シミュレーションとシナリオ分析・決定木の違いとは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- シナリオ分析は、好況・普通・不況など少数の想定ケースを比べる手法、決定木は、判断と不確実な結果を順番に枝分かれさせて最適な行動を選ぶ手法です。
- シミュレーションは、多数の変数を連続的な確率分布で表し、結果の分布全体を得られるのが強みです。
- 一方、途中での撤退・拡張といった段階的な意思決定を明示的に扱うのは決定木が得意で、目的に応じて使い分け・併用します。
この記事では、証券アナリスト2次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「シナリオ分析・決定木との違い」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 市場と経済の分析/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (14) シミュレーション手法 |
| 協会の学習ポイント | 意思決定にシミュレーションを用いる場合のシナリオ分析と決定木との違いについて理解する。 |
シミュレーションとシナリオ分析・決定木の違いとは
不確実性のもとで意思決定を行うための代表的な手法として、シナリオ分析、決定木、シミュレーションがあります。どれも「将来は1通りではない」ことを前提にしていますが、不確実性の表し方と、答えとして得られるものが異なります。
シナリオ分析
シナリオ分析は、「好況」「基本」「不況」のように、変数の組み合わせをいくつかの想定ケースにまとめ、それぞれの結果を計算して比べる手法です。直感的でわかりやすく、ストレステストのように「最悪の場合どうなるか」を示すのにも向いています。一方、ケースの数が少なく、各ケースの間にある無数の可能性や、ケースごとの確率の設定には主観が入りやすい点が限界です。
決定木
決定木は、意思決定者が選べる判断の分岐(決定ノード)と、自分では選べない不確実な出来事の分岐(確率ノード)を時間順に並べ、後ろから期待値を計算して(ロールバック)、各時点の最適な行動を決める手法です。「第1段階の結果を見てから追加投資するか撤退するか」といった段階的な意思決定や、その柔軟性の価値(リアル・オプション的な価値)を明示的に評価できるのが強みです。ただし、分岐が増えると木が急速に大きくなるため、不確実性は少数の離散的な結果で近似することになります。
シミュレーション
シミュレーションは、多数の不確実な変数に連続的な確率分布と相関を与え、乱数で何千・何万ものシナリオを発生させて結果の分布全体を求めます。変数が多く複雑な問題でも扱える一方、それ自体は最適な行動を選ぶ仕組みを持たず、途中の判断を組み込むにはルールをあらかじめ決めておく必要があります。
整理しておきたいポイント
| 観点 | シナリオ分析 | 決定木 | シミュレーション |
|---|---|---|---|
| 不確実性の表し方 | 少数の想定ケース | 離散的な分岐と確率 | 連続的な確率分布と相関 |
| 得られるもの | ケースごとの結果 | 最適な行動と期待値 | 結果の分布全体(損失確率など) |
| 段階的な意思決定 | 扱いにくい | 得意(柔軟性の価値を評価) | ルール化すれば可能だが扱いにくい |
| 多数の変数・相関 | ケースが限られる | 木が大きくなりすぎる | 得意 |
| 主な弱点 | ケースの選び方・確率が主観的 | 分岐の簡略化が必要 | 入力の前提に依存、手間がかかる |
具体例で確認
ある新規事業のNPV(単位:億円)を考えます。
シナリオ分析
好況(確率30%)でNPV=50、普通(50%)で10、不況(20%)で−40とすると、期待値は 0.3 × 50 + 0.5 × 10 + 0.2 × (−40) = 15 + 5 − 8 = 12 です。
決定木
第1段階の結果を見て不況とわかった時点で撤退でき、そのときの損失を−10に抑えられるとします。決定木で後ろから考えると、不況の枝では「継続(−40)」より「撤退(−10)」を選ぶのが最適です。期待値は 0.3 × 50 + 0.5 × 10 + 0.2 × (−10) = 15 + 5 − 2 = 18 となり、撤退という選択肢(柔軟性)の価値は 18 − 12 = 6 と評価できます。
シミュレーション
売上成長率、利益率、為替などをそれぞれ確率分布で表してシミュレーションすると、NPVの分布全体、たとえば「NPVがマイナスになる確率」や「下位5%点」が得られます。3つのケースの間にある多様な結果まで把握できる点が、シナリオ分析との違いです。
試験で問われやすいポイント
- 3つの手法の不確実性の表し方(少数ケース・離散的な分岐・連続分布)の違いが問われやすいです。
- 決定木は段階的な意思決定と柔軟性の価値の評価が得意で、後ろから期待値を計算する手順を示せるようにしましょう。
- シミュレーションは結果の分布全体が得られる一方、最適な行動を自動的には示さない点がひっかけになりやすいです。
- シナリオ分析の期待値計算や、決定木での撤退オプションの価値の計算が出題される可能性があります。
- 記述式では、与えられた意思決定の状況にどの手法が適しているか、その理由を説明させる形も考えられます。
要点まとめ
- シナリオ分析は少数の想定ケースを比べる、わかりやすいが粗い手法
- 決定木は判断と不確実性の分岐を並べ、段階的な意思決定と柔軟性の価値を評価できる
- シミュレーションは多数の変数を連続分布で扱い、結果の分布全体を示す
- 目的に応じて使い分け、必要なら組み合わせて使う
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
