【CFA®︎ L2 Equities LM5】Residual Income Valuation を要点解説|残余利益・EVA・MVA・正当化P/B・継続的残余利益

Learning Module 5「Residual Income Valuation(残余利益モデル)」は、残余利益・EVA・MVAの概念、残余利益モデルによる株式評価と価値の認識時期、正当化P/Bとの関係、単一段階・多段階モデル、継続的残余利益、他モデルとの比較、会計上の論点を扱う単元です。
本記事では、最新版カリキュラムのLOS(Learning Outcome Statement)と、この単元の重要論点を日本語で整理しました。
LM5のLOS(学習目標)
LOSは、この単元で「できるようになるべきこと」として示されている学習目標です。LM5には11個のLOSがあります。
- LOS 1:残余利益、経済付加価値(EVA)、市場付加価値(MVA)を計算・解釈するcalculate and interpret residual income, economic value added, and market value added
- LOS 2:残余利益モデルの用途を記述するdescribe the uses of residual income models
- LOS 3:残余利益モデルを用いて普通株の本源的価値を計算し、残余利益モデルと他の現在価値モデルにおける価値の認識を比較するcalculate the intrinsic value of a common stock using the residual income model and compare value recognition in residual income and other present value models
- LOS 4:残余利益の基本的な決定要因を説明するexplain fundamental determinants of residual income
- LOS 5:残余利益による評価と、予想ファンダメンタルズに基づく正当化P/Bとの関係を説明するexplain the relation between residual income valuation and the justified price-to-book ratio based on forecasted fundamentals
- LOS 6:単一段階(定率成長)および多段階の残余利益モデルを用いて普通株の本源的価値を計算・解釈するcalculate and interpret the intrinsic value of a common stock using single-stage (constant-growth) and multistage residual income models
- LOS 7:市場のP/Bと株主資本の要求収益率の推定値が与えられたとき、残余利益の暗黙の成長率を計算するcalculate the implied growth rate in residual income, given the market price-to-book ratio and an estimate of the required rate of return on equity
- LOS 8:継続的残余利益を説明し、企業と産業の見通しに照らして予測期末の継続的残余利益の推定を正当化するexplain continuing residual income and justify an estimate of continuing residual income at the forecast horizon, given company and industry prospects
- LOS 9:残余利益モデルを配当割引モデルおよびフリー・キャッシュフロー・モデルと比較するcompare residual income models to dividend discount and free cash flow models
- LOS 10:残余利益モデルの長所と短所を説明し、普通株の評価に残余利益モデルを選ぶことを正当化するexplain strengths and weaknesses of residual income models and justify the selection of a residual income model to value a company’s common stock
- LOS 11:残余利益モデルを適用する際の会計上の論点を記述するdescribe accounting issues in applying residual income models
LM5のまとめ
この単元の要点をまとめると、次のとおりです。
- 残余利益は、純利益から株主資本の機会費用(要求収益率×期首簿価)を差し引いた利益
- EVAは税引後営業利益から総資本のコストを差し引いた企業全体の残余利益で、MVAは企業の市場価値と投下資本の差
- 残余利益モデルでは、株式価値は現在の簿価に将来の残余利益の現在価値を加えたもの
