ひとことで言うと

  • ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルは、株式リターンを「市場」「規模(SMB)」「割安度(HML)」の3つの要因で説明します。
  • カーハートの4ファクター・モデルは、これに「モメンタム(UMD/WML)」を加えたものです。
  • 各ファクターへの感応度(ファクター・エクスポージャー)を測ることで、ポートフォリオがどのリスクに傾いているかを把握・管理できます。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「マルチファクターでのリスク管理」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (1) 現代ポートフォリオ理論
協会の学習ポイント ファーマ=フレンチの3ファクター・モデル、カーハートの4ファクター・モデル等に基づくポートフォリオのリスク管理方法を理解する。

マルチファクター・モデルとは

CAPMは、個別株やポートフォリオのリターンを市場ポートフォリオ1つ(β)だけで説明します。しかし実証研究では、小型株や割安株(簿価時価比率が高い株)がCAPMで説明できない超過リターンを示すことが知られていました。そこで複数の要因(ファクター)でリターンを説明するのがマルチファクター・モデルです。

3ファクター・モデルと4ファクター・モデル

ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルは、①市場ポートフォリオの超過リターン、②小型株と大型株のリターン差であるSMB(Small Minus Big)、③簿価時価比率の高い割安株と低い株のリターン差であるHML(High Minus Low)の3つを使います。カーハートの4ファクター・モデルは、過去のリターンが高かった銘柄と低かった銘柄のリターン差であるモメンタム(UMDやWMLと表記)を加えたものです。

リスク管理への使い方

ポートフォリオのリターンを各ファクターに回帰すると、ファクターごとの感応度(係数)が得られます。これをファクター・エクスポージャーと呼びます。SMBの係数がプラスなら小型株寄り、HMLの係数がプラスなら割安株(バリュー)寄り、マイナスなら成長株(グロース)寄りと読めます。ベンチマークの係数と比べれば、ベンチマークに対してどのファクターに賭けているか(アクティブ・エクスポージャー)が見えます。

運用者は、意図した賭けだけが残るように銘柄構成を調整したり、意図しないファクターの偏りを抑えたりします。また、回帰の切片(アルファ)は、ファクターで説明できないリターン、つまり銘柄選択力などの評価に使われます。CAPMのアルファが大きく見えても、実は小型株やバリューへの傾きで説明できる場合があり、マルチファクターで評価し直すとアルファが小さくなることがあります。

押さえておきたい公式

Ri − Rf = αi + βi(RM − Rf) + siSMB + hiHML + εiファーマ=フレンチの3ファクター・モデル
Ri − Rf = αi + βi(RM − Rf) + siSMB + hiHML + miUMD + εiカーハートの4ファクター・モデル(UMD:モメンタム)
記号 意味
βi 市場ファクターへの感応度
si 規模ファクター(SMB)への感応度。プラスなら小型株寄り
hi 割安度ファクター(HML)への感応度。プラスならバリュー寄り
mi モメンタム・ファクターへの感応度
αi ファクターで説明できない超過リターン

具体例で確認

あるファンドの4ファクター回帰の結果が、β=1.1、s=0.4、h=−0.2、m=0.3だったとします。無リスク金利1%、各ファクターの期待プレミアムを市場6%、SMB 2%、HML 3%、モメンタム4%とすると、α=0のときの期待リターンは次のとおりです。

1 + 1.1 × 6 + 0.4 × 2 +(−0.2)× 3 + 0.3 × 4 = 9.0%

ベンチマーク(β=1.0、他の係数は0とします)と比べると、このファンドは市場感応度がやや高く(+0.1)、小型株寄り(+0.4)、グロース寄り(−0.2)、モメンタム寄り(+0.3)というアクティブ・エクスポージャーを持っています。仮にある月にSMBが−10%となれば、規模ファクターだけでベンチマーク比 0.4 ×(−10%)= −4%の影響を受けます。こうした偏りが運用方針どおりかを確認するのがリスク管理の第一歩です。

試験で問われやすいポイント

  • SMB・HML・モメンタムがそれぞれ何と何のリターン差かを正確に説明できるようにしましょう。
  • 係数の符号から「小型株寄り/大型株寄り」「バリュー寄り/グロース寄り」を読み取る問題が考えられます。
  • 回帰結果の係数とファクター・プレミアムから期待リターンを計算させる問題では、計算過程を示せるようにしておきましょう。
  • CAPMのアルファがマルチファクターで評価すると小さくなる理由を記述で説明させる形にも備えましょう。
  • ベンチマークとの係数差がアクティブ・エクスポージャーになる、という考え方も重要です。

要点まとめ

  • 3ファクター=市場・SMB・HML、4ファクター=それにモメンタムを追加。
  • 回帰係数がファクター・エクスポージャーで、ポートフォリオの傾きを表す。
  • ベンチマークとの係数差で、意図した賭けと意図しない偏りを管理する。
  • 切片(アルファ)はファクターで説明できない運用成果の評価に使う。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。