ひとことで言うと

  • 株価が各期間に上昇か下落のどちらかに動くツリーを何期間も重ねて、オプション価値を求めるモデルです。
  • 満期のペイオフから出発し、リスク中立確率で期待値をとって1期ずつ割り引き、現在までさかのぼる(後ろ向き帰納法)のが基本の手順です。
  • ヨーロピアンは満期にしか行使できないため、満期のペイオフを二項分布の確率で直接まとめて割り引くこともできます。

この記事では、証券アナリスト2次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「多期間二項モデル(ヨーロピアン)」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/デリバティブ分析
大分類 (3) オプション取引の仕組みと評価
協会の学習ポイント 多期間二項モデルに基づいたヨーロピアン・オプションの価値評価について理解する。

多期間二項モデル(ヨーロピアン)とは

1期間の二項モデルでは、株価が満期までに「上がるか下がるか」の2通りしか考えません。これでは現実の株価の動きを表すには粗すぎます。そこで、満期までの期間をいくつかに区切り、各期間ごとに上昇(u倍)か下落(d倍)が起こるとして、枝分かれを重ねたツリー(二項ツリー)を作るのが多期間二項モデルです。

「上がってから下がる」と「下がってから上がる」は同じ株価(S × u × d)にたどり着くので、ツリーは枝が合流する形になります(リコンバイニング・ツリー)。n期間のツリーなら、満期の株価はn+1通りです。

後ろ向きに計算する

評価の手順はシンプルです。まず満期の各ノードでオプションのペイオフ(コールならmax(S − K, 0))を計算します。次に、1期前の各ノードで「リスク中立確率qで上昇側、1 − qで下落側の価値を加重平均し、1期間分の無リスク金利で割り引く」計算をします。これを現在まで繰り返すと、今日のオプション価値が求まります。各ノードで使うのは1期間モデルと同じ式なので、1期間モデルを何度も適用していると考えるとわかりやすいでしょう。

期間を細かくするとBSモデルに近づく

u・dやqを期間の長さに応じて適切に設定し、期間数を増やしていくと、二項モデルの価格はブラック=ショールズ・モデルの価格に近づいていきます。代表的な設定として、ボラティリティσと1期間の長さΔtを使い、u = eσ√Δt、d = 1 ÷ uとする方法(コックス=ロス=ルビンシュタインの方法)が知られています。

押さえておきたい公式

C = {q × Cu + (1 − q) × Cd} ÷ (1+r)各ノードで繰り返し使う1期間の評価式。q = (1+r − d) ÷ (u − d)
C0 = Σj=0〜n nCj × qj × (1 − q)n−j × max(S × uj × dn−j − K, 0) ÷ (1+r)nヨーロピアン・コールをまとめて計算する形(jは上昇回数)
記号 意味
n 期間数
nCj n回のうちj回上昇する経路の数(組合せ)
q 1期間のリスク中立確率(上昇側)
r 1期間の無リスク金利
K 権利行使価格

具体例で確認

株価100円、1期間ごとにu=1.2、d=0.9、1期間の無リスク金利5%、2期間後に満期を迎える権利行使価格100円のヨーロピアン・コールを評価します。リスク中立確率はq = (1.05 − 0.9) ÷ (1.2 − 0.9) = 0.5です。

  1. 満期の株価とペイオフ:144円(uu)→44円、108円(ud)→8円、81円(dd)→0円
  2. 1期後の上昇ノード(120円):(0.5 × 44 + 0.5 × 8) ÷ 1.05 = 26 ÷ 1.05 ≒ 24.76円
  3. 1期後の下落ノード(90円):(0.5 × 8 + 0.5 × 0) ÷ 1.05 = 4 ÷ 1.05 ≒ 3.81円
  4. 現在:(0.5 × 24.76 + 0.5 × 3.81) ÷ 1.05 ≒ 13.61円

まとめて計算する形でも確認できます。上昇2回の確率0.25、上昇1回の確率2 × 0.5 × 0.5 = 0.5なので、(0.25 × 44 + 0.5 × 8 + 0.25 × 0) ÷ 1.052 = 15 ÷ 1.1025 ≒ 13.61円となり、同じ値になります。

試験で問われやすいポイント

  • 満期から現在へ後ろ向きに、リスク中立確率で加重平均して1期ずつ割り引く計算手順がよく問われます。
  • 割引は1期間ごとの金利で行う点に注意しましょう。年率のまま使ったり、期間数分まとめて割り引き忘れたりするミスが典型的です。
  • ud = duのため枝が合流し、満期の株価がn+1通りになること、途中経路の数が組合せnCjで数えられることが確認されやすいです。
  • ヨーロピアンは途中で行使できないので、途中ノードで行使価値と比較する必要がない点がアメリカンとの違いです。
  • 記述式では、ツリーの各ノードの値を書き出しながら計算過程を示す形式に備えて、表やツリーを手で書く練習をしておくと安心です。

要点まとめ

  • 多期間二項モデル=1期間モデルを積み重ねたツリーで評価する方法
  • 満期のペイオフ→リスク中立期待値→1期間分割引、を現在まで繰り返す
  • ヨーロピアンは二項分布の確率で満期ペイオフをまとめて割り引いても同じ
  • 期間を細かくすると価格はBSモデルに近づく

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。