ひとことで言うと

  • 輸入品に関税をかけると国内価格が上がり、国内生産者は得をし、消費者は損をし、政府は関税収入を得ます
  • 消費者の損失は生産者の利益と関税収入の合計より大きく、差額が死荷重(厚生損失)として社会全体から失われます。
  • 小国では関税は必ず経済厚生を下げますが、大国では交易条件の改善によって厚生が上がる可能性があります。

この記事では、証券アナリスト1次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「関税政策の影響」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/市場と経済の分析
大分類 (7) 国際貿易と世界経済
協会の学習ポイント 関税政策の影響について説明できる。

関税政策の影響とは

関税は、輸入品に課される税です。国際価格を自国だけでは動かせない小国が輸入品1単位当たりt円の関税(従量税)を課すと、国内価格は国際価格よりt円高くなります。

数量と余剰への影響

国内価格が上がると、国内の需要量は減り、国内生産量は増えるため、その差である輸入量は減少します。余剰で見ると、価格上昇により消費者余剰は減少し、生産者余剰は増加します。また、政府には「関税額×輸入量」の関税収入が入ります。消費者余剰の減少分から生産者余剰の増加と関税収入を差し引くと、2つの三角形の面積が残ります。

2つの死荷重

1つ目は、国際価格なら輸入で安く手に入る分を、費用の高い国内生産で作るようになる非効率(生産面の歪み)です。2つ目は、価格上昇によって、本来なら国際価格で買われていた分の消費が行われなくなる損失(消費面の歪み)です。この2つの合計が関税による死荷重で、小国では関税によって総余剰は必ず減少します。

大国の場合と輸入数量制限

輸入量が世界市場で大きな割合を占める大国が関税をかけると、輸入需要の減少によって国際価格そのものが下がります。輸入価格が下がることは交易条件の改善を意味し、その利益が死荷重を上回れば自国の厚生が上がることもあります(最適関税の考え方)。ただし、その分は相手国の損失であり、世界全体では効率が損なわれます。また、輸入量を直接制限する輸入数量割当も、国内価格を上げて似た効果をもたらしますが、関税収入の代わりに輸入の権利を持つ者が差額(割当レント)を得る点が異なります。

整理しておきたいポイント

主体・項目 小国の関税の影響 方向
国内価格 国際価格+関税に上昇 上昇
国内生産量/需要量 生産は増加、需要は減少 輸入量は減少
消費者余剰 価格上昇で減少 減少
生産者余剰 価格上昇で増加 増加
政府 関税収入=関税×輸入量 増加
総余剰 生産面・消費面の死荷重の分だけ減少 減少

具体例で確認

ある小国の国内需要がQd = 100 − P、国内供給がQs = P − 20、国際価格が40とします。ここで1単位10の関税をかけます。

  1. 関税前(P=40):需要60、国内生産20、輸入40
  2. 関税後(P=50):需要50、国内生産30、輸入20
  3. 消費者余剰の減少:(60 + 50) ÷ 2 × 10=550
  4. 生産者余剰の増加:(20 + 30) ÷ 2 × 10=250
  5. 関税収入:10 × 20=200
  6. 死荷重:550 − 250 − 200=100(生産面 10 × 10 ÷ 2=50、消費面 10 × 10 ÷ 2=50)

試験で問われやすいポイント

  • 関税による消費者余剰・生産者余剰・関税収入・死荷重の変化を、図や数値から求める問題が典型です。
  • 関税収入は「関税×関税後の輸入量」で計算する点を間違えやすいので注意しましょう。
  • 死荷重が生産面と消費面の2つの三角形からなることが問われやすいです。
  • 小国では厚生は必ず悪化するが、大国では交易条件の改善で厚生が上がりうるという違いがひっかけになりやすいです。
  • 関税と輸入数量割当の違い(関税収入か割当レントか)も確認しておきましょう。

要点まとめ

  • 関税で国内価格が上がり、輸入量は減少する
  • 生産者と政府は得をし、消費者はそれ以上に損をする
  • 差額の死荷重は生産面と消費面の2つの三角形
  • 大国では交易条件の改善効果が加わる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。