ひとことで言うと

  • 債券先物(国債先物)は、実在しない標準物を対象にした先物で、受渡しには条件を満たす複数の国債(受渡適格銘柄)を使えます。
  • 銘柄ごとの違いは交換比率(コンバージョン・ファクター)で調整し、売り方は最も有利な最割安銘柄(CTD)を渡します。
  • 債券先物の理論価格は、CTDの先渡価格 ÷ 交換比率で求められます。

この記事では、証券アナリスト1次「デリバティブ分析」の学習ポイントのひとつ「債券先物の仕組みと価格形成」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅰ/デリバティブ分析
大分類 (4) 金利・通貨を対象としたデリバティブ
協会の学習ポイント 債券先物取引の仕組みと価格形成について理解する。

債券先物と最割安銘柄(CTD)とは

日本の代表的な債券先物である長期国債先物は、「利率6%・残存10年」という架空の標準物を取引対象としています。実在しない債券なので、満期に受け渡すときは、一定の条件を満たす実際の国債(受渡適格銘柄)の中から売り方が選んで渡します。

交換比率(コンバージョン・ファクター)

受渡適格銘柄は、クーポンや残存期間がそれぞれ違うため、標準物と同じ価値ではありません。そこで銘柄ごとに交換比率が決められています。交換比率は、その銘柄を標準物の利回り(6%)で評価したときの価格を100で割ったものです。受渡しのとき売り方が受け取る金額は「先物価格×交換比率」(+経過利子)になります。

最割安銘柄(CTD)

売り方は、市場で国債を買って受け渡すと考えると、「市場価格 − 先物価格 × 交換比率」が最も小さい銘柄を選ぶのが有利です。この銘柄を最割安銘柄(CTD:Cheapest to Deliver)と呼びます。一般に、市場金利が標準物の利率6%を下回る環境では、デュレーションの短い(残存期間の短い)銘柄がCTDになりやすいとされます。

理論価格の決まり方

債券先物の買いは、事実上「CTDを先渡で買う」ことに相当します。そのため先物の理論価格は、CTDの現物価格に保有コスト(資金調達コスト−クーポン収入)を加減したCTDの先渡価格を、交換比率で割って求めます。先物価格はCTDの価格変動に連動して動くと考えられます。

押さえておきたい公式

先物理論価格 = CTDの先渡価格 ÷ CTDの交換比率CTDの先渡価格 = CTD価格 + 資金調達コスト − 受渡日までのクーポン収入(経過利子は簡略化)
受渡しの実質コスト = 市場価格 − 先物価格 × 交換比率この値が最も小さい銘柄が最割安銘柄(CTD)

具体例で確認

例1:最割安銘柄の判定

先物価格が141.00円のとき、3つの受渡適格銘柄の受渡しコストを比べます。

銘柄(市場価格・交換比率) 先物価格×交換比率 受渡しの実質コスト
A(99.00円・0.70) 98.70円 0.30円
B(104.00円・0.73) 102.93円 1.07円
C(95.50円・0.67) 94.47円 1.03円

コストが最も小さい銘柄AがCTDです。

例2:先物理論価格

CTD(銘柄A)の価格99.00円、クーポン年0.8%、交換比率0.70、受渡日まで0.25年、資金調達金利年0.2%とします(経過利子は省略)。

  1. 資金調達コスト:99.00 × 0.002 × 0.25 ≒ 0.0495円
  2. クーポン収入:0.8 × 0.25 = 0.20円
  3. CTDの先渡価格:99.00 + 0.0495 − 0.20 ≒ 98.85円
  4. 先物理論価格:98.85 ÷ 0.70 ≒ 141.21円

試験で問われやすいポイント

  • 長期国債先物の対象が架空の標準物(利率6%・残存10年)であり、受渡しには受渡適格銘柄を使う点が問われます。
  • 交換比率の意味と、受渡代金が先物価格×交換比率で決まる点を押さえましょう。
  • CTDは「市場価格 − 先物価格×交換比率」が最小の銘柄であり、どの銘柄を渡すかは売り方が選ぶ点がよく出ます。
  • 理論価格の計算では、CTDの先渡価格を交換比率で割ることを忘れないようにしましょう。
  • クーポン収入は先物価格を下げ、資金調達コストは上げるという、保有の便益・費用の考え方とつなげて理解しましょう。

要点まとめ

  • 債券先物は架空の標準物が対象で、受渡しは受渡適格銘柄で行う
  • 銘柄間の違いは交換比率で調整する
  • 売り方に最も有利な銘柄が最割安銘柄(CTD)
  • 先物理論価格=CTDの先渡価格÷交換比率

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