ひとことで言うと

  • ABS(Asset-Backed Securities:資産担保証券)は、自動車ローン、クレジットカード債権、リース債権などを裏付け資産として発行される証券化商品です。
  • 裏付け資産によって、元本が少しずつ返る償却型と、一定期間は元本を再投資し続ける回転型(リボルビング型)に分かれ、キャッシュフローとリスクの形が変わります。
  • 投資家を守るために、優先劣後構造・超過担保・エクセス・スプレッド・準備金などの信用補完が組み込まれます。

この記事では、証券アナリスト2次「債券分析」の学習ポイントのひとつ「ABSの仕組みとリスク」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/債券分析
大分類 (8) 証券化商品の仕組みと評価
協会の学習ポイント ABSの仕組みとリスク特性について理解する。

ABS(資産担保証券)とは

ABSは、住宅ローン以外のさまざまな金銭債権をまとめて特別目的事業体(SPV)に譲渡し、その債権から生まれる元利金を投資家への支払いに充てる証券です。住宅ローンを裏付けとするものはRMBS、商業用不動産ローンはCMBSと呼んで区別するのが一般的で、それ以外の自動車ローン、クレジットカード債権、リース債権、消費者ローンなどを裏付けとするものを広くABSと呼びます。

債権の持ち主(オリジネーター)にとっては、手元の債権を現金化して資金調達できる、貸借対照表から資産を切り離せるといったメリットがあります。投資家にとっては、発行体の信用力ではなく裏付け資産の質と仕組みに基づいて利回りを得られる点が特徴です。

償却型と回転型

自動車ローンのABSは、借り手が毎月返済する元利金がそのまま投資家に流れる償却型が典型です。ローン1件あたりの金額が小さく、期間も比較的短いため、住宅ローンに比べると金利低下による借り換え(期限前償還)の影響は小さいとされます。

クレジットカード債権のABSは、カード利用者の返済が早く、債権がすぐに減ってしまうため、一定期間は回収した元本を新しいカード債権の購入に再投資する回転型の仕組みをとります。この期間(リボルビング期間、ロックアウト期間)は投資家に利息だけが支払われ、その後に元本の返済が始まります。ただし、延滞や損失が一定水準を超えるなどの事象が起きると、予定より早く元本返済に入る早期償還(アーリー・アモチゼーション)の条項が設けられるのが一般的です。

信用補完の仕組み

ABSでは、裏付け資産に貸倒れが出ても上位の投資家が損をしにくいように、信用補完が組み込まれます。仕組みの内部で手当てする内部信用補完には、損失を先に負担する劣後部分を設ける優先劣後構造、発行額より多くの資産を入れる超過担保、資産の利回りと証券の利払い・費用との差であるエクセス・スプレッド、準備金口座などがあります。第三者の保証など外部信用補完もありますが、保証者の信用力に依存する点に注意が必要です。

整理しておきたいポイント

裏付け資産 キャッシュフローの形 主なリスク
自動車ローン 償却型(毎月元利金が返る) 借り手の延滞・貸倒れ、担保車両の処分価値。期限前償還は住宅ローンより小さい
クレジットカード債権 回転型(一定期間は利息のみ、その後元本返済) 貸倒れの増加、早期償還条項の発動、カード利用・返済動向の変化
リース・消費者ローンなど 多くは償却型 借り手の信用力、分散の程度、サービサー(回収業務)の能力

具体例で確認

あるカード会社が、カード債権を裏付けにABSを発行したとします。優先部分が全体の85%、劣後部分が15%で、当初2年間はリボルビング期間です。

  1. リボルビング期間中は、利用者から回収した元本で新しいカード債権を買い足し、投資家には利息だけが支払われます。資産残高が保たれるので、投資家から見ると満期一括返済の債券に近い形になります。
  2. 景気が悪化して貸倒れが増え、エクセス・スプレッドが一定水準を下回ると、早期償還条項が発動し、予定より早く元本返済が始まります。投資家は資金が早く戻ってくる一方、想定していた運用期間が短くなります。
  3. それでも損失が出た場合は、まずエクセス・スプレッドで吸収し、次に劣後部分が負担します。損失が15%の劣後部分の範囲に収まれば、優先部分の投資家には損失が及びません。

試験で問われやすいポイント

  • ABSとRMBS・CMBSの違い(裏付け資産の種類)と、償却型と回転型のキャッシュフローの違いが問われやすいです。
  • クレジットカードABSのリボルビング期間早期償還条項が、投資家にとってどんなリスク(期間が変わるリスク)になるかを説明できるようにしましょう。
  • 内部信用補完(優先劣後構造・超過担保・エクセス・スプレッド・準備金)と外部信用補完の区別がよく狙われます。
  • 自動車ローンABSは1件の金額が小さく、金利による期限前償還の影響がMBSより小さいという比較が問われやすいです。
  • 2次の記述式では、ある事象(貸倒れ増加など)が起きたときに損失がどの順番で吸収されるかを、仕組みに沿って説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • ABSは住宅ローン以外の債権(自動車ローン、カード債権など)を裏付けとする証券化商品
  • 自動車ローンは償却型、カード債権は回転型が典型
  • 回転型には早期償還条項があり、損失が増えると元本返済が前倒しになる
  • 信用補完は優先劣後構造・超過担保・エクセス・スプレッド・準備金などの組み合わせ

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