ひとことで言うと

  • 残余利益モデルで求めた株式価値(簿価+残余利益の現在価値)と市場株価を比べ、価値の方が高ければ割安、低ければ割高と判断します。
  • 株価と簿価の差(P − B)は、市場が期待する将来の残余利益を表しているとみなせます。
  • 残余利益がどれだけ続くか(持続性)の前提によって結論が変わるため、複数のシナリオで確認することが大切です。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「残余利益モデルでの割高・割安判断」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (4) 株式価値評価モデルの活用
協会の学習ポイント 残余利益モデルに基づく株価の割高・割安判断の手法を理解する。

残余利益モデルによる割高・割安判断とは

残余利益モデルでは、株式の本源的価値を V0 = B0 + 将来の残余利益の現在価値の合計 として求めます。残余利益は「当期純利益 − 株主資本コスト × 期首簿価」、つまりROEが資本コストを上回った分の超過利益です。このVと市場株価Pを比べることで、DDMと同じように割高・割安を判断できます。

PBRとの関係

V ÷ B0を考えると、将来のROEが資本コストkを上回ると見込まれる企業は、価値が簿価を上回り、理論上のPBRは1倍を超えます。逆にROEがkを下回ると見込まれる企業は、PBRが1倍を下回るのが理論的な姿です。市場のPBRと、自分のROE予想から導かれる理論的なPBRを比べるのも、割高・割安判断の1つの見方です。

判断の進め方

一般には、数年間は利益と配当を個別に予想して残余利益を求め、その後は残余利益が一定率で成長する、横ばいで続く、あるいは徐々に縮小してゼロに近づく、といった仮定を置いて継続価値を計算します。求めたVが市場株価Pを上回れば割安、下回れば割高です。

DDMと比べた長所と注意点

残余利益モデルでは価値の多くが現在の簿価で説明されるため、DDMより継続価値への依存度が小さくなりやすく、無配企業にも使えます。一方、会計数値の質や、クリーン・サープラス関係が成り立つかに結果が左右されます。また、超過利益が長く続くと仮定するほど価値は大きくなるため、持続性の前提が判断の分かれ目になります。

押さえておきたい公式

V0 = B0 + RI1 ÷ (1 + k) + RI2 ÷ (1 + k)2 + …残余利益モデル
RIt = Et − k × Bt−1 = (ROEt − k) × Bt−1
V0 > P0 なら割安、V0 < P0 なら割高

具体例で確認

L社の1株当たり簿価B0は800円、株主資本コストkは8%、市場株価は1,200円です。今後2年間のROEは12%、配当は1年目36円と予想し、3年目以降は残余利益が年2%で成長すると仮定します。

  1. 1年目:E1 = 800 × 12% = 96円、RI1 = 96 − 800 × 8% = 32円
  2. 1年目末の簿価:B1 = 800 + 96 − 36 = 860円
  3. 2年目:E2 = 860 × 12% = 103.2円、RI2 = 103.2 − 860 × 8% = 34.4円
  4. 2年目時点の継続価値:34.4 × 1.02 ÷ (0.08 − 0.02) = 584.8円
  5. 現在価値:32 ÷ 1.08 ≒ 29.63円、34.4 ÷ 1.082 ≒ 29.49円、584.8 ÷ 1.082 ≒ 501.37円
  6. 株式価値:800 + 29.63 + 29.49 + 501.37 ≒ 1,360.5円 → 市場株価1,200円より高く割安

3年目以降の残余利益が成長せず34.4円のまま続くと仮定すると、継続価値は34.4 ÷ 0.08 = 430円(現在価値 約368.66円)、株式価値は約1,227.8円となり、割安の幅は小さくなります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「残余利益モデル・インプライド成長率・株価の割高割安判断を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 予想ROE・配当から簿価の推移→残余利益→株式価値と順に計算し、市場株価と比べる問題が考えられます。
  • 残余利益は期首簿価に資本コストを掛けて差し引く点、簿価の更新でクリーン・サープラス関係を使う点に注意しましょう。
  • ROE>kなら理論PBR>1倍、ROE<kなら1倍未満というPBRとの関係が問われやすいです。
  • 残余利益の持続性の仮定によって結論が変わることを、記述式で説明できるようにしておきましょう。

要点まとめ

  • 株式価値=簿価+将来の残余利益の現在価値
  • 株式価値>市場株価なら割安、<なら割高
  • ROEとkの大小が理論PBRが1倍を上回るかどうかを決める
  • 残余利益の持続性の前提を変えて結論の頑健性を確かめる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。