ひとことで言うと

  • エンゲージメントとは、投資家が投資先企業と建設的な「目的を持った対話」を行い、中長期的な企業価値の向上を促すことです。
  • 日本では、機関投資家向けの日本版スチュワードシップ・コードが、この対話を投資家の責任として位置づけています。
  • 不満があれば株を売る(エグジット)のではなく、保有を続けながら声を上げる点が特徴です。

この記事では、証券アナリスト1次・科目Ⅰ「株式分析」の学習ポイントのひとつ「エンゲージメント」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/株式分析
大分類 (2) 株式投資と企業のファンダメンタル分析
協会の学習ポイント 企業と投資家の対話(エンゲージメント)について理解する。

エンゲージメント(企業と投資家の対話)とは

株主は会社の所有者ですが、実際の経営は経営者に任されています。そのため、経営者が株主の利益に沿わない行動をとるエージェンシー問題が生じることがあります。これを和らげる手段の1つが、投資家が企業と対話し、経営の方向性について意見を伝えるエンゲージメントです。

エンゲージメントのテーマは、事業戦略、資本効率(ROEと資本コストの関係など)、株主還元や手元資金の使い道、取締役会の構成、ESGへの取り組みなど多岐にわたります。単に要求を突きつけるのではなく、企業と投資家が中長期的な企業価値の向上という共通の目的に向けて、認識をすり合わせることが重視されます。

2つのコードとの関係

日本では2014年に、機関投資家の行動原則として日本版スチュワードシップ・コードが策定され(その後改訂)、投資先企業との建設的な対話を通じて企業価値の向上を促すことが、機関投資家の「受託者としての責任(スチュワードシップ責任)」とされました。企業側の行動原則としては2015年にコーポレートガバナンス・コードが適用され、株主との建設的な対話が求められています。2つのコードは、投資家側と企業側から対話を支える「車の両輪」とされています。いずれも法律ではなく、原則に従うか、従わない場合はその理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」の考え方をとっています。

パッシブ運用とエンゲージメント

指数に連動するパッシブ運用では、業績や経営に不満があっても銘柄を売却しにくいため、保有を続けながら対話や議決権行使で改善を促すエンゲージメントが特に重要とされます。複数の投資家が協働して企業と対話する協働エンゲージメントという方法もあります。

整理しておきたいポイント

項目 日本版スチュワードシップ・コード コーポレートガバナンス・コード
対象 機関投資家 上場企業
主な内容 対話を通じて企業価値向上を促す責任、議決権行使の方針と結果の公表など 株主の権利確保、取締役会の役割、株主との対話など
性格 法的拘束力のない原則(コンプライ・オア・エクスプレイン) 法的拘束力のない原則(コンプライ・オア・エクスプレイン)
株主の選択肢 内容
エグジット(売却) 経営に不満があれば株式を売って関係を断つ
ボイス(発言) 保有を続けながら、対話や議決権行使で経営に意見を伝える(エンゲージメント)

具体例で確認

ある運用会社が長く保有している企業A社は、多額の現預金を抱えたまま、ROEが株主資本コストを下回る状態が続いているとします。運用会社はすぐに株を売るのではなく、A社の経営陣と面談し、「資金を成長投資に回す計画はあるか」「使い道がないなら株主還元を検討できないか」「資本コストを意識した目標を示してはどうか」といった問いかけを行います。

対話を重ねた結果、A社が資本コストを意識した中期経営計画や、成長投資と株主還元の方針を示せば、市場の評価が改善して企業価値の向上につながる可能性があります。対話で改善が見られない場合には、株主総会での議決権行使(たとえば取締役選任議案への反対)で意思を示すこともあります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「ESG(非財務情報)と株式価値、企業と投資家の対話(エンゲージメント)」)。

試験で問われやすいポイント

  • エンゲージメントは中長期的な企業価値の向上を目的とした「建設的な対話」であるという定義が問われやすいです。
  • スチュワードシップ・コード(投資家側)コーポレートガバナンス・コード(企業側)の対象を入れ替えたひっかけに注意しましょう。
  • 両コードとも法律ではなく、コンプライ・オア・エクスプレインの原則に基づく点が狙われやすいです。
  • 売却(エグジット)と対話・議決権行使(ボイス)の違い、パッシブ運用でエンゲージメントが重視される理由が問われやすいです。
  • エンゲージメントは短期的な株価上昇だけを求めるものではない、という点で混同しやすいので注意しましょう。

要点まとめ

  • エンゲージメント=企業価値向上を目的とした投資家と企業の建設的な対話
  • 投資家側はスチュワードシップ・コード、企業側はコーポレートガバナンス・コード
  • どちらもコンプライ・オア・エクスプレインの原則
  • 売らずに声を上げる手段で、パッシブ運用で特に重要

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。