ひとことで言うと

  • 因子負荷行列は、各変数が各共通因子からどれだけ影響を受けるかを並べた行列Lで、相関行列を R = LL’ + Ψ と再現するように推定します。
  • 代表的な推定法は、固有値分解を使う主因子法と、正規分布を仮定して尤度を最大化する最尤法です。
  • 推定後は、解釈しやすくするために因子の回転(バリマックス回転など)を行うのが一般的です。

この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「因子負荷行列の推定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計
大分類 (12) 多変量解析
協会の学習ポイント 因子負荷行列の推定法について理解する。

因子負荷行列の推定とは

因子分析のモデルでは、標準化した変数の相関行列Rが、因子負荷行列L(p行m列)と独自分散の対角行列Ψを使って R = LL’ + Ψ と表されます。実際に観測できるのは標本の相関行列だけなので、これをできるだけうまく再現するLとΨを求めるのが「因子負荷行列の推定」です。

主因子法

相関行列の対角成分(1)を、各変数の共通性の推定値に置き換えた行列(R − Ψ)を作り、その固有値・固有ベクトルを求めます。大きい方からm個の固有値λkと固有ベクトルakを使い、因子負荷を √λk × ak とします。共通性の初期値には、その変数を他の変数で回帰したときの決定係数(SMC)などが使われ、求めた負荷から共通性を計算し直して繰り返す方法(反復主因子法)もあります。対角成分を1のまま計算すると、主成分分析の結果に近いもの(主成分解)になります。

最尤法

観測データが多変量正規分布に従うと仮定し、尤度が最大になるようにLとΨを推定します。計算は反復的で手間がかかりますが、因子数が適切かをカイ二乗検定で確かめられること、変数の単位(尺度)を変えても本質的に同じ結果になることが利点です。ほかに、残差の2乗和を最小にする最小二乗法などもあります。推定の途中で共通性が1を超えるなど不適切な解(ヘイウッド・ケース)が生じることがある点にも注意が必要です。

因子数の決定と回転

因子数は、相関行列の固有値1以上、スクリー・プロット、最尤法の適合度検定などを参考に決めます。また、Lに直交行列Tを掛けた LT も同じ LL’ を与えるため(回転の不定性)、各変数が少数の因子にだけ大きな負荷をもつよう回転して解釈しやすくします。因子どうしの無相関を保つ直交回転(バリマックス回転)と、因子間の相関を許す斜交回転(プロマックス回転など)があります。

押さえておきたい公式

R = LL’ + Ψ推定の目標:標本相関行列をこの形で再現する
主因子法:R − Ψ̂ = Σ λkakak‘ → lk = √λk × ak対角成分を共通性の推定値に置き換えた行列を固有値分解
回転:L* = LT(T’T = I) → L*L*’ = LL’直交回転しても相関の再現は変わらない

具体例で確認

3変数の標本相関が r12 = 0.56、r13 = 0.48、r23 = 0.42 で、1因子モデルが当てはまるとします。1因子モデルでは rij = lilj なので、

  • l12 = r12 × r13 ÷ r23 = 0.56 × 0.48 ÷ 0.42 = 0.64 → l10.8
  • l2 = r12 ÷ l1 = 0.56 ÷ 0.8 = 0.7、l3 = r13 ÷ l1 = 0.48 ÷ 0.8 = 0.6
  • 独自分散:1 − 0.64 = 0.36、1 − 0.49 = 0.51、1 − 0.36 = 0.64

この例は相関がモデルにぴったり合う理想的なケースです。実際のデータでは完全には一致しないため、主因子法や最尤法で「最もよく再現する」負荷を求めます。

推定法 考え方 特徴
主因子法 対角を共通性に置き換えた相関行列を固有値分解 計算が比較的簡単。分布の仮定が不要
最尤法 正規分布を仮定し尤度を最大化 因子数の適合度検定ができる。尺度に依存しない
最小二乗法 再現した相関と標本相関の差の2乗和を最小化 分布の仮定が不要

試験で問われやすいポイント

  • 主因子法の手順(対角成分を共通性の推定値に置き換え→固有値分解→√λ×固有ベクトル)。
  • 最尤法の前提(多変量正規分布)と利点(適合度検定で因子数を検討できる)。
  • 回転の不定性と、直交回転(バリマックス)・斜交回転(プロマックス)の違い。回転しても共通性は変わらない(直交回転の場合)点。
  • 1因子モデルで相関から因子負荷を逆算する計算。
  • 記述式では、推定法の違いや回転の目的を簡潔に説明させる問題に備えましょう。

要点まとめ

  • 因子負荷行列は R = LL’+Ψ を再現するように推定します。
  • 主因子法は固有値分解、最尤法は正規分布のもとでの尤度最大化による推定です。
  • 因子数は固有値、スクリー・プロット、適合度検定などで決めます。
  • 回転の不定性を利用して、解釈しやすい因子に回転します。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。