ひとことで言うと

  • 母分散の検定は、正規母集団の分散σ2がある値σ02に等しいかどうかを調べる検定です。
  • 検定統計量(n−1)s2 ÷ σ02が、自由度n−1のカイ二乗(χ2)分布に従うことを利用します。
  • χ2分布は左右非対称なので、両側検定では上側と下側で別々の臨界値を使います。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「母分散の検定」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (6) 推定と検定
協会の学習ポイント 正規母集団の母分散の検定方法について理解する。

母分散の検定とは

投資の世界では、平均リターンだけでなくリスク(ばらつき)そのものが関心の対象になります。「このファンドのリターンの標準偏差は、目標としている4%を上回っていないか」といった問いを統計的に確かめるのが母分散の検定です。

母集団が正規分布に従うとき、標本分散s2(n−1で割る不偏分散)を使った統計量(n−1)s2÷σ2は、自由度n−1のカイ二乗分布に従います。帰無仮説H0:σ2=σ02のもとでσ2にσ02を代入して計算し、その値がカイ二乗分布の端に入るかどうかで判断します。

カイ二乗分布の特徴

カイ二乗分布は、標準正規分布に従う変数の二乗の和の分布で、0以上の値だけをとり、右に裾が長い非対称な形をしています。平均は自由度に等しく、自由度が大きくなるほど左右対称に近づきます。

片側検定と両側検定

「リスクが大きくなっていないか」を見るならH1:σ2>σ02の右側検定、「リスクが小さいか」ならH1:σ2<σ02の左側検定です。両側検定では、上側α/2点と下側α/2点という2つの異なる臨界値を分布表から読み取ります。正規分布やt分布のように「±同じ値」とはならない点が大きな違いです。

なお、この検定は母集団が正規分布であることを前提としており、分布の裾が厚い場合などには結果が歪みやすい点にも注意が必要です。

押さえておきたい公式

χ2 = (n − 1) × s2 ÷ σ02H0のもとで自由度n−1のカイ二乗分布に従う
s2 = Σ(xi − x̄)2 ÷ (n − 1)標本分散(不偏分散)
記号 意味
s2 標本分散(不偏分散)
σ02 帰無仮説で想定する母分散
n − 1 自由度

具体例で確認

あるファンドのリターンの標準偏差が4%を上回っていないかを調べます。21期間のデータから、標本標準偏差は5%でした。H0:σ2=42、H1:σ2>42を有意水準5%の右側検定で調べます。

  1. 検定統計量:χ2 = (21 − 1) × 52 ÷ 42 = 20 × 25 ÷ 16 = 31.25
  2. 自由度20のカイ二乗分布の上側5%点:約31.41
  3. 31.25 < 31.41なので、H0は棄却できません

標本の標準偏差は5%と目標を上回っていますが、21期間程度のデータでは「偶然のばらつき」の範囲を超えるとまでは言えない、という結論です。両側検定なら、上側2.5%点(約34.17)と下側2.5%点(約9.59)の外側が棄却域になります。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「正規母集団の母分散の検定方法を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 母分散の検定にはカイ二乗分布を使う(t分布や正規分布ではない)という対応が問われやすいです。
  • 検定統計量は(n−1)s2÷σ02で、自由度はn−1です。分散と標準偏差の取り違え(二乗し忘れ)に注意しましょう。
  • カイ二乗分布は非対称なので、両側検定では上側・下側で別の臨界値を使う点が狙われやすいです。
  • 前提として母集団が正規分布であることが必要な点も押さえておきましょう。

要点まとめ

  • 母分散の検定は(n−1)s2÷σ02を自由度n−1のカイ二乗分布と比べる
  • カイ二乗分布は0以上で右に裾が長い非対称な分布
  • 両側検定では上側・下側で異なる臨界値を使う
  • 母集団が正規分布であることが前提

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。