ひとことで言うと

  • 通貨オプションは、外貨をあらかじめ決めた為替レート(行使レート)で買う権利(コール)または売る権利(プット)です。
  • 外貨は保有すると外貨金利を生むため、価格評価では自国通貨と外貨の2つの金利が影響します。
  • 標準的な評価モデルは、配当利回りの代わりに外貨金利を使うガーマン=コールハーゲン・モデルです。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「通貨オプション」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ
協会の学習ポイント 通貨オプション取引の仕組みと価格形成について理解する。

通貨オプションとは

通貨オプションは、為替レートを原資産とするオプションです。たとえば「ドル・コール/円プット」は、満期に1ドルを行使レート(たとえば150円)で買う権利を表します。買い手はプレミアムを支払う代わりに、為替が有利に動いたときだけ権利を行使でき、不利なときは放棄して市場レートで取引できます。

為替ヘッジへの使い方

将来ドルを受け取る輸出企業は、円高(ドル安)になると円での受取額が減ってしまいます。そこでドル・プット(ドルを売る権利)を買うと、円高になっても行使レートでドルを売れるので、受取額の下限を確保できます。円安になれば権利を放棄し、有利な市場レートで売れます。反対に、将来ドルを支払う輸入企業は、円安への備えとしてドル・コールを買います。為替予約(フォワード)で固定する方法と比べると、プレミアムがかかる代わりに有利な方向の利益を残せる点が違いです。

価格形成と2つの金利

通貨オプションの評価では、外貨を「保有していると外貨金利という利回りを生む資産」とみなします。これは配当を支払う株式と同じ構造なので、ブラック=ショールズ・モデルの配当利回りを外貨金利に置き換えたガーマン=コールハーゲン・モデルで価格を求めます。

このため、外貨金利が自国金利より高いと、為替のフォワード・レートはスポットより外貨安(円高)方向になり、コールは安く、プットは高くなります。自国金利が上がるとコールの価値は上がり、外貨金利が上がるとコールの価値は下がります。ボラティリティと残存期間は、他のオプションと同じく高い・長いほど価値を高めます。

押さえておきたい公式

C = S × e−rfT × N(d1) − K × e−rdT × N(d2)
P = K × e−rdT × N(−d2) − S × e−rfT × N(−d1)
d1 = [ln(S ÷ K) + (rd − rf + σ2 ÷ 2)T] ÷ (σ√T)、d2 = d1 − σ√T
F = S × e(rd − rf)T  C − P = S × e−rfT − K × e−rdT金利平価によるフォワード・レートと、通貨オプションのプット・コール・パリティ
記号 意味
S スポット為替レート(外貨1単位あたりの円)
K 行使レート
rd、rf 自国通貨(円)の金利、外貨の金利(連続複利)
σ、T 為替レートのボラティリティ、満期までの期間(年)

具体例で確認

スポット1ドル=150円、行使レート150円、円金利0.5%、ドル金利4.0%、ボラティリティ10%、満期6か月(T = 0.5)のドル・コールとドル・プットを評価します。

  1. フォワード・レート:150 × e(0.005 − 0.04)×0.5147.40円(ドル金利が高いのでスポットより円高)
  2. d1 = [0 + (0.005 − 0.04 + 0.005) × 0.5] ÷ (0.1 × √0.5) ≒ −0.212、d2 ≒ −0.283
  3. S × e−rfT ≒ 147.03、K × e−rdT ≒ 149.63、N(d1) ≒ 0.4160、N(d2) ≒ 0.3886
  4. コール:147.03 × 0.4160 − 149.63 × 0.3886 ≒ 約3.01円
  5. プット:パリティより 3.01 + (149.63 − 147.03) ≒ 約5.61円

スポットと行使レートが同じでも、ドル金利が円金利より高いため、ドル・プットの方がドル・コールより高くなっています。

試験で問われやすいポイント

  • 輸出企業は外貨プットの買い、輸入企業は外貨コールの買いでヘッジする、という向きが問われやすいです。
  • ガーマン=コールハーゲン・モデルは、配当利回りを外貨金利に置き換えたブラック=ショールズ・モデルである点を押さえましょう。
  • 外貨金利が高いほどコールは安く、プットは高い、自国金利が高いほどコールは高いという影響の方向が狙われやすいです。
  • 為替予約によるヘッジとオプションによるヘッジの違い(利益機会を残せるがプレミアムがかかる)を記述式で説明できるようにしておきましょう。
  • 通貨オプションのプット・コール・パリティを使って、一方の価格から他方を求める計算に慣れておきましょう。

要点まとめ

  • 通貨オプション=外貨を決めたレートで買う権利(コール)・売る権利(プット)
  • 輸出企業は外貨プット、輸入企業は外貨コールを買ってヘッジする
  • 評価はガーマン=コールハーゲン・モデルで、自国通貨と外貨の2つの金利を使う
  • 外貨金利が自国金利より高いと、コールは安くプットは高くなる

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。