ひとことで言うと

  • 最小分散ヘッジは、現物と先物を組み合わせたポジションの価格変動(分散)が最も小さくなるように、先物の量(ヘッジ比率)を決める方法です。
  • 最適なヘッジ比率は h* = ρ × σS ÷ σF(現物と先物の共分散 ÷ 先物の分散)で求めます。
  • 株式ポートフォリオを指数先物でヘッジする場合は、ベータを使って先物の売り枚数を計算するのが基本です。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「最小分散ヘッジなどのヘッジ構築」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (6) デリバティブを用いた投資戦略
協会の学習ポイント 指数先物取引を用いたポートフォリオの最小分散ヘッジなど、ヘッジ・ポジションの構築手法について理解する。

最小分散ヘッジとは

保有する株式ポートフォリオの値下がりに備えて株価指数先物を売る場合、「ポートフォリオと同じ金額だけ売る」のが最適とは限りません。ポートフォリオと指数では値動きの大きさが違い、完全に連動もしないからです。そこで、現物の価格変化と先物の価格変化の関係を使い、ヘッジ後のポジション全体の分散が最小になるように先物の量を決めるのが最小分散ヘッジです。

最小分散ヘッジ比率

現物1単位に対して先物をh単位売るとき、ヘッジ後の価格変化の分散は h の2次式になり、これを最小にする h は「現物と先物の価格変化の共分散 ÷ 先物の価格変化の分散」です。これは、現物の価格変化を先物の価格変化で回帰したときの傾き(回帰係数)と同じ意味を持ちます。相関係数ρが1に近いほどヘッジはよく効き、ヘッジで減らせる分散の割合はρ2で表されます(ヘッジの有効性)。

ベータを使った先物枚数

株式ポートフォリオを株価指数先物でヘッジする場合、ポートフォリオの指数に対するベータが最小分散ヘッジ比率の役割を果たします。ベータ1.2のポートフォリオは指数の1.2倍動くと考えられるので、時価の1.2倍に相当する先物を売ります。また、ベータを0にするのではなく目標の値(たとえば0.5)に下げたいときは、差の分だけ先物を売買します。

ヘッジが完全にならない理由

ポートフォリオと指数の値動きのずれ(ベーシス・リスク)、ベータや相関の推定誤差・時間変化、先物の枚数が整数でしか取引できないこと、満期のずれなどにより、ヘッジは完全にはなりません。ヘッジ比率は定期的に見直す必要があります。

押さえておきたい公式

h* = Cov(ΔS, ΔF)÷ Var(ΔF) = ρ × σS ÷ σF最小分散ヘッジ比率。ヘッジの有効性(減らせる分散の割合)= ρ2
先物の売り枚数 = β × P ÷(F × 乗数)ベータを0にするヘッジ。目標ベータβTに調整するときは(βT − β)× P ÷(F × 乗数)で、マイナスなら売り
記号 意味
σS、σF 現物・先物の価格変化の標準偏差
ρ 現物と先物の価格変化の相関係数
β ポートフォリオのベータ(指数に対する感応度)
P ポートフォリオの時価
F × 乗数 先物1枚あたりの金額

具体例で確認

例1:ヘッジ比率
現物の価格変化の標準偏差が20%、先物が25%、相関係数が0.9のとき、h* = 0.9 × 20% ÷ 25% = 0.72です。現物1円分に対し先物0.72円分を売るのが最小分散ヘッジで、ヘッジの有効性は0.92 = 0.81(分散の81%を減らせる)となります。

例2:先物枚数
時価10億円、ベータ1.2の株式ポートフォリオを、指数先物(価格2,800ポイント、乗数1万円と仮定)でヘッジします。先物1枚の金額は2,800 × 1万円 = 2,800万円なので、

1.2 × 10億円 ÷ 2,800万円 ≒ 42.9 → 約43枚の売り

となります。もしベータを1.2から0.6に下げたいだけなら、(0.6 − 1.2)× 10億円 ÷ 2,800万円 ≒ −21.4なので、約21枚の売りで済みます。

試験で問われやすいポイント

  • 最小分散ヘッジ比率 h* = ρ × σS ÷ σF の計算と、それが回帰係数(ベータ)と同じ意味を持つこと。
  • ヘッジの有効性がρ2で表されること。相関が低いとヘッジ効果が小さくなる。
  • 先物枚数の計算で、先物1枚の金額(価格 × 乗数)を正しく使うこと。
  • 目標ベータへの調整(完全ヘッジではなく部分的なヘッジ)の計算と売り・買いの判断。
  • 記述式では、ベーシス・リスクなどヘッジが完全にならない理由の説明や、枚数の計算過程を示させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 最小分散ヘッジは、ヘッジ後の分散が最小になる先物の量を求める方法。
  • ヘッジ比率は「共分散 ÷ 先物の分散」= ρσS/σF、有効性はρ2
  • 指数先物での株式ヘッジは、ベータ × 時価 ÷ 先物1枚の金額で枚数を求める。
  • ベーシス・リスクや推定誤差があるため、ヘッジは完全ではなく見直しが必要。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。