ひとことで言うと

  • ALM(資産負債管理)は、資産と負債を別々ではなく一体として管理し、金利や市場の変動で純資産(資産−負債)や収益が損なわれないようにする手法です。
  • 代表的な手法は、金利更改ギャップ分析(収益への影響)、デュレーション・ギャップ分析(純資産価値への影響)、シミュレーションイミュニゼーションなどです。
  • 年金基金・銀行・保険会社のいずれも「負債を持つ投資家」であり、それぞれの負債の性質に合わせてALMを行います。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「リスク管理とALM」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (4) 機関投資家の資産運用
協会の学習ポイント 年金基金、金融機関、保険会社などのリスク管理手法やALM手法について理解する。

ALM(資産負債管理)とは

負債を持つ機関投資家にとって大切なのは、資産の値上がり・値下がりそのものではなく、資産と負債の差である純資産(年金ならサープラス)がどう変動するかです。たとえば金利が低下すると、債券資産の時価は上がりますが、負債の現在価値も上がります。負債の方が大きく増えれば、資産が増えても純資産は減ってしまいます。ALMは、このような資産と負債の動きのずれ(ミスマッチ)を測り、許容できる範囲に管理する手法です。

主な手法

  • 金利更改ギャップ分析:一定期間内に金利が見直される資産と負債の差(ギャップ)を期間ごとに集計し、金利変化が期間収益(銀行なら資金利益)に与える影響を測ります。
  • デュレーション・ギャップ分析:資産と負債のデュレーションの差から、金利変化が純資産の経済価値に与える影響を測ります。
  • シミュレーション分析:金利シナリオや業務の見通しを置いて、将来の収益や純資産の推移を試算します。モンテカルロ法で多数のシナリオを使うこともあります。
  • イミュニゼーション・キャッシュフロー・マッチング:資産のデュレーションを負債に合わせたり、負債の支払いに合わせて資産のキャッシュフローを組んだりして、金利リスクを抑えます。年金のLDIもこの考え方です。

機関ごとのリスク管理の特徴

年金基金は、給付という長期の負債に対し、サープラスの変動(サープラス・リスク)を管理します。銀行は、短期の預金で長期の貸出や債券を持つことが多いため、金利上昇時の損失と資金利益の変動、預金流出に備えた流動性を管理します。生命保険会社は、超長期の保険負債に対して資産のデュレーションが短くなりがちなため、金利低下時の経済価値の悪化を管理し、超長期債の保有などで対応します。

押さえておきたい公式

デュレーション・ギャップ = DA − (L ÷ A) × DL
純資産の変化 ≒ − デュレーション・ギャップ × A × Δy厳密には Δy ÷(1 + y)とする。ここでは簡略化
資金利益の変化 ≒ 金利更改ギャップ × Δy金利更改ギャップ = 期間内に金利が見直される資産 − 同じく負債
A、L 資産、負債の時価
DA、DL 資産、負債の(修正)デュレーション
Δy 金利の変化幅

具体例で確認

ある銀行の資産が1,000億円(デュレーション3)、負債が900億円(デュレーション1)だとします。

  • デュレーション・ギャップ = 3 − (900 ÷ 1,000) × 1 = 2.1
  • 金利が1%上昇した場合の純資産の変化 ≒ − 2.1 × 1,000億円 × 1% = −21億円

純資産100億円のうち約2割が失われる計算です。ギャップがプラスなら金利上昇に弱く、マイナス(生命保険会社に多い形)なら金利低下に弱くなります。ギャップをゼロに近づければ、純資産は金利変化の影響を受けにくくなります。

また、1年以内に金利が見直される資産が300億円、負債が500億円なら、金利更改ギャップは−200億円です。金利が1%上昇すると、1年間の資金利益は約2億円減少します。このように、ギャップ分析は「収益」、デュレーション・ギャップは「経済価値」への影響をとらえる点が異なります。

試験で問われやすいポイント

  • ALMは資産と負債を一体で管理し、純資産(サープラス)の変動を抑える手法であることが基本です。
  • 金利更改ギャップ分析は期間収益、デュレーション・ギャップ分析は経済価値への影響を測る、という違いが問われやすいです。
  • デュレーション・ギャップの式で、負債のデュレーションに L÷A を掛ける点は計算ミスが起きやすいので注意しましょう。
  • ギャップの符号と、金利上昇・低下のどちらに弱いかの対応(銀行はプラス、生命保険会社はマイナスになりやすい)を押さえましょう。
  • 記述式では、ギャップの計算結果から金利リスクの向きを判断させ、デュレーション調整やデリバティブの活用などの対応策を説明させる形が考えられます。

要点まとめ

  • ALMは資産と負債を一体で管理し、純資産や収益の変動を抑える。
  • 金利更改ギャップは収益、デュレーション・ギャップは経済価値への影響を測る。
  • デュレーション・ギャップ = DA − (L÷A)×DL。プラスなら金利上昇に弱い。
  • 年金・銀行・生命保険会社は負債の性質に応じてALMを行う。

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