ひとことで言うと

  • 収益不動産の価値は、将来の収益から求める収益還元法で評価するのが基本です。
  • 直接還元法は「1年分の純収益 ÷ 還元利回り(キャップレート)」、DCF法は「保有期間の純収益と売却価格(復帰価格)の現在価値の合計」で求めます。
  • 還元利回りは、おおよそ「割引率 − 純収益の成長率」に対応し、金利や物件のリスクで変わります。

この記事では、証券アナリスト2次「ポートフォリオ・マネジメント」の学習ポイントのひとつ「不動産の価値評価」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 証券分析とポートフォリオ・マネジメント/ポートフォリオ・マネジメント
大分類 (9) オルタナティブ投資資産の種類、特徴と投資管理
協会の学習ポイント 不動産価値評価の基本手法(DCF法など)について理解する。

不動産の価値評価(直接還元法・DCF法)とは

不動産の価格を求める方法には、同じような物件の取引事例と比べる取引事例比較法、再調達にかかる費用から求める原価法、将来の収益から求める収益還元法があります。投資用の不動産では、その物件が生み出す収益こそが価値の源泉なので、収益還元法が中心になります。収益還元法には、直接還元法DCF法の2つがあります。

純収益(NOI・NCF)

計算の出発点は純収益です。賃料などの総収入から空室損失を差し引き、固定資産税・管理費・修繕費・保険料などの運営費用を控除したものをNOI(Net Operating Income、純営業収益)といいます。NOIから大規模修繕などの資本的支出を差し引き、敷金の運用益などを加えたものをNCF(純収益)と呼び、これを還元・割引の対象にすることもあります。借入金の利息や減価償却費は差し引かない点に注意します。

直接還元法

1年間の安定的な純収益を還元利回り(キャップレート)で割って価格を求めます。永久に続く定率成長の収益の現在価値を、1本の利回りに集約した考え方で、還元利回りはおおむね「割引率 − 純収益の成長率」に相当します。計算が簡単な一方、収益が不安定な物件や、将来の収益が大きく変わる物件には向きません。

DCF法

保有期間(たとえば5〜10年)の各年の純収益と、保有期間終了時の売却価格(復帰価格、ターミナル・バリュー)を、割引率で現在価値に割り引いて合計します。復帰価格は通常、保有期間の翌年の純収益を最終還元利回りで割って求め、売却費用を差し引きます。最終還元利回りは、将来の建物の老朽化や不確実性を考慮して、現在の還元利回りより高めに設定されることが一般的です。収益の変動を年ごとに反映できる反面、多くの前提条件を置くため、前提の妥当性の検証が重要です。

押さえておきたい公式

価格 = NOI(またはNCF) ÷ 還元利回り直接還元法。還元利回り ≒ 割引率 − 成長率
価格 = Σ NCFt ÷(1 + r)t + 復帰価格 ÷(1 + r)nDCF法。復帰価格 = NCFn+1 ÷ 最終還元利回り − 売却費用
記号 意味
NOI 総収入 − 空室損失 − 運営費用
NCF NOI − 資本的支出 + 一時金の運用益など
r 割引率(投資家の要求収益率)
n 保有期間(年)

具体例で確認

毎年のNOIが5,000万円のオフィスビルを評価します(簡単のため、NOI = NCFとし、売却費用は無視します)。

直接還元法:還元利回り5%とすると、5,000万円 ÷ 0.05 = 10億円

DCF法:保有期間5年、割引率6%、NOIは横ばい、6年目のNOI(5,000万円)を最終還元利回り5.5%で還元して売却するとします。

  • 5年間のNOIの現在価値:5,000万円 × 年金現価係数(6%、5年)≒ 2億1,062万円
  • 復帰価格:5,000万円 ÷ 0.055 ≒ 9億909万円、その現在価値:9億909万円 ÷ 1.065 ≒ 6億7,933万円
  • 価格:2億1,062万円 + 6億7,933万円 ≒ 8億8,994万円

2つの結果が違うのは、前提が異なるからです。直接還元法の還元利回り5%は、割引率6%なら年1%程度の成長を見込んでいることに相当します。一方、DCF法ではNOIを横ばいとし、売却時の還元利回りも5.5%と高めに置いたため、価格が低くなりました。前提をそろえれば、両者は整合的な値になるはずです。

試験で問われやすいポイント

  • NOIとNCFの定義(借入金利息・減価償却費は控除しない)と、どこまでを差し引くか。
  • 直接還元法の計算と、還元利回りが上がる(金利上昇・リスク上昇)と価格が下がるという方向性。
  • DCF法の計算手順(各年の純収益の現在価値 + 復帰価格の現在価値)と、最終還元利回りの設定。
  • 還元利回り ≒ 割引率 − 成長率という関係と、両手法の前提をそろえると整合的になること。
  • 記述式では、計算過程を示して価格を求めさせるほか、両手法の長所・短所や使い分けを説明させる問題が考えられます。

要点まとめ

  • 投資用不動産は収益還元法(直接還元法・DCF法)で評価するのが基本。
  • 直接還元法:価格 = 純収益 ÷ 還元利回り。
  • DCF法:各年の純収益と復帰価格の現在価値の合計。
  • 還元利回りは「割引率 − 成長率」におおむね対応し、上昇すれば価格は下がる。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。