ひとことで言うと

  • 多変量正規分布は、複数の確率変数が同時に(まとめて)正規分布に従うときの分布です。
  • 各変数の平均(平均ベクトル)と、分散・共分散(分散共分散行列)で分布が決まります。
  • 多変量正規分布に従う変数の加重和(ポートフォリオ収益率)も正規分布になる点がファイナンスで重要です。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「多変量の正規分布」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (5) 確率分布
協会の学習ポイント 多変量の正規分布について理解する。

多変量正規分布とは

1つの確率変数の正規分布は平均と分散で決まりました。これを複数の変数に広げたものが多変量正規分布です。2変数の場合は特に2変量正規分布と呼ばれ、グラフにすると山型の曲面になり、真上から見た等高線は楕円を描きます。

多変量正規分布を決めるのは、各変数の平均を並べた平均ベクトルと、各変数の分散と変数間の共分散を並べた分散共分散行列です。2変数X、Yなら、μX、μY、σX2、σY2と共分散σXY(または相関係数ρ)の5つで分布が決まります。

重要な性質

  • 周辺分布も正規分布:多変量正規分布の一部の変数だけを取り出すと、それぞれ正規分布に従います。
  • 線形結合も正規分布:aX + bYのような加重和も正規分布に従います。
  • 無相関なら独立:一般に「無相関」は「独立」を意味しませんが、多変量正規分布に従う変数同士では、相関係数が0なら独立になります。
  • 条件付き分布も正規分布:一方の値を与えたときのもう一方の分布も正規分布になります。

ファイナンスへの応用

各資産の収益率が多変量正規分布に従うと仮定すると、ポートフォリオの収益率も正規分布になります。その平均と分散は、各資産の平均・分散・共分散と投資比率から計算できます。平均・分散アプローチによるポートフォリオ理論や、ポートフォリオ全体のVaRの計算は、この性質に支えられています。

押さえておきたい公式

E[RP] = wAμA + wBμBポートフォリオ収益率の平均
σP2 = wA2σA2 + wB2σB2 + 2wAwBρσAσBポートフォリオ収益率の分散(ρσAσBは共分散)
記号 意味
wA、wB 資産A・Bへの投資比率
μ、σ 各資産の期待収益率と標準偏差
ρ 2資産の収益率の相関係数

具体例で確認

資産A(平均6%、標準偏差20%)と資産B(平均3%、標準偏差10%)の収益率が2変量正規分布に従い、相関係数は0.2とします。Aに60%、Bに40%投資します。

  1. 平均:0.6 × 6 + 0.4 × 3 = 4.8%
  2. 分散:0.36 × 400 + 0.16 × 100 + 2 × 0.6 × 0.4 × 0.2 × 20 × 10 = 144 + 16 + 19.2 = 179.2
  3. 標準偏差:√179.2 ≒ 13.39%
  4. ポートフォリオ収益率は正規分布N(4.8, 13.392)に従うので、マイナスになる確率はZ = (0 − 4.8) ÷ 13.39 ≒ −0.36より約36%

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「多変量の正規分布を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 多変量正規分布は平均ベクトルと分散共分散行列で決まることが問われやすいです。
  • 多変量正規分布に従う変数の線形結合(加重和)は正規分布になり、ポートフォリオ収益率が正規分布になる根拠となります。
  • 多変量正規分布のもとでは無相関=独立ですが、一般には無相関でも独立とは限らない点がひっかけになりやすいです。
  • 周辺分布や条件付き分布も正規分布になるという性質を押さえましょう。
  • 2資産ポートフォリオの平均・分散の計算と、それを使った確率計算の流れに慣れておきましょう。

要点まとめ

  • 多変量正規分布は複数の変数が同時に従う正規分布
  • 平均ベクトルと分散共分散行列で分布が決まる
  • 周辺分布・線形結合・条件付き分布も正規分布
  • 多変量正規分布では無相関なら独立になる

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。