ひとことで言うと

  • 状態価格とは、将来のある状態が起きたときだけ1円を受け取れる証券の現在の値段です。
  • リスク中立確率とは、どの資産の期待リターンも無リスク金利に等しくなるように調整した「計算上の確率」です。
  • オプション価値は、リスク中立確率で期待値をとり、無リスク金利で割り引く(=状態価格で重み付けして合計する)ことで求まります。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「状態価格・リスク中立確率」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (3) オプション取引の仕組みと評価
協会の学習ポイント 状態価格やリスク中立確率の概念とオプション価値評価の関連性について理解する。

状態価格とリスク中立確率とは

将来の世界が「株価が上がる状態(u)」と「下がる状態(d)」の2つしかないと考えてみます。このとき、「u状態になったときだけ1円もらえ、d状態では何ももらえない証券」の今日の値段をu状態の状態価格と呼びます。同様にd状態の状態価格も考えられます。こうした証券はアロー=ドブリュー証券とも呼ばれます。

状態価格がわかれば、どんな資産でも「各状態で受け取る金額 × その状態の状態価格」を合計するだけで価格を求められます。株式もオプションも、将来の各状態での受取額が決まっていれば、同じ物差しで評価できるわけです。

状態価格からリスク中立確率へ

u状態とd状態の状態価格を合計すると、「どちらの状態でも必ず1円もらえる証券」、つまり無リスクの割引債の価格になります。これは1÷(1+r)です。そこで、各状態価格を割引債の価格で割ると(=(1+r)倍すると)、合計がちょうど1になる数字が得られます。これがリスク中立確率です。

リスク中立確率は、実際にその状態が起きる確率(現実の確率)ではありません。投資家がリスクを嫌う度合いは、状態価格の中にすでに織り込まれています。そのため「リスク中立確率で期待値をとり、無リスク金利で割り引く」という計算で、リスク回避的な現実の世界と同じ価格が得られるのです。

なぜオプション評価で使うのか

オプションは株式と無リスク資産の組合せで複製できるため、裁定機会がなければ、オプション価格は複製コストに一致します。この価格は投資家のリスク選好や現実の上昇確率に依存しません。そこで、計算しやすい「リスク中立の世界」を想定して評価してよい、というのがリスク中立評価法の考え方です。二項モデルもブラック=ショールズ・モデルも、この考え方の上に成り立っています。

押さえておきたい公式

q = (1+r − d) ÷ (u − d)1期間二項モデルのリスク中立確率(上昇側)。下落側は1 − q
πu = q ÷ (1+r)  πd = (1 − q) ÷ (1+r)状態価格=リスク中立確率を無リスク金利で割り引いたもの。合計は1 ÷ (1+r)
C = πu × Cu + πd × Cd = {q × Cu + (1 − q) × Cd} ÷ (1+r)オプション価値=状態価格による加重合計=リスク中立期待値の割引現在価値
記号 意味
u、d 1期間の株価の上昇倍率・下落倍率(d<1+r<u)
r 1期間の無リスク金利
q 上昇状態のリスク中立確率
πu、πd 上昇状態・下落状態の状態価格
Cu、Cd 各状態でのオプションのペイオフ

具体例で確認

現在の株価100円、1期間後に120円(u=1.2)か90円(d=0.9)になり、無リスク金利は1期間5%とします。権利行使価格100円のコール・オプションの価値を求めます。

  1. リスク中立確率:q = (1.05 − 0.9) ÷ (1.2 − 0.9) = 0.15 ÷ 0.30 = 0.5
  2. 状態価格:πu = 0.5 ÷ 1.05 ≒ 0.4762、πd = 0.5 ÷ 1.05 ≒ 0.4762
  3. 確認:株式は0.4762 × 120 + 0.4762 × 90 ≒ 100円、割引債は0.4762 + 0.4762 ≒ 0.9524円(=1 ÷ 1.05)で、どちらも現在価格と一致します。
  4. コールのペイオフ:u状態で20円、d状態で0円
  5. コール価値:0.4762 × 20 + 0.4762 × 0 ≒ 9.52円(=0.5 × 20 ÷ 1.05)

たとえ現実には上昇確率が70%だと考える投資家がいても、この価格は変わりません。現実の確率が価格に出てこない点が、リスク中立評価の大きな特徴です。

試験で問われやすいポイント

  • 状態価格の定義(ある状態で1円を受け取る証券の現在価値)と、状態価格の合計が割引債価格1 ÷ (1+r)になる関係が問われやすいです。
  • リスク中立確率q = (1+r − d) ÷ (u − d)の計算と、qが現実の確率ではないことの理解がよく確認されます。
  • 「リスク中立確率で期待値をとり、無リスク金利で割り引く」のであって、リスクを反映した割引率を使うのではない点がひっかけになりやすいです。
  • 無裁定条件としてd<1+r<uが必要で、これが崩れると裁定機会が生じる(qが0〜1に収まらない)点も押さえましょう。
  • 記述式では、なぜ現実の確率や投資家のリスク選好が価格に影響しないのかを、複製ポートフォリオと無裁定の考え方で説明できるようにしておくと安心です。

要点まとめ

  • 状態価格=ある状態でだけ1円を受け取る証券の現在価格
  • リスク中立確率=状態価格 × (1+r)。合計が1になる計算上の確率
  • オプション価値=リスク中立期待値 ÷ (1+r)=状態価格による加重合計
  • 現実の確率やリスク選好は価格に直接出てこない(無裁定と複製が根拠)

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。