ひとことで言うと

  • 合併や株式交換のように、自社の株式を交付して他社を取得する企業結合も、取得であればパーチェス法で処理します。
  • 取得原価は交付した株式の企業結合日の時価で測り、同じ金額だけ払込資本(資本金・資本剰余金)が増えます。
  • 現金は出ていかず、資産の増加と同時に純資産が増えるのが現金対価との大きな違いです。

この記事では、証券アナリスト1次「財務分析」の学習ポイントのひとつ「株式対価の企業結合」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅱ/財務分析
大分類 (8) 企業結合会計
協会の学習ポイント 株式を対価とする企業結合の会計処理を理解する。

株式を対価とする企業結合とは

株式を対価とする企業結合の代表例は、存続会社が消滅会社の株主に自社株式を交付する吸収合併や、完全子会社となる会社の株主に親会社株式を交付する株式交換です。対価として現金ではなく株式を渡すため、取得企業の資金は減らず、株主の構成が変わります。

取得原価の測定

取得の場合、取得原価は交付した株式の時価で測定します。市場価格のある株式であれば、原則として企業結合日の株価を基礎にします。合意公表日ではなく企業結合日の株価を使う点が、日本基準のポイントです(株価はその間も変動するため、取得原価も変わり得ます)。

取得原価の配分とのれん

受け入れた資産・負債を企業結合日の時価で計上し、取得原価との差額をのれん(または負ののれん)とする点は、現金を対価とする場合と同じです。

増加する資本

新株を発行した場合、取得原価と同額が払込資本として増加します。そのうち資本金・資本準備金・その他資本剰余金にいくらずつ計上するかは、会社法の規定の範囲内で合併契約などに基づいて決めます。利益剰余金は増えません。

逆取得に注意

株式を交付した会社が、必ずしも取得企業になるとは限りません。たとえば小さな会社が大きな会社を吸収合併し、合併後は消滅会社の旧株主が議決権の過半を持つ場合、実質的な取得企業は消滅会社側です。これを逆取得といい、存続会社の個別財務諸表では、消滅会社の資産・負債を時価ではなく適正な帳簿価額で引き継ぎます。

押さえておきたい公式

取得原価 = 交付株式数 × 企業結合日の株価
のれん = 取得原価 − 受け入れた純資産の時価増加する払込資本(資本金・資本剰余金)は取得原価と同額

具体例で確認

A社がB社を吸収合併し、B社の株主にA社株式100万株を交付しました。企業結合日のA社株価は1,200円、B社の資産の時価は25億円、負債の時価は15億円です。合併契約により、資本金を5億円、残りを資本準備金とします。

  • 取得原価:100万株 × 1,200円 = 12億円
  • 受け入れた純資産の時価:25億円 − 15億円 = 10億円
  • のれん:12億円 − 10億円 = 2億円
  • 増加する資本:資本金5億円、資本準備金7億円(合計12億円)
借方 貸方
諸資産 25億円 諸負債 15億円
のれん 2億円 資本金 5億円
資本準備金 7億円

同じ買収を現金12億円で行った場合と比べると、のれんの額は同じですが、現金が減らず純資産が12億円増えるため、自己資本比率やROE、1株当たり指標への影響が異なります。

試験で問われやすいポイント

  • 取得原価は交付株式の「時価」、それも原則として「企業結合日」の株価で測る点が問われやすいです。
  • 増加するのは払込資本(資本金・資本剰余金)で、利益剰余金は増えない点に注意しましょう。
  • のれんの計算方法は現金対価と同じです。交付株式数×株価から純資産の時価を引く計算に慣れておきましょう。
  • 株式を交付した側が取得企業にならない「逆取得」の考え方も確認しておきましょう。
  • 現金対価と株式対価で、純資産・発行済株式数・財務指標への影響がどう違うかも論点になります。

要点まとめ

  • 株式対価の企業結合も、取得であればパーチェス法で処理する。
  • 取得原価は交付株式の企業結合日の時価で測定する。
  • 取得原価と同額の払込資本が増え、純資産が増加する。
  • 取得原価と受け入れた純資産の時価の差額がのれんになる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。