ひとことで言うと

  • インプライド・ボラティリティ(IV)とは、市場で実際についているオプション価格から、BSモデルなどを逆算して求めたボラティリティです。
  • 市場参加者が将来の価格変動の大きさをどう見ているか(市場の予想)を表します。
  • オプションの割高・割安の比較や、市場の不安心理の把握、ほかのオプションの価格付けなどに使われます。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「インプライド・ボラティリティ」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (3) オプション取引の仕組みと評価
協会の学習ポイント インプライド・ボラティリティの意義と利用方法について理解する。

インプライド・ボラティリティとは

ブラック=ショールズ・モデルでオプション価格を計算するには、株価・権利行使価格・残存期間・無リスク金利・ボラティリティの5つが必要です。このうち、ボラティリティだけは市場で直接観察できません。そこで逆に、市場のオプション価格とモデル価格が一致するようなボラティリティを求めたものが、インプライド・ボラティリティです。「価格に織り込まれた(implied)ボラティリティ」という意味です。

ヒストリカル・ボラティリティとの違い

過去の株価の収益率から計算した標準偏差をヒストリカル・ボラティリティ(HV)といいます。HVが「過去の実績」なのに対し、IVは「市場が予想する将来の変動」です。両者を比べて、IVがHVや自分の予想より高ければオプションは相対的に割高、低ければ割安と判断する材料になります。

求め方

BS式はボラティリティについて解くことができない(逆関数を式で表せない)ため、IVは試行錯誤や数値計算で求めます。ボラティリティが上がるとオプション価格は必ず上がる(ベガが正)ので、モデル価格が市場価格に一致するまでσを調整すれば、答えは1つに決まります。実務ではニュートン法などが使われ、手計算ではベガを使った近似が便利です。

利用方法と注意点

IVはオプション価格を「率」で表すため、権利行使価格や満期が違うオプションの割高・割安を同じ物差しで比べられます。トレーダーの間では価格そのものではなくIVで気配を出すこともあり、株価指数オプションのIVから作られる指数は、市場の不安心理を表す指標として注目されます。ただし、BSモデルの前提どおりならIVは権利行使価格によらず一定のはずですが、実際には権利行使価格によってIVが異なるボラティリティ・スマイル(スキュー)が見られます。株価指数オプションでは、権利行使価格が低い(アウト・オブ・ザ・マネーのプット側)ほどIVが高くなる傾向がよく知られています。

押さえておきたい公式

市場価格 = BS(S , K , T , r , σIV)この等式を満たすσIVがインプライド・ボラティリティ(数値計算で求める)
σIV ≒ σ0 + (市場価格 − BS価格(σ0)) ÷ ベガベガを使った1次近似(ニュートン法の1ステップ)
項目 インプライド(IV) ヒストリカル(HV)
求め方 オプション価格からモデルで逆算 過去の収益率の標準偏差
時間の向き 将来の予想(フォワード・ルッキング) 過去の実績
主な使い道 割高・割安の比較、市場心理の把握 IVとの比較、リスク計測

具体例で確認

株価100円、権利行使価格100円、残存1年、無リスク金利5%のコールが、市場で12円で取引されているとします。

  1. σ=20%で計算したBS価格は約10.45円、ベガは約37.5(σが1%ポイント上がると約0.375円上昇)
  2. 近似:20% + (12 − 10.45) ÷ 0.375 × 1% ≒ 20% + 4.1% ≒ 24.1%
  3. 確認:σ=24%でBS価格は約11.96円、25%で約12.34円なので、12円に対応するIVは約24.1%です。

この株のヒストリカル・ボラティリティが20%程度なら、市場は過去より大きな変動を予想している(あるいはオプションが相対的に割高になっている)と読み取れます。

試験で問われやすいポイント

  • IVの定義(市場価格からモデルを逆算したボラティリティ)と、HVとの違いがよく問われます。
  • BS式はσについて解けないため数値計算や試行錯誤で求めること、ベガが正なので解が1つに決まることを押さえましょう。
  • IVが高い=オプションが相対的に割高、という解釈の方向と、IVを使って満期や行使価格の違うオプションを比較できる点が確認されやすいです。
  • ボラティリティ・スマイル(スキュー)の存在がBSモデルの前提(ボラティリティ一定・対数正規分布)と矛盾する点は、記述式で説明を求められやすい論点です。
  • ベガを使ったIVの近似計算など、計算過程を示す形式にも備えておくと安心です。

要点まとめ

  • IV=市場のオプション価格に織り込まれたボラティリティ(モデルから逆算)
  • HVは過去の実績、IVは市場の将来予想
  • 割高・割安の比較や市場心理の把握に使う
  • 行使価格によってIVが異なるスマイル(スキュー)はBSの前提とのずれを示す

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。