ひとことで言うと

  • アルゴリズム取引は、あらかじめ決めたルールに従ってコンピュータが注文を分割・発注する取引で、主に執行コストを抑えるために使われます。
  • HFT(高頻度取引)は、アルゴリズム取引のうち、ごく短い時間で大量の売買を繰り返し、わずかな価格差から収益を得る取引です。
  • どの手法を使うかは、注文サイズと日々の出来高の比率、ビッド・アスク・スプレッド、急ぎ具合などで判断します。

この記事では、証券アナリスト2次「株式分析」の学習ポイントのひとつ「HFTとアルゴリズム取引」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/株式分析
大分類 (6) ポートフォリオにおけるトレーディングと最良執行
協会の学習ポイント HFT(高頻度取引)とアルゴリズム取引の概要や特性、選択決定要因(日々の出来高、ビッド・アスク・スプレッドなど)について理解する。

HFTとアルゴリズム取引とは

アルゴリズム取引とは、発注のタイミング、価格、数量などをコンピュータ・プログラムが自動的に決めて執行する取引の総称です。機関投資家が大口注文を執行するとき、一度に市場に出すとマーケット・インパクトが大きくなるため、注文を小口に分けて少しずつ執行するのが基本となります。これを人手ではなくアルゴリズムで行うのが執行アルゴリズムです。

執行アルゴリズムの主な種類

スケジュール型(論理的参加型)は、あらかじめ決めたスケジュールに沿って執行します。代表例は、過去の出来高パターンに合わせて執行し当日のVWAP(出来高加重平均価格)に近い約定を目指すVWAP型、時間で均等に分けるTWAP型、市場の出来高の一定割合で参加し続ける出来高参加率(POV)型です。

インプリメンテーション・ショートフォール(IS)型は、売買を決定した時点の価格(到着価格)からのずれを最小化するよう、マーケット・インパクトと価格変動リスクのバランスを取りながら、通常は早めに執行します。

機会追求型(流動性探索型)は、スケジュールにこだわらず、厚い気配や有利な価格が現れたときに積極的に約定させます。流動性の低い銘柄などで使われます。

HFT(高頻度取引)

HFTは、高速な通信回線や取引所の近くにサーバーを置くコロケーションなどを活用し、1秒よりはるかに短い時間単位で注文の発注・取消を大量に繰り返す取引です。ポジションの保有期間は極めて短く、主な戦略には、売り買い両方の気配を出してスプレッドを稼ぐマーケット・メイクや、市場間・関連銘柄間のわずかな価格差を狙う裁定取引などがあります。執行アルゴリズムが「自分の注文を安く執行する」ための道具であるのに対し、HFTは取引そのものから収益を得ることを目的とする点が異なります。

整理しておきたいポイント

執行手法の選択は、注文サイズが日々の平均出来高に占める割合と、ビッド・アスク・スプレッドの広さを軸に整理できます。

注文の状況 向いている手法 理由
出来高比が小さく、スプレッドが狭い 成行注文などの直接執行 インパクトが小さく、分割の必要が薄い
出来高比が中程度で、スプレッドが狭い VWAP型・TWAP型などのスケジュール型 流動性が十分あり、分散執行でインパクトを抑えられる
急ぎの注文、価格変動リスクを避けたい IS型アルゴリズム 到着価格からのずれを抑えるため早めに執行する
出来高比が大きく、スプレッドが広い 機会追求型、ブローカーやブロック取引 市場で機械的に分割するとインパクトが大きすぎる

具体例で確認

1日の平均出来高が200万株の大型株Aと、平均出来高が5万株の小型株Bを、それぞれ買う場合を考えます。

  1. 株Aを1万株(出来高比0.5%)買う:スプレッドも狭く、成行注文や短時間の執行で十分です。
  2. 株Aを20万株(出来高比10%)買い、急がない:VWAP型で1日かけて出来高に合わせて執行すれば、インパクトを抑えつつ当日の平均的な価格に近い約定が期待できます。
  3. 株Bを10万株(出来高比200%)買う:スプレッドが広く、市場で機械的に分割しても数日かかり価格が大きく動くおそれがあります。ブローカーに相手探しを依頼したり、ブロック取引を検討したりするのが適しています。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「ポートフォリオにおけるトレーディングと最良執行を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • VWAP型・TWAP型・POV型・IS型など、執行アルゴリズムの種類と特徴が問われやすいです。
  • 手法選択の決定要因として、注文サイズの日々の出来高に対する比率とビッド・アスク・スプレッドが挙げられる点を押さえましょう。
  • 急ぎの注文にはIS型、急がない注文にはVWAP型など、急ぎ具合との対応が狙われます。
  • HFTと執行アルゴリズムの目的の違い(取引で収益を得るか、執行コストを下げるか)を区別しましょう。
  • 記述式では、注文の条件から適切な執行手法を選び、理由を説明させる形に備えましょう。

要点まとめ

  • アルゴリズム取引はルールに基づき注文を自動で分割・執行する手法
  • 主な執行アルゴリズムはスケジュール型(VWAP・TWAP・POV)、IS型、機会追求型
  • HFTは超高速で大量の売買を繰り返し、スプレッドや価格差から収益を得る
  • 手法の選択は出来高比、スプレッド、急ぎ具合で判断する

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。