所有期間リターンと内部収益率とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・株式分析
ひとことで言うと
- 所有期間リターンは、ある期間に実際に得た(または得ると見込む)配当と値上がり益を投資額で割った収益率です。
- 要求収益率はリスクに見合って投資家が最低限求めるリターン、割引率は価値評価で使う率で、通常は要求収益率を使います。
- 内部収益率(IRR)は、市場株価と予想キャッシュフローの現在価値を一致させる率で、期待リターンを表します。IRR>要求収益率なら割安と判断できます。
この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「所有期間リターン・要求収益率・IRR」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 株式リターンの分析と株式ポートフォリオによる投資戦略 |
| 協会の学習ポイント | 株式の所有期間リターン、株主の要求収益率、割引率、内部収益率について理解する。 |
所有期間リターンと内部収益率とは
株式分析では「リターン」や「収益率」という言葉がいくつも出てきますが、それぞれ意味が違います。この学習ポイントでは、実際に得たリターン、投資家が求めるリターン、評価に使う割引率、株価から逆算する内部収益率という4つの概念を区別することが求められます。
所有期間リターン
所有期間リターン(HPR)は、株式を保有した期間に得た配当と売買差益の合計を、購入価格で割ったものです。実際の結果として計算すれば事後的(実現)リターン、将来の配当と売却価格の予想から計算すれば期待リターンになります。
要求収益率と割引率
要求収益率は、その株式のリスクを負担する対価として投資家が求める最低限のリターンで、CAPMなどで推計されます。株主資本コストとも呼ばれ、企業側から見れば資金調達のコストです。割引率は、将来のキャッシュフローを現在価値に直すときに使う率で、株式価値の評価では通常この要求収益率を用います。
内部収益率(IRR)
IRRは、現在の市場株価で株式を買い、予想どおりの配当と売却価格を受け取ったとき、実際に得られるリターンを表します。数式上は「予想キャッシュフローの現在価値=市場株価」となる割引率です。市場が均衡していて株価が本源的価値と一致していれば、IRRと要求収益率は等しくなります。IRRが要求収益率を上回れば、リスクに比べて得られるリターンが大きいので割安、下回れば割高と判断します。
押さえておきたい公式
具体例で確認
例1:所有期間リターン
株価1,000円で購入し、1年間で配当30円を受け取り、1,100円で売却しました。
- インカム:30 ÷ 1,000 = 3%
- キャピタル:(1,100 − 1,000) ÷ 1,000 = 10%
- 所有期間リターン:3% + 10% = 13%
例2:IRRと要求収益率の比較
M社の株価は1,000円です。1年後に40円、2年後に42円の配当を受け取り、2年後に1,100円で売却できると予想します。CAPMによる要求収益率は8%です。
- IRRを8%と置くと:40 ÷ 1.08 + 1,142 ÷ 1.082 ≒ 37.04 + 979.08 = 1,016.12円(株価より高い)
- 現在価値が株価1,000円と一致する率を探すと、IRR ≒ 8.9%
- IRR 8.9% > 要求収益率8%なので、予想が正しければ割安と判断できます。
要求収益率8%で割り引いた価値(約1,016円)が株価1,000円を上回ることとも整合しています。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「株式の所有期間リターン、株主の要求収益率、割引率、内部収益率について理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- 所有期間リターンをインカムとキャピタルに分けて計算する問題が出やすいです。
- 要求収益率(投資家が求める)とIRR(株価から逆算した期待リターン)の違いが混同しやすいポイントです。
- IRRと要求収益率の大小で割高・割安を判断し、理論株価と市場株価の比較と結論が一致することを押さえましょう。
- 市場が均衡していればIRR=要求収益率になる、という関係が問われることがあります。
- 記述式では、それぞれの概念の定義と使われ方の違いを説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- 所有期間リターン=(配当+売却価格−購入価格)÷購入価格
- 要求収益率はリスクに見合う最低限のリターンで、評価の割引率に使う
- IRRは市場株価と予想キャッシュフローの現在価値を一致させる率
- IRR>要求収益率なら割安、均衡では両者が一致する
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
