対数正規分布とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト1次・数量分析と確率・統計
ひとことで言うと
- 確率変数Xの対数ln Xが正規分布に従うとき、Xは対数正規分布に従うといいます。
- 値は常に正で、右に長い裾をもつ(右に歪んだ)分布になります。
- ファイナンスでは「連続複利の収益率(対数収益率)が正規分布、株価は対数正規分布」というモデルがよく使われます。
この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「対数正規分布とファイナンス」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計 |
|---|---|
| 大分類 | (5) 確率分布 |
| 協会の学習ポイント | 対数正規分布について理解し、ファイナンスへの応用について理解する。 |
対数正規分布とは
対数正規分布は、ある確率変数Xの自然対数ln Xが正規分布に従うときの、X自体の分布です。Xはe(ネイピア数)の正規分布乗の形をしているので、0より大きい値しかとりません。分布の形は左右対称ではなく、右側に長く裾を引く「右に歪んだ」形になります。
なぜ株価のモデルに使われるのか
株価を正規分布でモデル化すると、確率は小さくても株価がマイナスになる可能性が生じてしまいます。株式会社の株主は有限責任なので、株価が0を下回ることはありません。そこで、株価そのものではなく対数収益率 ln(ST ÷ S0)が正規分布に従うと仮定します。すると株価ST = S0 × e(対数収益率)は常に正となり、対数正規分布に従います。
また、対数収益率には複数期間の収益率を足し算で合成できるという便利な性質があります。各期の対数収益率が独立な正規分布に従えば、その合計も正規分布になり、長期の株価も対数正規分布で表せます。オプション評価で使われるブラック・ショールズ・モデルも、株価が対数正規分布に従うという前提に立っています。
平均と中央値の関係
対数正規分布は右に歪んでいるため、平均 > 中央値となります。ln Xの平均がμ、分散がσ2のとき、Xの中央値はeμですが、平均はeμ+σ2/2と、σ2/2の分だけ大きくなります。ボラティリティが大きいほど、平均と中央値の差は広がります。
押さえておきたい公式
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| μ、σ2 | ln Xの平均と分散(X自体の平均・分散ではない) |
| S0、ST | 現在と時点Tの株価 |
| r | 対数収益率(正規分布に従うと仮定) |
具体例で確認
現在100円の株式の1年間の対数収益率rが、平均8%・標準偏差20%の正規分布に従うとします。
- 1年後の株価の中央値:100 × e0.08 ≒ 108.33円
- 1年後の株価の平均:100 × e0.08 + 0.22/2 = 100 × e0.10 ≒ 110.52円
- 1年後に100円を下回る確率:r < 0となる確率なので、Z = (0 − 0.08) ÷ 0.20 = −0.4、P = 1 − Φ(0.4) ≒ 約34.5%
平均(110.52円)が中央値(108.33円)より大きく、分布が右に歪んでいることが確認できます。
動画で解説
この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「対数正規分布とファイナンスへの応用を理解する」)。
試験で問われやすいポイント
- ln Xが正規分布ならXは対数正規分布という定義の向きを取り違えないようにしましょう。
- 対数正規分布は負の値をとらないため、有限責任の株価のモデルに適しているという理由が問われやすいです。
- 右に歪んだ分布で、平均 > 中央値となる点、平均がeμ+σ2/2になる点が狙われやすいです。
- 対数収益率は期間をまたいで足し算できる性質があり、多期間のモデル化に便利である点を押さえましょう。
- 株価が一定値を下回る確率は、対数収益率を標準化して標準正規分布表で求めます。
要点まとめ
- ln Xが正規分布に従うとき、Xは対数正規分布に従う
- 値は常に正で、右に歪んだ形になる
- 平均eμ+σ2/2は中央値eμより大きい
- 対数収益率が正規分布なら株価は対数正規分布(ブラック・ショールズの前提)
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
