ひとことで言うと

  • 最小二乗法は、実際の値と回帰直線の予測値の差(残差)の二乗和が最も小さくなるように、切片と傾きを決める方法です。
  • 回帰直線の説明力は決定係数R2(0〜1)で測り、Yの変動のうち回帰で説明できた割合を表します。単回帰ではR2=相関係数の二乗です。
  • R2が高くても、因果関係や将来の予測精度が保証されるわけではない点が回帰分析の限界です。

この記事では、証券アナリスト1次「数量分析と確率・統計」の学習ポイントのひとつ「最小二乗法と説明力・限界」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/数量分析と確率・統計
大分類 (7) 回帰分析(単回帰)
協会の学習ポイント 最小二乗法について理解し、推定された単回帰直線の説明力や限界について理解する。

最小二乗法と決定係数とは

散布図の点の間に直線を引く方法は無数にありますが、「最もよく当てはまる直線」を客観的に決めるのが最小二乗法(OLS)です。各データについて、実際の値Yiと直線上の予測値Ŷiの差(残差ei)を計算し、その二乗和Σei2が最小になるように切片と傾きを選びます。二乗するのは、プラスとマイナスの残差が打ち消し合わないようにするためです。

最小二乗法で求めた回帰直線には、平均の点(x̄, ȳ)を通る残差の合計がゼロになる残差と説明変数Xが無相関になるといった性質があります。

決定係数R2で説明力を測る

Yの平均からのばらつき全体(全変動)は、回帰直線で説明できる部分(回帰変動)と、説明できずに残った部分(残差変動)に分けられます。全変動に占める回帰変動の割合が決定係数R2です。R2=0.6なら、Yの変動の60%をXで説明できたことになります。単回帰では、R2は相関係数rの二乗に一致します。

単回帰分析の限界

回帰分析は、データの範囲内での平均的な直線関係を示すものにすぎません。関係が曲線的な場合や外れ値がある場合は結果が歪みます。また、R2が高くても因果関係があるとは限らず、過去のデータで当てはまりが良くても将来も同じ関係が続くとは限りません。誤差項に関する前提(平均ゼロ、分散一定、互いに無相関など)が崩れると、検定の結論も信頼できなくなります。

押さえておきたい公式

最小化する量:Σei2 = Σ(Yi − a − bXi)2
b̂ = Sxy ÷ Sxx  â = ȳ − b̂ × x̄
全変動(SST) = 回帰変動(SSR) + 残差変動(SSE)SST=Σ(Yi−ȳ)2、SSR=Σ(Ŷi−ȳ)2、SSE=Σei2
R2 = SSR ÷ SST = 1 − SSE ÷ SST = r2(単回帰)

具体例で確認

データ(X, Y)=(1, 2)、(2, 4)、(3, 5)、(4, 4)、(5, 5)に最小二乗法で直線を当てはめます。

  1. x̄ = 3、ȳ = 4、Sxy = 6、Sxx = 10、Syy(=SST) = 6
  2. 傾き:b̂ = 6 ÷ 10 = 0.6、切片:â = 4 − 0.6 × 3 = 2.2 → Ŷ = 2.2 + 0.6X
  3. 予測値:2.8, 3.4, 4.0, 4.6, 5.2、残差:−0.8, 0.6, 1.0, −0.6, −0.2(合計0)
  4. 残差変動:SSE = 0.64 + 0.36 + 1.00 + 0.36 + 0.04 = 2.4、回帰変動:SSR = 6 − 2.4 = 3.6
  5. 決定係数:R2 = 3.6 ÷ 6 = 0.6

このデータの相関係数は約0.775で、その二乗(0.7752≒0.6)が決定係数と一致することも確認できます。

動画で解説

この論点は、証券アナリストアカデミーのYouTubeで解説しています。テキストとあわせて確認してください(動画「単回帰分析・最小二乗法・信頼区間と予測区間を理解する」)。

試験で問われやすいポイント

  • 最小二乗法は残差の二乗和を最小化する方法である(残差の合計や絶対値の和ではない)という定義が問われやすいです。
  • 回帰直線が平均の点を通る残差の合計がゼロといった性質を押さえましょう。
  • SST=SSR+SSEの分解と、R2=SSR÷SSTの計算手順が狙われやすいです。
  • 単回帰ではR2=r2なので、相関係数からR2を求める(またはその逆の)問題が考えられます。rの符号はR2からはわからない点に注意しましょう。
  • R2が高くても因果関係や予測精度を保証しないという限界に関する正誤問題にも備えましょう。

要点まとめ

  • 最小二乗法は残差の二乗和を最小にする直線を求める方法
  • 回帰直線は平均の点を通り、残差の合計はゼロ
  • 決定係数R2=SSR÷SST、単回帰ではr2に一致
  • 非線形・外れ値・因果関係・将来の安定性に限界がある

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。