ひとことで言うと

  • パラメトリック法(分散・共分散法)は、リターンが正規分布に従うなどと仮定し、標準偏差と相関からVaRを計算します。
  • ヒストリカル法は、過去のリターンをそのまま現在のポートフォリオに当てはめ、損益の分布からVaRを読み取ります。
  • モンテカルロ法は、確率モデルから乱数で大量のシナリオを発生させ、その損益分布からVaRを求めます。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「VaRの3つの推定方法」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (3) ポートフォリオの構築とリスク管理
協会の学習ポイント VaRの推定方法(パラメトリック法、ヒストリカル法、モンテカルロ法)の特性や利用方法について理解する。

VaRの推定方法とは

VaR(バリュー・アット・リスク)は「一定の信頼水準のもとで、一定期間に被りうる最大損失の目安」です。同じVaRでも、損益の分布をどのように推定するかによって、計算の手間や結果の性質が大きく変わります。代表的な推定方法が、パラメトリック法、ヒストリカル法、モンテカルロ法の3つです。

パラメトリック法(分散・共分散法)

各資産のリターンが正規分布に従うと仮定し、ポートフォリオの標準偏差(各資産のボラティリティと相関から計算)に、信頼水準に対応する係数(99%なら約2.33、95%なら約1.65)を掛けてVaRを求めます。計算が速く、リスクを要因ごとに分解しやすいのが長所です。一方で、実際のリターン分布は正規分布よりも裾が厚い(ファット・テール)ことが多く、極端な損失を過小評価しがちです。また、オプションのように損益が原資産に対して非線形な商品は、うまく扱えません。

ヒストリカル法

過去の一定期間(たとえば直近250営業日や500営業日)の市場の変化を、現在のポートフォリオにそのまま当てはめて損益を再計算し、並べた損益の下位から信頼水準に対応する値をVaRとします。分布の形を仮定しないため、ファット・テールや非線形な損益も自然に反映できます。ただし、結果は使ったデータ期間に強く依存し、過去に起きていない事態は反映されません。観測期間が短いと、裾の推定が不安定になります。

モンテカルロ法

リスク・ファクターの動きを確率モデル(分布や相関、ボラティリティの変化など)で表し、乱数で数千~数万のシナリオを発生させて、それぞれについてポートフォリオを評価し直します。非線形商品や複雑な分布、経路に依存する商品にも対応できる最も柔軟な方法です。反面、計算負荷が大きく、結果は仮定したモデルとパラメータに左右されます(モデル・リスク)。

押さえておきたい公式

VaR = zα × σP × ポートフォリオ価値パラメトリック法(期待リターンを0とみなす場合)。zα:99%で約2.33、95%で約1.65
T日VaR = 1日VaR × √T日次リターンが独立で同一の分布に従うと仮定した場合の換算(ルートT倍法)
方法 長所 短所
パラメトリック法 計算が速い、要因分解しやすい 正規分布の仮定、非線形商品に弱い、テールを過小評価しがち
ヒストリカル法 分布の仮定が不要、直感的でわかりやすい データ期間に依存、過去にない事態は反映されない
モンテカルロ法 非線形商品や複雑な分布にも対応 計算負荷が大きい、モデル・リスクがある

具体例で確認

時価100億円のポートフォリオがあり、日次リターンの標準偏差が1%とします(期待リターンは0とみなします)。

  • パラメトリック法の1日VaR(99%):2.33 × 1% × 100億円 = 2.33億円
  • 10日VaR(99%):2.33億円 × √10 ≒ 7.37億円

ヒストリカル法で直近500営業日のデータを使う場合は、500個の損益を小さい順に並べ、下位1%にあたる5番目前後の損失をVaRとします(何番目を採るかは実務上の約束によります)。もし過去500日に大きな下落局面が含まれていれば、パラメトリック法より大きなVaRになることがあり、逆に平穏な期間だけなら小さく出ます。

ポートフォリオにオプションの売りポジションが含まれる場合、パラメトリック法(線形近似)では損失を小さく見積もりやすく、ヒストリカル法やモンテカルロ法で評価し直すほうが適切です。

試験で問われやすいポイント

  • 3つの方法の違いを「分布の仮定の有無」「非線形商品への対応」「計算負荷」「データ依存」の軸で比較させる問題が典型です。
  • パラメトリック法は正規分布の仮定によりファット・テールを過小評価しやすい、という短所が狙われやすいです。
  • ヒストリカル法は「過去に起きたことしか反映されない」点、モンテカルロ法は「モデル・リスクと計算負荷」を押さえましょう。
  • 計算では、信頼水準の係数(2.33、1.65)と、保有期間の換算(√T倍)の使い方がポイントです。
  • 記述式では、ポートフォリオの特徴(オプションを含む等)に応じてどの方法が適切かを、理由とともに説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • パラメトリック法は正規分布を仮定し、標準偏差×係数で計算する。速いがテールと非線形商品に弱い。
  • ヒストリカル法は過去データをそのまま当てはめる。仮定は不要だがデータ期間に依存する。
  • モンテカルロ法は乱数で多数のシナリオを作る。柔軟だが計算負荷とモデル・リスクがある。
  • 保有期間の換算は√T倍(独立・同一分布の仮定)。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。