ひとことで言うと

  • スワップションは、将来の決められた日に、あらかじめ決めた固定金利で金利スワップを始める権利(オプション)です。
  • 固定払いのスワップに入る権利をペイヤーズ・スワップション、固定受けのスワップに入る権利をレシーバーズ・スワップションといいます。
  • 価格は、フォワード・スワップレートを原資産とするブラック・モデルで評価するのが一般的です。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「スワップション」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ
協会の学習ポイント スワップションの仕組みと価格評価、利用方法について理解する。

スワップションとは

スワップション(swaption)は「スワップ(swap)」と「オプション(option)」を合わせた言葉で、将来の行使日に、あらかじめ決めた固定金利(行使レート)で金利スワップを開始する権利のことです。買い手はプレミアムを支払ってこの権利を手に入れ、行使日に有利であれば行使し、不利であれば放棄できます。

ペイヤーズとレシーバーズ

ペイヤーズ・スワップションは「固定金利を払い、変動金利を受け取るスワップ」に入る権利です。行使日の市場スワップレートが行使レートより高ければ、市場より低い固定金利で払えるので行使します。つまり、金利上昇で価値が上がるオプションです。反対にレシーバーズ・スワップションは固定受けスワップに入る権利で、金利が下がると価値が上がります。

債券オプションとの関係

固定受け・変動払いのスワップは「固定利付債のロング+変動利付債のショート」とみなせ、変動利付債は金利の見直し日には額面に等しくなります。このため、レシーバーズ・スワップションは固定利付債を額面で買う権利(債券のコール)、ペイヤーズ・スワップションは固定利付債を額面で売る権利(債券のプット)と同じ性質を持ちます。金利のコールが債券のプットに対応する、という「向きの逆転」に注意しましょう。

価格評価と使い方

価格評価では、行使日に始まるスワップのフォワード・スワップレートが対数正規分布に従うと仮定するブラック・モデルがよく使われます。キャップレットの評価式と形は似ていますが、スワップは複数回の支払いがあるため、1期分の割引係数の代わりにアニュイティ(各支払日の割引係数×期間の合計)を掛けます。ボラティリティが高いほど、行使日までの期間が長いほど、価値は高くなります。

使い方の代表例は、将来の借入金利のヘッジです。1年後に変動金利で借入れを予定している企業がペイヤーズ・スワップションを買っておけば、金利が上がったときは行使して固定金利を上限に抑え、金利が下がったときは行使せずに低い金利で調達できます。また、期限前償還条項(コール条項)付き債券の発行体が持つ権利は、経済的にはレシーバーズ・スワップションに近いものとして分析されます。

押さえておきたい公式

ペイヤーズの価値 = N × A × [F × N(d1) − K × N(d2)]
レシーバーズの価値 = N × A × [K × N(−d2) − F × N(−d1)]
d1 = [ln(F ÷ K) + σ2T ÷ 2] ÷ (σ√T)、d2 = d1 − σ√Tペイヤーズ − レシーバーズ = 行使レートKのフォワード・スタートの固定払いスワップ
記号 意味
N 想定元本
A アニュイティ(スワップ期間中の各支払日の割引係数×期間の長さの合計)
F フォワード・スワップレート
K 行使レート
σ、T フォワード・スワップレートのボラティリティ、行使日までの期間(年)

具体例で確認

1年後に開始する3年スワップについて、行使レート2.0%のペイヤーズ・スワップションを考えます。想定元本10億円、フォワード・スワップレート2.0%、ボラティリティ20%、アニュイティ2.85とします。

  1. d1 = [ln(2.0 ÷ 2.0) + 0.22 × 1 ÷ 2] ÷ (0.2 × 1) = 0.10、d2 = 0.10 − 0.20 = −0.10
  2. N(0.10) ≒ 0.5398、N(−0.10) ≒ 0.4602
  3. 価値 = 10億 × 2.85 × (0.02 × 0.5398 − 0.02 × 0.4602) ≒ 10億 × 2.85 × 0.001592 ≒ 約454万円

この例はアット・ザ・マネー(F = K)なので、同じ条件のレシーバーズ・スワップションの価値も同じ約454万円になります。1年後にスワップレートが3.0%に上がっていれば、行使して2.0%で固定払いできるため、年1.0%分の金利負担を抑えられます。

試験で問われやすいポイント

  • ペイヤーズ=金利上昇で得、レシーバーズ=金利低下で得という向きと、どちらが借り手のヘッジに使えるかが問われやすいです。
  • ペイヤーズ・スワップションは債券のプット、レシーバーズは債券のコールに対応するという関係は、記述式でも説明を求められやすい論点です。
  • ブラック・モデルでは、キャップレットと違いアニュイティを掛ける点が計算のポイントです。
  • ペイヤーズ − レシーバーズ = フォワード・スタートの固定払いスワップというパリティ関係を押さえましょう。
  • スワップの「予約」(フォワード・スワップ)と違い、不利なら行使しない選択ができる代わりにプレミアムがかかる点を比較できるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • スワップション=将来、決めた固定金利で金利スワップを始める権利
  • ペイヤーズは固定払いスワップに入る権利で金利上昇に備え、レシーバーズはその逆
  • ペイヤーズは債券のプット、レシーバーズは債券のコールに相当する
  • フォワード・スワップレートを原資産とし、アニュイティを掛けたブラック・モデルで評価する

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。