ひとことで言うと

  • CDSスプレッドは、プレミアム・レッグ(保証料の支払い)プロテクション・レッグ(補償の受取り)の現在価値が等しくなるように決まります。
  • おおまかには スプレッド ≒ ハザード・レート × (1 − 回収率) という関係で表せます。
  • スプレッドは、デフォルト確率・回収率のほか、市場のリスク・プレミアム、流動性、カウンターパーティ・リスクなどの影響を受けます。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「CDSの価格評価と決定要因」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (5) クレジット・デリバティブ
協会の学習ポイント CDSの市場価格評価の仕組みや決定要因を理解する。

CDSの価格評価とは

CDSには、プロテクションの買い手が保証料を払い続けるプレミアム・レッグと、クレジット・イベントが起きたときに売り手が損失を補償するプロテクション・レッグの2つのキャッシュフローがあります。CDSの価格であるスプレッドは、契約時に両者の現在価値がちょうど等しくなる水準として決まります。

ハザード・レートと生存確率

評価の中心になるのがハザード・レート(デフォルト強度)λです。これは「それまで生き残っていた企業が、次の短い期間にデフォルトする確率の強さ」を年率で表したものです。λが一定なら、t年後まで生き残る確率(生存確率)は e−λt で表せます。プレミアム・レッグは、各支払日まで生き残っている確率を掛けた保証料を割り引いて合計し、プロテクション・レッグは、各期間にデフォルトする確率 × (1 − 回収率) を割り引いて合計して求めます。

クレジット・トライアングル

保証料が連続的に払われるなど単純な仮定を置くと、2つのレッグが等しくなる条件は s ≒ λ × (1 − R) というシンプルな式になります。スプレッド、ハザード・レート、回収率の3つの関係を表すことから「クレジット・トライアングル」と呼ばれます。逆に、市場で観察されるスプレッドと想定した回収率から、市場が織り込むハザード・レートを推定することもできます。ただし、市場から求めたデフォルト確率にはリスク・プレミアムが含まれるため、過去の実績デフォルト率より高めになるのが一般的です。

契約後の時価評価

契約後に参照体の信用力が悪化して市場のスプレッドが上がると、以前の低いスプレッドで保証を買っているプロテクションの買い手に利益が生まれます。その価値は、おおむね「(現在のスプレッド − 約定スプレッド) × リスキー・デュレーション(RPV01)× 想定元本」で求められます。RPV01は、生存確率を考慮した1bpあたりの保証料の現在価値の合計で、残存期間が長いほど大きくなります。

スプレッドの決定要因

スプレッドを押し上げる主な要因は、①財務の悪化や景気後退によるデフォルト確率の上昇、②担保や優先順位などによる回収率の低下、③市場全体のリスク回避によるリスク・プレミアムの上昇、④取引が少ないことによる流動性プレミアムです。また、売り手自身が破綻して補償を受けられないカウンターパーティ・リスクも価格に影響します。

押さえておきたい公式

プレミアム・レッグのPV = プロテクション・レッグのPV契約時にこの条件を満たすスプレッドが決まる
s ≒ λ × (1 − R)クレジット・トライアングル(近似式)
生存確率 Q(t) = e−λtハザード・レートが一定の場合
買い手の時価 ≒ (s現在 − s約定) × RPV01 × 想定元本
記号 意味
s CDSスプレッド(年率)
λ ハザード・レート(デフォルト強度)
R 回収率
RPV01 リスキー・デュレーション(生存確率を考慮したスプレッド1単位あたりの保証料の現在価値)

具体例で確認

例1:スプレッドの近似

参照体のハザード・レートが年2%、回収率が40%なら、s ≒ 0.02 × (1 − 0.40) = 0.012、つまり約120bpです。このときの5年後までの生存確率は e−0.02×5 ≒ 90.5%です。回収率が20%に下がると、s ≒ 0.02 × 0.8 = 160bpに上がります。

例2:時価評価

想定元本10億円、約定スプレッド100bpでプロテクションを買った後、参照体の格下げで市場のスプレッドが150bpに上昇しました。RPV01を4.0とすると、買い手の時価は (1.50% − 1.00%) × 4.0 × 10億円 = 約2,000万円の利益です。売り手には同額の評価損が生じます。

試験で問われやすいポイント

  • CDSスプレッドがプレミアム・レッグとプロテクション・レッグの現在価値を等しくする水準で決まるという原理は、記述式でも説明を求められやすいです。
  • クレジット・トライアングル s ≒ λ(1 − R) を使い、スプレッド・ハザード・レート・回収率のいずれか2つから残りを求める計算がよく出る形です。
  • 回収率が低いほど、デフォルト確率が高いほどスプレッドは高いという影響の方向を押さえましょう。
  • スプレッド拡大でプロテクションの買い手が得、売り手が損になる時価評価の向きと、RPV01を使った計算手順に注意しましょう。
  • 市場スプレッドから求めたデフォルト確率は、リスク・プレミアムを含むため実績デフォルト率と一致しない点もひっかけになりえます。

要点まとめ

  • CDSスプレッドは2つのレッグの現在価値が等しくなるように決まる
  • 近似式 s ≒ λ × (1 − R)(クレジット・トライアングル)
  • スプレッドはデフォルト確率・回収率・リスク・プレミアム・流動性などで動く
  • 契約後のスプレッド拡大はプロテクションの買い手に利益、時価は差 × RPV01 × 想定元本で近似できる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。