CDSによる信用リスク管理とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・デリバティブ分析
ひとことで言うと
- 社債や貸出を持ったまま、CDSでプロテクションを買うことで、その信用リスクを取引相手に移転できます。
- 現物を売却しないので、取引関係や保有資産を維持したまま信用リスクの量を調整できるのが利点です。
- ただし、ベーシス・リスクやカウンターパーティ・リスクなど、完全には消えないリスクが残ります。
この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「CDSによる信用リスク管理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) クレジット・デリバティブ |
| 協会の学習ポイント | CDSを用いた信用リスク管理について理解する。 |
CDSによる信用リスク管理とは
銀行や投資家は、貸出や社債を通じて企業の信用リスクを抱えています。特定の企業への与信が大きくなりすぎた場合、本来は債権を売却するか回収するしかありませんが、貸出は売りにくく、取引先との関係上売りたくない場合もあります。こうしたときに、その企業を参照体とするCDSでプロテクションを買うと、保有資産はそのままで信用リスクだけを外部に移すことができます。
ヘッジの仕組み
社債を保有しながら同じ額のプロテクションを買うと、参照体にクレジット・イベントが起きた場合、社債の損失(額面 − 回収額)とCDSからの受取額(想定元本 ×(1 − 回収率))がほぼ相殺されます。保有者に残るのは、おおむね社債の利回りからCDSの保証料を差し引いた収益で、信用リスクをほとんど負わない資産に近い形になります。
さまざまな使い方
1つの企業や業種への与信集中の是正、今後の信用悪化が心配な銘柄の部分的なヘッジ、新たな融資を行うための与信枠の確保などに使われます。また、ポートフォリオ全体の信用リスクを一度に抑えたい場合には、CDSインデックスでプロテクションを買う方法があります。個別銘柄と完全には一致しませんが、市場全体の信用悪化に対するマクロ・ヘッジとして機能します。
残るリスクに注意
CDSによるヘッジは万能ではありません。保有している貸出とCDSの対象債務で回収率が違ったり、満期がずれていたりすると、損失と補償が一致しないベーシス・リスクが生じます。また、補償を支払うべきプロテクションの売り手が同時に破綻すれば補償を受けられないカウンターパーティ・リスクがあり、参照体と売り手の信用力が連動している場合(誤方向リスク、ロング・ウェイ・リスク)は特に注意が必要です。中央清算機関を利用した清算や担保の授受は、このリスクを抑える手段として使われています。
整理しておきたいポイント
| 残るリスク | 内容 | 主な対応 |
|---|---|---|
| ベーシス・リスク | 保有債権とCDSの対象債務・回収率・クレジット・イベントの定義の違いで、損失と補償がずれる | 条件をできるだけ合わせる、差を認識して管理する |
| 満期のミスマッチ | CDSの期間が保有債権より短いと、満期後の信用リスクが残る | 期間をそろえる、ロールオーバーする |
| カウンターパーティ・リスク | プロテクションの売り手が補償を支払えなくなる | 信用力の高い相手の選択、担保、中央清算 |
| コストと機会損失 | 保証料の支払いで収益が減り、信用力改善の利益もCDS側の損で相殺される | ヘッジ比率や期間を目的に合わせて調整する |
具体例で確認
F銀行はE社に10億円を貸し出しており、E社への与信集中を抑えるため、E社を参照体とする期間5年、想定元本10億円、スプレッド120bpのCDSでプロテクションを買いました。
- 毎年の保証料:10億円 × 1.2% = 1,200万円(F銀行の貸出収益からこの分が差し引かれる)
- 2年後にE社が破綻し、CDSの決済で決まった回収率が35%の場合、CDSからの受取額:10億円 × (1 − 0.35) = 6.5億円
- 貸出の回収率も35%なら、貸出の損失6.5億円はCDSの受取額でちょうど相殺されます。
- ただし、貸出が担保付きで実際には50%回収できた場合、貸出の損失は5億円にとどまり、差額1.5億円はF銀行の利益になります。逆に、貸出の回収率が20%なら、損失8億円に対し補償は6.5億円で、1.5億円の損失が残ります。
このように、CDSで信用リスクの大部分は移転できますが、保有債権とCDSの回収率の差などによるベーシス・リスクは残ります。
試験で問われやすいポイント
- 保有債権の信用リスクをヘッジするにはプロテクションを買う、という向きと、その後のネットの収益(利回り − 保証料)が問われやすいです。
- 現物を売らずに信用リスクだけを移転できる、というCDSを使う利点を記述式で説明できるようにしておきましょう。
- ベーシス・リスク、満期のミスマッチ、カウンターパーティ・リスクなど、ヘッジ後も残るリスクを挙げさせる問題が考えられます。
- 個別銘柄のCDSとCDSインデックスによるヘッジの違い(精度とコスト・流動性のバランス)を整理しておきましょう。
- クレジット・イベント時の損失と補償額を計算し、回収率の違いで差が出ることを示す計算にも備えましょう。
要点まとめ
- CDSでプロテクションを買うと、保有資産を持ったまま信用リスクを移転できる
- 与信集中の是正、部分的なヘッジ、インデックスによるマクロ・ヘッジなどに使われる
- ヘッジ後の収益はおおむね保有資産の利回りから保証料を差し引いたもの
- ベーシス・リスク、満期のミスマッチ、カウンターパーティ・リスクは残る
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
