ひとことで言うと

  • 会社分割や事業譲渡で事業を他社に移したとき、移転した事業への投資が清算されたとみれば移転損益を認識し、投資が継続しているとみれば移転損益を認識しません。
  • 対価が現金なら「清算」、対価が移転先の株式で移転先が子会社・関連会社になるなら「継続」と判断するのが基本です。

この記事では、証券アナリスト2次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「事業の移転と損益の認識」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/財務分析
大分類 (8) 企業結合会計
協会の学習ポイント 事業の移転と損益の認識の関係について理解する。

事業の移転と損益の認識とは

会社分割や事業譲渡などで、ある事業を他の会社(分離先企業)に移転することを事業分離といいます。日本基準(事業分離等に関する会計基準)では、事業を移転した側(分離元企業)が移転損益を認識するかどうかを、投資の継続・清算という考え方で判断します。

投資が清算された場合

事業を移転した見返りに現金など、移転した事業とは明らかに異なる資産を受け取った場合は、その事業への投資はいったん終わった(清算された)と考えます。このときは、受け取った対価の時価と、移転した事業に係る株主資本相当額(移転した資産と負債の差額)との差額を移転損益として認識します。事業を売却したのと同じイメージです。

投資が継続している場合

対価として分離先企業の株式を受け取り、その分離先企業が自社の子会社関連会社になる場合は、形を変えて同じ事業に投資し続けていると考えます。このときは移転損益を認識せず、受け取った株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額で計上します。

一方、株式を受け取っても、分離先企業が子会社にも関連会社にもならない場合は、事業への影響力を手放したと考え、投資は清算されたものとして移転損益を認識します。

財務分析での意味

事業の再編に伴って一時的な移転利益が計上されることがあります。こうした利益は本業の稼ぐ力とは性格が異なるため、利益の持続性を分析する際には区別して考えることが大切です。反対に、同じような再編でも投資継続と判断されれば損益は出ないため、再編の形態によって利益の見え方が変わることを理解しておきましょう。なお、IFRSでは子会社に対する支配を喪失した場合、残存持分を公正価値で測定し直して損益を認識するなど、考え方が異なる部分があります。

整理しておきたいポイント

受け取る対価 分離先企業との関係 判断 移転損益
現金など 投資の清算 認識する
分離先企業の株式 子会社になる 投資の継続 認識しない
分離先企業の株式 関連会社になる 投資の継続 認識しない
分離先企業の株式 子会社・関連会社以外 投資の清算 認識する

具体例で確認

A社が、資産800・負債200の事業(株主資本相当額600)を他社に移転したとします。受け取る対価の時価はいずれも1,000です。

  • 現金1,000を受け取る:投資の清算。移転利益 = 1,000 − 600 = 400
  • 分離先企業の株式を受け取り、分離先が子会社になる:投資の継続。移転損益は0、子会社株式の取得原価は600
  • 分離先企業の株式を受け取るが、子会社・関連会社にならない:投資の清算。移転利益は400、株式は時価1,000で計上

同じ事業を同じ価値で手放しても、対価の種類と移転先との関係によって、当期の利益が400変わることがわかります。

試験で問われやすいポイント

  • 「投資の継続→損益を認識しない」「投資の清算→損益を認識する」という対応関係が基本です。
  • 対価が株式でも、分離先が子会社・関連会社にならなければ清算とみなされる点がひっかけになりやすいです。
  • 移転損益 = 受取対価の時価 − 移転事業に係る株主資本相当額、という計算を正確にできるようにしましょう。
  • 投資継続の場合、受け取った株式の取得原価が「移転事業の株主資本相当額」になる点も押さえましょう。
  • 記述式では、再編による一時的な損益が利益の質や持続性の分析にどう影響するかを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 事業分離では、投資の継続・清算で移転損益を認識するかどうかが決まる。
  • 現金などを受け取れば清算、子会社・関連会社株式を受け取れば継続が基本。
  • 清算の場合の移転損益は、受取対価の時価と株主資本相当額の差額。
  • 再編による一時的な損益は、本業の利益と区別して分析する。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。