ひとことで言うと

  • 安定配当政策は配当額を安定させ、配当性向を目安にする政策は利益に連動させ、残余配当政策は投資に必要な資金を確保した残りを配当します。
  • リントナー・モデルが示すように、多くの企業は目標配当性向に向けて配当を少しずつ調整しています。

この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「代表的な配当政策」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス
大分類 (6) ペイアウト政策
協会の学習ポイント 代表的な配当政策とその特徴について理解する。

配当政策(安定配当・残余配当)とは

配当政策とは、企業が利益のうちどれだけを、どのような方針で株主に配当するかの考え方です。代表的なものに、安定配当政策配当性向を目安にする政策残余配当政策があり、それぞれ配当の安定性、利益との連動性、投資との関係に違いがあります。

安定配当政策

1株当たり配当額を一定に保つか、緩やかに引き上げていく方針です。利益が一時的に増減しても配当はあまり変えず、減配をできるだけ避けます。株主にとって収入の見通しが立てやすく、シグナリング効果の観点からも、減配による株価下落を避けやすいという利点があります。一方、利益が大きく落ち込んだときは配当が負担になることがあります。

配当性向を目安にする政策

純利益に対する配当の比率(配当性向)を一定の目安(たとえば30%)に保つ方針です。利益に連動するため企業の負担は安定しますが、利益の変動がそのまま配当の変動になり、配当が不安定になりやすい点が欠点です。実務では「配当性向30%以上」のような下限目標と安定配当を組み合わせる例も多く見られます。株主資本に対する配当の比率であるDOE(株主資本配当率)を目標にする企業もあり、利益の変動の影響を受けにくいのが特徴です。

残余配当政策

まず、NPVが正の投資に必要な資金のうち、目標資本構成に沿って株主資本でまかなう分を利益から確保し、残った分を配当する方針です。投資を最優先し、外部からの株式調達(発行コストがかかる)をできるだけ避けるという点で理論的にわかりやすい考え方です。ただし、毎年の投資額によって配当が大きく変わるため、配当は不安定になります。

リントナー・モデル

リントナーは、多くの企業が長期的な目標配当性向を持ち、実際の配当を目標に向けて少しずつ調整していることを示しました(部分調整モデル)。利益が増えても配当は一気には増えず、配当は利益より滑らかに動きます。これは安定配当政策の実態を説明するモデルといえます。

押さえておきたい公式

残余配当 = 純利益 − 投資額 × 株主資本比率(目標)計算結果がマイナスなら配当はゼロ(不足分は外部調達)
Dt − Dt−1 = c × (r × EPSt − Dt−1リントナー・モデル(定数項を省略した形)。r:目標配当性向、c:調整速度(0〜1)
配当性向 = 1株当たり配当 ÷ EPS  DOE = 配当総額 ÷ 株主資本

具体例で確認

残余配当政策:純利益500、今期のNPVが正の投資額600、目標資本構成が株主資本60%:負債40%の企業では、投資のうち株主資本でまかなう分は 600 × 60% = 360 です。残余配当は 500 − 360 = 140 になります。もし投資額が900なら、株主資本でまかなう分は540で純利益を上回るため、配当はゼロになります。

リントナー・モデル:目標配当性向40%、調整速度0.5、前期の1株当たり配当60、今期のEPSが200とします。目標とする配当は 0.4 × 200 = 80 ですが、差額20のうち半分だけ調整するので、今期の配当は 60 + 0.5 × (80 − 60) = 70 です。

配当性向一定の政策との比較:配当性向40%を厳格に守る企業では、EPSが200なら配当80、翌年EPSが100に落ちれば配当40と、利益と同じ割合で配当が変動します。安定配当政策の企業なら、同じ状況でも配当を据え置こうとします。

試験で問われやすいポイント

  • 各配当政策の特徴(配当の安定性、利益との連動、投資との関係)と長所・短所の比較が問われやすいです。
  • 残余配当の計算では、投資額全体ではなく「投資額×目標株主資本比率」を利益から差し引く点に注意しましょう。
  • リントナー・モデルの計算(目標配当と前期配当の差に調整速度を掛ける)と、配当が利益より滑らかに動く理由を押さえます。
  • 残余配当政策は理論的には合理的でも配当が不安定になり、シグナリング効果の面では不利になりうる点がポイントです。
  • 記述式では、企業の成長段階や投資機会に応じてどの配当政策が適しているかを説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • 安定配当:配当額を安定させ、減配を避ける。
  • 配当性向目安:利益に連動し、配当は変動しやすい。
  • 残余配当:純利益−投資額×株主資本比率を配当。配当は不安定。
  • リントナー・モデル:目標配当に向けて部分的に調整する。

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