ひとことで言うと

  • ポートフォリオ・インシュアランスは、プット・オプションを実際に買う代わりに、現物と先物(または安全資産)の比率を相場に応じて変え、プロテクティブ・プットと同じ効果を作る方法です。
  • 相場が下がれば先物を売り増して株式エクスポージャーを減らし、上がれば買い戻して増やします(ダイナミック・ヘッジング)。
  • 保つべき株式エクスポージャーの割合は、プロテクティブ・プットのデルタ(ブラック=ショールズ・モデルでは N(d1))で決まります。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「ポートフォリオ・インシュアランス」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (6) デリバティブを用いた投資戦略
協会の学習ポイント 現物と指数先物を利用したポートフォリオ・インシュアランスの原理とポジション構築方法(ダイナミック・ヘッジング)について理解する。

ポートフォリオ・インシュアランスとは

プロテクティブ・プットは、ポートフォリオの損失に下限を設けられる便利な戦略ですが、希望する満期や権利行使価格のプットが市場にない、大きな金額を扱うには流動性が足りない、といった問題があります。そこで、オプションの複製の考え方を使い、現物と指数先物の組合せでプロテクティブ・プットと同じ損益を作り出すのがポートフォリオ・インシュアランスです。

原理:デルタで複製する

「株式1単位 + プット1単位」というプロテクティブ・プットのポジションのデルタは、1 + プットのデルタです。ブラック=ショールズ・モデルではプットのデルタは N(d1) − 1 なので、合計のデルタは N(d1)になります。つまり、株式1単位あたり N(d1) 単位の株式エクスポージャーを持ち、残りを安全資産にしておけば、短い期間ではプロテクティブ・プットと同じ値動きをします。

先物を使ったポジション構築

現物株式を売買する代わりに、現物はすべて持ったまま指数先物を売って株式エクスポージャーを減らします。株式エクスポージャーを N(d1) にしたいなら、ポートフォリオのうち(1 − N(d1))に相当する金額の先物を売ります。先物の売りは「株式を売って安全資産に置き換える」のと同じ効果を持つためです。先物を使えば取引コストが小さく、現物の運用を変えずに済みます。

ダイナミック・ヘッジング

N(d1) は株価や残存期間とともに変わるため、ポジションを継続的に調整します。株価が下落するとN(d1) が小さくなるので先物を売り増し上昇するとN(d1) が大きくなるので先物を買い戻します。この「下がったら売る、上がったら買う」という動きは、相場の値動きを増幅させる可能性があると指摘されてきました。

弱点

  • 価格が急落(ジャンプ)すると調整が間に合わず、下限を守れないことがあります。
  • 実際のボラティリティがモデルの想定と違うと、複製にかかるコストが変わります(事前にコストが確定するプットの購入とは異なります)。
  • 頻繁な調整には取引コストがかかり、先物のベーシス・リスクも残ります。

押さえておきたい公式

プロテクティブ・プットのデルタ = 1 +(N(d1)− 1)= N(d1株式1単位あたりに保つべき株式エクスポージャー
先物で売る金額 ≒(1 − N(d1))× 現物ポートフォリオの時価ベータが1でなければベータで調整。先物価格と現物価格の差による微調整は省略
d1 = [ln(S ÷ K)+(r + σ2 ÷ 2)T]÷(σ√T)

具体例で確認

指数に連動する株式ポートフォリオ(指数水準100)について、1年後の下限を95(権利行使価格K=95のプットに相当)にしたいとします。ボラティリティ20%、無リスク金利1%とします。

指数の水準 d1 N(d1)=株式エクスポージャー 先物で売る割合
100(当初) 1)=株式エクスポージャー”>約65.8% 約34.2%
90に下落 1)=株式エクスポージャー”>約45.2% 約54.8%
110に上昇 1)=株式エクスポージャー”>約81.1% 約18.9%

(下落・上昇のケースも残存期間は1年のまま、と単純化しています。)当初は時価の約34%分の先物を売っておき、指数が90に下がれば先物を売り増して株式エクスポージャーを約45%まで減らし、110に上がれば先物を買い戻して約81%まで増やします。このように相場の動きに合わせて調整を続けることで、プロテクティブ・プットに近い損益を作ります。

試験で問われやすいポイント

  • ポートフォリオ・インシュアランスはプロテクティブ・プットの複製であり、保つべき株式エクスポージャーはN(d1)であること。
  • 下落時は先物の売り増し、上昇時は買い戻しという調整の方向(順張り的な売買になる)。
  • 先物の売りが「株式を売って安全資産を持つ」ことと同じ効果を持つ理由。
  • 急落時に下限を守れないリスク、ボラティリティの見込み違い、取引コストなど、実際のプット購入との違い。
  • 記述式では、d1とN(d1)から先物の売り金額を計算させたり、ダイナミック・ヘッジングの仕組みや問題点を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • ポートフォリオ・インシュアランスは、現物と先物でプロテクティブ・プットを複製する方法。
  • 保つべき株式エクスポージャーはN(d1)、先物で売るのは残りの(1 − N(d1))。
  • 下落で先物を売り増し、上昇で買い戻すダイナミック・ヘッジングが必要。
  • 急落時やボラティリティの見込み違いで下限を守れないリスクがある。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。