デュポン分解による成長率推計とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・株式分析
ひとことで言うと
- ROEを売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジに分けるのがデュポン分解です。
- サステイナブル成長率は g = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ × 内部留保率と4つの要素の掛け算で表せます。
- どの要素が成長率を生んでいるかを見ることで、その成長率が今後も続くかを吟味しながら推計できます。
この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「デュポン分解で成長率を推計」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析 |
|---|---|
| 大分類 | (4) 株式価値評価モデルの活用 |
| 協会の学習ポイント | デュポン・システム(デュポン分解)によるサステイナブル成長率の推計方法について理解する。 |
デュポン分解による成長率推計とは
サステイナブル成長率 g = ROE × 内部留保率 は便利ですが、ROEという1つの数字だけでは「なぜその水準なのか」「今後も維持できるのか」が分かりません。そこで、ROEをデュポン・システムで3つの要素に分解し、それぞれの見通しを立ててから掛け合わせて成長率を推計します。
3つの要素の意味
売上高純利益率(当期純利益÷売上高)は収益性、総資産回転率(売上高÷総資産)は資産を使って売上を生む効率性、財務レバレッジ(総資産÷自己資本)は負債をどれだけ活用しているかを示します。この3つを掛けると、売上高と総資産が打ち消し合って当期純利益÷自己資本、つまりROEになります。
成長の「質」を見る
同じROE・同じ成長率でも、その中身は企業によって異なります。高い利益率で稼いでいる企業と、借入れを大きく増やしてROEを押し上げている企業とでは、成長の持続性やリスクが違います。財務レバレッジによる成長は財務リスクの上昇を伴い、借入余力には限りがあるため、長期にわたって同じペースで続けられるとは限りません。
推計の進め方
実際の推計では、過去の各要素の推移や業界平均、経営計画などを参考に、将来の利益率・回転率・レバレッジ・配当方針を見積もります。例えば「利益率は競争激化で低下しそうだ」「借入れを返済して自己資本比率を上げる方針だ」といった情報を、それぞれの要素に反映させることで、根拠のある成長率を得られます。
押さえておきたい公式
具体例で確認
C社とD社の財務指標は次のとおりです。どちらも内部留保率は60%です。
| 項目 | C社 | D社 |
|---|---|---|
| 売上高純利益率 | 5% | 3% |
| 総資産回転率 | 1.2回 | 1.0回 |
| 財務レバレッジ | 2.0倍 | 4.0倍 |
| ROE | 5%×1.2×2.0=12% | 3%×1.0×4.0=12% |
| サステイナブル成長率 | 12%×0.6=7.2% | 12%×0.6=7.2% |
両社の成長率は同じ7.2%ですが、D社は高い財務レバレッジに頼っています。D社が借入れを減らしてレバレッジを3.0倍に下げると、ROEは3%×1.0×3.0=9%、成長率は9%×0.6=5.4%に低下します。C社の利益率が4%に低下した場合は、ROE=4%×1.2×2.0=9.6%、成長率=5.76%です。このように要素ごとに前提を変えて、成長率への影響を確かめられます。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「サステイナブル成長率・DDM・FCFF/FCFEを理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- 各要素を与えてROE→サステイナブル成長率→DDMの理論株価と順につなげる計算が出やすいです。
- 財務レバレッジは総資産÷自己資本です。自己資本比率(自己資本÷総資産)の逆数である点を取り違えないようにしましょう。
- ある要素(利益率、回転率、レバレッジ、配当性向)が変わったとき成長率がどう変わるかを問う形に備えましょう。
- 記述式では、レバレッジに依存した高成長の持続性やリスクを説明させる形が考えられます。
要点まとめ
- ROE=売上高純利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
- g=その3要素×内部留保率の4要素の掛け算
- 同じ成長率でも、中身によって持続性とリスクが異なる
- 要素ごとに将来を見積もることで根拠のある成長率を推計できる
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
