れ金利のヘッジなどへの使い方
債券先物オプション 債券先物を原資産とするオプションの仕組みと、先物価格・ボラティリティ・金利などによる価格の決まり方
通貨オプション 為替レートを原資産とするオプションの仕組みと、2つの通貨の金利差も影響するという価格形成の特徴

(5) クレジット・デリバティブ

ポイント:企業の信用リスク(デフォルトのリスク)だけを切り出して売買するCDSを学びます。1次にはない2次ならではの大分類で、仕組み・価格の決まり方・リスク管理・投資戦略という流れで理解します。

学習ポイント 学ぶ内容
CDSの仕組み・種類・パラメータ プロテクションの買い手が保証料を払い、参照企業にクレジット・イベントが起きたら売り手が損失を補償する仕組み。シングルネームとインデックス、想定元本・スプレッド・回収率などの条件
CDSの価格評価と決定要因 デフォルト確率(ハザード・レート)と回収率から、保証料の支払いと補償の受取りの現在価値が釣り合うように価格が決まる考え方と、それを動かす要因
CDSによる信用リスク管理 保有する社債や貸出の信用リスクを、CDSでプロテクションを買うことでヘッジ・移転する方法
CDSを用いた投資戦略 信用力の改善・悪化の見通しに基づく売買や、満期の違うCDSの組合せ、債券とCDSのスプレッドの差(ベーシス)を狙う取引など

(6) デリバティブを用いた投資戦略

ポイント:デリバティブを「使う」側の知識です。オプションのデルタ・ガンマ・ヘッジ、スワップや先物でのデュレーション・資産配分の調整、プロテクティブ・プットとポートフォリオ・インシュアランス、債券先物のヘッジと裁定、アセットスワップまで、運用の現場での使い方を学びます。

学習ポイント 学ぶ内容
目的に合った戦略の選択 ヘッジしたいのか、収益を狙いたいのか、相場見通しは上か下か横ばいかなど、目的に応じて先物・オプション・スワップの戦略を選ぶ
デルタ・ヘッジとガンマ・ヘッジ 原資産で価格変化の影響(デルタ)を打ち消し、さらに別のオプションを使ってデルタの変化(ガンマ)も抑える方法
金利スワップでのデュレーション調整 固定受け・変動払いのスワップでデュレーションを長く、固定払い・変動受けで短くするなど、債券を売買せずに金利リスクを調整する
最小分散ヘッジなどのヘッジ構築 現物と先物の価格変動の関係からヘッジ比率を求め、指数先物で株式ポートフォリオのリスクをできるだけ小さくする方法(ベータを使った枚数計算など)
先物による資産配分の調整 株価指数先物と債券先物を売買して、現物を動かさずに株式と債券の配分を素早く変える方法
プロテクティブ・プット 保有ポートフォリオに指数プット・オプションを組み合わせ、値下がりの損失に下限を設ける戦略とそのリスク管理
ポートフォリオ・インシュアランス プット・オプションを買う代わりに、相場に応じて現物と先物の比率を機動的に変え(ダイナミック・ヘッジング)、プロテクティブ・プットと同じ効果を作る原理
債券先物によるヘッジと裁定 最割安銘柄や換算係数を踏まえて債券先物でヘッジする枚数を決める方法と、先物と現物の価格のずれを利用する裁定取引
アセットスワップによる合成債券 固定利付債と金利スワップ(固定払い・変動受け)を組み合わせ、変動利付債と同じようなキャッシュフローを作る方法

デリバティブ分析を学ぶときのコツ

1. 「複製」と「無裁定」を軸に考える

二項モデル、ブラック=ショールズ・モデル、スワップの評価は、どれも「同じ損益を生むものは同じ価格になる」という無裁定の考え方の上に立っています。公式をばらばらに覚えるのではなく、何と何を組み合わせれば同じ損益になるのかを意識すると、理解がぐっと深まります。

2. 損益図と具体的な数字で確かめる

プロテクティブ・プットやカラー、キャップ・フロアなどは、満期の損益図を自分で描くと仕組みがよく分かります。デルタやヘッジ枚数も、小さな数字の例で実際に計算してみると、記述式で説明する力がつきます。

3. 1次の先物・オプションの基礎を先に固める

2次の内容は、1次で学んだ先物の理論価格、プット・コール・パリティ、1期間の二項モデルが前提です。ここがあやふやな場合は、まず1次の内容を復習してから2次に進みましょう。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、ここで紹介した学習ポイントを1つずつ動画で解説しています。テキストとあわせて活用してください。

よくある質問

Q. 2次のデリバティブ分析は1次と何が違いますか?

1次は先物・オプション・スワップの基本的な仕組みや1期間の二項モデルなどが中心ですが、2次は多期間二項モデルやブラック=ショールズ・モデル、スワップの価値評価、スワップション、CDS、ヘッジや資産配分の調整といった実践的な使い方まで扱います。解答も記述式になり、考え方の説明が求められます。

Q. 計算問題はどのあたりから出ますか?

多期間二項モデルやブラック=ショールズ・モデルによるオプション価値、デルタ・ヘッジ、スワップの価値評価、先物を使ったヘッジ枚数やデュレーション・資産配分の調整などが代表的です。テキストの例題を電卓で実際に解き、手順を身につけておきましょう。

Q. 学習ポイントとは何ですか?

日本証券アナリスト協会が「CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」として公表している、学習内容の一覧です。出題範囲の公式な目安になるので、テキストを読むときはどの学習ポイントを学んでいるのかを意識しましょう。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」にもとづき、証券アナリストアカデミーが要約しています。