完全な資本市場と機能不全とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・市場と経済の分析
ひとことで言うと
- 完全な資本市場では、誰もが同じ金利で自由に貸し借りでき、資金は収益性の高い投資に効率よく配分されます。
- 現実には情報の非対称性(逆選択・モラルハザード)、借入制約、取引費用などがあり、資本市場は機能不全を起こします。
- 機能不全があると、よい投資機会があっても資金が届かず、投資や消費が手元の資金や担保の価値に左右されるようになります。
この記事では、証券アナリスト2次「市場と経済の分析」の学習ポイントのひとつ「完全な資本市場と機能不全」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/経済 |
|---|---|
| 大分類 | (4) 景気循環と経済成長とその要因 |
| 協会の学習ポイント | 長期の資本市場における完全な資本市場の理論および資本市場の機能不全の決定要因について説明できる。 |
完全な資本市場と機能不全とは
理論上の「完全な資本市場」とは、取引費用や税がなく、すべての参加者が同じ情報を持ち、同じ金利でいくらでも貸し借りができる市場のことです。この世界では、資金は期待収益率の高い投資から順に配分され、社会全体で効率的な資源配分が実現します。
完全な資本市場の含意
完全な資本市場では、家計は所得が一時的に落ち込んでも借入で消費を平準化でき、消費は生涯の所得(恒常所得)で決まります。企業も、収益率が資本コストを上回る投資は手元資金の有無にかかわらず実行できます。所有者の好みと投資決定を切り離せるというフィッシャーの分離定理や、資金調達の方法が企業価値に影響しないというモジリアーニ=ミラーの定理も、この前提の上に成り立っています。
機能不全の決定要因
現実の資本市場では、借り手は自分の返済能力や事業のリスクを貸し手よりよく知っています。この情報の非対称性から2つの問題が生じます。1つは、契約前に質の悪い借り手ほど高い金利でも借りたがる逆選択、もう1つは、借りた後に借り手がリスクの高い行動をとるモラルハザードです。貸し手は金利を上げると借り手の質が悪化することを恐れるため、金利を上げる代わりに貸出量そのものを絞る信用割当が起こります。
このほか、担保にできる資産が少ない家計や中小企業が借りられない借入制約(流動性制約)、審査や契約にかかる取引費用、契約を強制できない法制度の不備なども機能不全の原因です。
マクロ経済への影響
機能不全があると、消費が現在の所得に強く反応し、企業の投資はキャッシュフローや担保価値に左右されます。景気後退で資産価格が下がると担保価値が減り、借入が難しくなって投資がさらに落ち込むという金融増幅効果が生じ、景気変動が大きくなります。情報開示制度、信用情報機関、担保法制などは、こうした機能不全を和らげる役割を持ちます。
整理しておきたいポイント
| 要因 | 内容 | 主な帰結 |
|---|---|---|
| 逆選択 | 契約前の情報の非対称性。高金利でも借りたい借り手ほどリスクが高い | 信用割当、良質な借り手の撤退 |
| モラルハザード | 契約後に借り手がリスクの高い行動をとる | 貸出の抑制、担保・誓約条項の要求 |
| 借入制約 | 担保や信用力が不足して借りられない | 消費・投資が手元資金に依存 |
| 取引費用・制度の不備 | 審査費用、契約の執行が難しい | 小口・新興の借り手への資金不足 |
具体例で確認
銀行の前に、確実に110の成果を生む安全な事業の借り手と、50%の確率で150、50%の確率で0となる危険な事業の借り手がいて、どちらも100を借りたいとします。銀行には、どちらがどちらかは見分けられません。
- 金利が5%なら、安全な借り手は105を返しても5が手元に残るため借ります。危険な借り手も成功時に45が残るため借ります。
- 金利を15%に上げると、安全な借り手は110では115を返せないので借入をやめます。危険な借り手は成功時に35が残るため借り続けます。
結果として、金利を上げると借り手が危険な事業ばかりになり、銀行の期待回収額(0.5 × 115 = 57.5)は貸出額100を大きく下回ります。このため銀行は金利を上げずに貸出を絞る(信用割当)ことを選びます。これが逆選択による資本市場の機能不全の典型例です。
試験で問われやすいポイント
- 完全な資本市場の前提(情報の対称性、取引費用ゼロ、同一金利で自由に貸借)と、その下での効率的な資金配分を説明させる問題に注意しましょう。
- 逆選択とモラルハザードの違い(契約前か契約後か)を混同させるひっかけが多いです。
- 金利を上げても需給が一致しない信用割当が起こる理由を、記述式で論理立てて説明できるようにしましょう。
- 借入制約があると消費や投資が手元資金・担保価値に依存し、景気変動が増幅される点も押さえましょう。
要点まとめ
- 完全な資本市場では資金が効率的に配分され、消費の平準化も可能
- 情報の非対称性(逆選択・モラルハザード)が機能不全の主因
- 金利を上げずに貸出量を絞る信用割当が起こりうる
- 借入制約は投資・消費を手元資金や担保に依存させ、景気変動を増幅する
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