- 残余利益モデルは価値の多くを簿価として早期に認識するため、DDMやFCFモデルに比べてターミナル・バリューへの依存が小さい
- ROEが要求収益率を上回る場合に残余利益はプラスとなり、株価は簿価を上回る
- 予測期間後の残余利益は、持続係数によってゼロへ減衰する形などで仮定する
- 残余利益モデルはクリーン・サープラス関係を前提とし、会計上の歪みを調整する必要がある
以下、LOSごとに重要論点を整理します。
LOS 1:残余利益・EVA・MVA
残余利益は純利益から株主資本コスト(要求収益率×期首簿価)を差し引いた利益です。EVAは税引後営業利益(NOPAT)から総資本コストを差し引いたもの、MVAは企業の市場価値から投下資本を差し引いたものです。
- RIₜ = Eₜ − r × Bₜ₋₁
- RIₜ =(ROEₜ − r)× Bₜ₋₁
- EVA = NOPAT − WACC × 総資本
- MVA = 企業の市場価値 − 総資本
- 会計上の利益は株主資本コストを控除していない
LOS 2:残余利益モデルの用途
残余利益の考え方は、株式評価のほか、経営成績の測定、役員報酬の設計、減損テストなどに使われます。
- 株式の本源的価値の推定
- 経営者の業績評価・報酬
- 価値創造の測定
- のれんなどの減損テスト
LOS 3:残余利益モデルによる本源的価値と価値の認識
株式価値は現在の簿価に将来の残余利益の現在価値を加えたものです。価値の大部分を簿価として早期に認識するため、DDMやFCFモデルよりターミナル・バリューの比重が小さくなります。
- V₀ = B₀ + Σ RIₜ ÷(1 + r)ᵗ
- クリーン・サープラス関係:Bₜ = Bₜ₋₁ + Eₜ − Dₜ
- 同じ前提なら理論上DDMと同じ価値
- 価値の認識時期が早い
LOS 4:残余利益の決定要因
残余利益はROEと要求収益率の差、および簿価の大きさで決まります。ROEが要求収益率を上回れば株価は簿価を上回り、下回れば簿価を下回ります。
- ROE − r(超過収益力)
- 株主資本の簿価
- 競争により超過ROEは時間とともに縮小しやすい
- ROE=r なら価値=簿価
LOS 5:残余利益と正当化P/B
単一段階の残余利益モデルから、正当化P/Bは1にROEと要求収益率の差を反映した項を加えたものになります。ROEがrを上回るほどP/Bは1を上回ります。
- ROE>r:P/B>1
- ROE=r:P/B=1
- ROE<r:P/B<1
- ゴードン成長モデルの正当化P/Bと整合
LOS 6:単一段階・多段階の残余利益モデル
単一段階モデルはROEと成長率が一定と仮定します。多段階モデルでは予測期間の残余利益を個別に予測し、その後を継続的残余利益として扱います。
- 単一段階:V₀ = B₀ +(ROE − r)× B₀ ÷(r − g)
- 多段階:予測期間のRIのPV+継続的RIのPV
- 予測期間後のROEの仮定が重要
- トービンのqとの関係
LOS 7:残余利益の暗黙の成長率
市場価格が本源的価値に等しいと仮定し、単一段階モデルを成長率について解くと、市場が織り込んでいる残余利益の暗黙の成長率が求まります。
- 市場のP/Bと要求収益率から逆算
- ROEが一定との前提
- アナリストの見通しとの比較
LOS 8:継続的残余利益
継続的残余利益は予測期間後に続くと想定する残余利益です。永久に一定、一定率で成長、ゼロに即座に減衰、持続係数(ω)で徐々に減衰などの仮定があり、企業の競争優位や産業の状況で選びます。
- 仮定:一定、成長、ゼロへ即減衰、徐々に減衰
- 持続係数ω:0〜1(1に近いほど持続)
- ωが高い:参入障壁、強い競争力
- ωが低い:極端に高いROE、多額の特別項目・会計上の発生高
LOS 9:残余利益モデルとDDM・FCFモデルの比較
3つのモデルは前提が整合的なら理論上同じ価値になりますが、残余利益モデルは価値を早く認識し、会計データを直接使う点が異なります。
- DDM:配当、少数株主の視点
- FCF:キャッシュフロー、支配株主の視点
- RI:会計上の利益と簿価
- RIはターミナル・バリューの比重が小さい
LOS 10:残余利益モデルの長所・短所と選択
残余利益モデルは、無配企業、FCFがマイナスの企業、ターミナル・バリューの不確実性が高い企業に適します。一方、会計データの質に依存し、クリーン・サープラス関係の成立が前提です。
- 長所:ターミナル・バリューの比重が小さい
- 長所:無配・FCFマイナスでも適用可
- 長所:入手しやすい会計データを利用
- 短所:会計の裁量に左右される、クリーン・サープラスの前提
- 適する場面:無配、FCFマイナス、TVが不確実
LOS 11:残余利益モデル適用上の会計上の論点
クリーン・サープラス関係の違反(その他の包括利益など)、資産・負債の公正価値との乖離、無形資産、非経常項目、会計操作、国際的な会計基準の違いなどを調整する必要があります。
- その他の包括利益:純利益を経ず簿価を変動
- オフバランス項目・評価差額の調整
- 研究開発費など無形資産の扱い
- 非経常項目の除外
- アグレッシブな会計の修正
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