ひとことで言うと

  • 5ファクター・モデルは、市場・規模(SMB)・バリュー(HML)に、収益性(RMW)投資(CMA)を加えた資産価格モデルです。
  • CAPMで説明できなかったアノマリーを取り込むために、3ファクター・モデル → 4ファクター・モデル → 5ファクター・モデルと発展してきました。
  • 収益性が高く、投資(資産の増加)が控えめな企業ほど期待リターンが高い、という関係を表します。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「新しい資産価格モデル」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (8) 行動ファイナンスの意義と応用
協会の学習ポイント マーケット・アノマリーに対応して新たに誕生した主要な資産価格評価モデル(5ファクター・モデル等)の背景と内容について理解する。

ファーマ=フレンチ5ファクター・モデルとは

CAPMは期待リターンをベータ1つで説明しますが、小型株効果やバリュー効果などのアノマリーが見つかったことで、複数の要因でリターンを説明するマルチファクター・モデルが発展しました。その流れの代表が、ファーマとフレンチによる一連のモデルです。

3ファクター・モデルと4ファクター・モデル

ファーマ=フレンチの3ファクター・モデルは、市場ファクターに加えて、小型株と大型株のリターン差であるSMB(Small Minus Big)と、高B/M(割安)株と低B/M(割高)株のリターン差であるHML(High Minus Low)を要因としました。これにより規模効果とバリュー効果の多くが説明できるようになりました。しかしモメンタムは3ファクターでは説明できなかったため、カーハートは過去の勝ち組と負け組のリターン差であるモメンタム・ファクター(WMLやUMDなどと表記)を加えた4ファクター・モデルを示し、投資信託のパフォーマンス評価などで広く使われました。

5ファクター・モデル

その後、利益率の高い企業や、総資産の伸び(投資)が小さい企業のリターンが高いというアノマリーが注目されました。そこでファーマとフレンチは、高収益企業と低収益企業のリターン差であるRMW(Robust Minus Weak)と、投資が控えめな企業と積極的な企業のリターン差であるCMA(Conservative Minus Aggressive)を加えた5ファクター・モデルを提案しました。

背景には配当割引モデルの考え方があります。株価(簿価との比率)が同じなら、将来の利益が大きい(収益性が高い)企業や、利益のうち再投資に回す分が少ない(投資が控えめな)企業ほど、期待リターン(割引率)が高いはずだ、という理屈です。なお、5ファクター・モデルでは、HMLの説明力が他のファクターに吸収されやすいこと、モメンタムは含まれていないことも知られています。

押さえておきたい公式

E(Ri) − Rf = bi(RM − Rf) + siSMB + hiHML + riRMW + ciCMA各係数(ファクター感応度)は時系列回帰で推定。3ファクター・モデルは RMW と CMA がない形
ファクター 意味
RM − Rf 市場リスク・プレミアム
SMB 小型株 − 大型株(規模)
HML 高B/M株 − 低B/M株(バリュー)
RMW 高収益株 − 低収益株(収益性)
CMA 保守的投資企業 − 積極的投資企業(投資)
モメンタム(4ファクター) 過去の勝ち組 − 負け組

具体例で確認

ある株式の感応度が b = 1.1、s = 0.3、h = 0.2、r = 0.4、c = −0.2 と推定され、各ファクターの期待プレミアムが市場5%、SMB 2%、HML 3%、RMW 2%、CMA 1%、安全資産利子率が1%とします。

  • 市場:1.1 × 5% = 5.5%
  • SMB:0.3 × 2% = 0.6%、HML:0.2 × 3% = 0.6%
  • RMW:0.4 × 2% = 0.8%、CMA:−0.2 × 1% = −0.2%
  • 超過期待リターン:5.5 + 0.6 + 0.6 + 0.8 − 0.2 = 7.3%、期待リターン:1% + 7.3% = 8.3%

CMAの係数がマイナスなのは、この企業が積極的に投資する(資産を大きく伸ばす)タイプの企業に近いことを示し、その分だけ期待リターンが低くなっています。

試験で問われやすいポイント

  • SMB・HML・RMW・CMA・モメンタムの各ファクターが「何と何のリターン差か」を正確に言えること(RMWは収益性、CMAは投資)。
  • 3ファクター → 4ファクター(モメンタム追加) → 5ファクター(収益性・投資追加)という発展の順序と、それぞれが対応したアノマリー。
  • 感応度とファクター・プレミアムから期待リターンを計算する問題。マイナスの係数の意味にも注意。
  • 5ファクター・モデルにはモメンタムが含まれないこと、HMLの説明力が弱まることなどの特徴。
  • 記述式では、新しいモデルが生まれた背景(アノマリーの存在、配当割引モデルとの関係)を説明させる問題が考えられます。

要点まとめ

  • 5ファクター・モデル=市場・SMB・HML・RMW(収益性)・CMA(投資)。
  • アノマリーを説明するため、CAPM → 3ファクター → 4ファクター → 5ファクターと発展した。
  • 高収益・投資控えめの企業ほど期待リターンが高いという関係を表す。
  • 期待リターンは「感応度 × プレミアム」の合計に安全資産利子率を足して求める。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。