目標資本構成とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 目標資本構成とは、企業が中長期的に維持しようとする負債と株主資本の割合です。
- 収益の安定性、資産の性質(有形か無形か)、成長機会、税負担、収益性などによって、適切な負債比率は企業ごとに変わります。
- WACCの計算には、足元の数値ではなく目標資本構成(時価ベース)を使うのが原則です。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「目標資本構成と変動要因」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (5) 資本コストと資本構成 |
| 協会の学習ポイント | 目標資本構成とその変動要因について理解する。 |
目標資本構成とは
目標資本構成とは、企業が中長期的に維持しようとする負債と株主資本の割合(目標負債比率)のことです。トレードオフ理論に基づけば、負債の節税効果と財務困難コストが釣り合う水準が目標となりますが、その水準は企業ごとに大きく異なります。
実際の資本構成は、株価の変動、利益の蓄積、大型投資の資金調達などによって、目標から一時的にずれるのが普通です。企業はずれを一気に解消するのではなく、増資・借入・返済・自社株買い・配当などを通じて、時間をかけて目標に近づけていくと考えられます(部分調整)。
WACCの計算では目標資本構成を使う
企業価値評価や投資の意思決定でWACCを計算するときは、足元の一時的な負債比率ではなく、将来にわたって維持されると見込まれる目標資本構成を、時価ベースで用いるのが原則です。目標が公表されていない場合は、現在の時価ベースの資本構成、過去の推移、同業他社の平均などから推定します。
目標資本構成を左右する要因
負債をどれだけ使えるか(使うべきか)は、次のような要因で変わります。どの要因も「節税効果の大きさ」と「財務困難コスト・エージェンシー・コストの大きさ」のどちらかに結びつけて考えると整理しやすくなります。
整理しておきたいポイント
| 変動要因 | 負債比率を高めやすい場合 | 負債比率を低めやすい場合 |
|---|---|---|
| 収益・キャッシュフローの安定性 | 安定している(公益事業など) | 景気に左右されやすく変動が大きい |
| 資産の性質 | 有形資産が多く、担保価値や転売価値が高い | ブランド・技術・人材など無形資産が中心 |
| 成長機会 | 成熟企業で投資機会が少ない | 成長機会が多く、財務の柔軟性が重要 |
| 税負担 | 課税所得が大きく節税効果を活かせる | 繰越欠損金などで節税効果が小さい |
| 収益性 | トレードオフ理論では、利益が大きいほど節税の余地が大きい | ペッキング・オーダー理論では、高収益企業は内部資金が豊富で負債が少ない |
| 業種・製品の特性 | 標準的な製品で、倒産しても顧客への影響が小さい | アフターサービスや長期保証が重要な製品 |
成長機会が多い企業は、負債が多いと過少投資の問題(負債のエージェンシー・コスト)が起こりやすく、有望な投資のための財務の柔軟性を失う恐れがあります。無形資産が中心の企業は、財務困難に陥ると資産価値が大きく失われるため、財務困難コストが大きくなります。このため、IT・製薬などの企業は一般に負債比率が低く、電力・不動産などの企業は高くなる傾向があります。
具体例で確認
次の2社の目標資本構成を考えてみましょう。
- A社(電力・ガスなどのインフラ事業):料金収入が安定し、発電所やガス導管など担保価値のある有形資産を多く持っています。財務困難に陥る可能性が低く、課税所得も安定しているため、節税効果を活かして比較的高い負債比率を目標にしやすいといえます。
- B社(研究開発型のバイオベンチャー):売上が不安定で、価値の多くが特許や研究人材などの無形資産です。多額の研究開発投資を続ける必要があり、赤字で節税効果もほとんど活かせません。負債を増やすと財務困難コストや過少投資の問題が大きくなるため、負債比率を低く抑え、株式中心で調達するのが合理的です。
また、B社が上場直後の成長期を過ぎて利益が安定し、投資機会も落ち着いてくれば、目標負債比率を徐々に引き上げることも考えられます。このように、目標資本構成は企業のライフサイクルとともに変わりうるものです。
試験で問われやすいポイント
- 「収益が安定」「有形資産が多い」「成熟企業」ほど負債比率を高めやすい、という方向の判断が問われやすいです。
- 成長機会の多い企業や無形資産中心の企業で負債比率が低い理由を、財務困難コストや過少投資の問題と結びつけて説明できるようにしましょう。
- 収益性と負債比率の関係は、トレードオフ理論とペッキング・オーダー理論で予想が逆になる点に注意します。
- WACCの計算で使うウェイトは簿価ではなく時価、足元ではなく目標の資本構成を使うという原則がよく問われます。
- 記述式では、2社の特徴を比べて「どちらの目標負債比率が高いと考えられるか、その理由」を書かせる形が考えられます。
要点まとめ
- 目標資本構成は中長期的に目指す負債と株主資本の割合。
- 収益の安定性・資産の有形性が高いほど負債を使いやすい。
- 成長機会や無形資産が多い企業は負債比率を低めにするのが合理的。
- WACCには時価ベースの目標資本構成を用いる。
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※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
