価値創造の条件(ROIC>WACC)とは?意味と試験で問われるポイント|証券アナリスト2次・コーポレート・ファイナンス
ひとことで言うと
- 企業が価値を生み出す条件は、投下資本利益率(ROIC)が資本コスト(WACC)を上回ることです。
- ROIC>WACCなら成長は価値を高め、ROIC=WACCなら成長しても価値は変わらず、ROIC<WACCなら成長するほど価値を壊します。
この記事では、証券アナリスト2次「コーポレート・ファイナンス」の学習ポイントのひとつ「価値創造の条件」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。
| 分野 | 2次 コーポレート・ファイナンスと企業分析/コーポレート・ファイナンス |
|---|---|
| 大分類 | (8) 企業価値評価 |
| 協会の学習ポイント | 企業価値評価のフレームワークにおいて、資本利益率と資本コストの関係を用いて、価値創造の条件を理解する。 |
価値創造の条件(ROICとWACC)とは
企業は、株主や債権者から集めた資金(投下資本)を事業に投じ、利益を生み出します。資金の出し手は、その資金を他で運用した場合に得られたはずのリターン、つまり資本コストを要求しています。したがって、事業が資本コストを上回る利益率を上げたときに初めて、企業は出し手の期待以上の価値を生み出したといえます。
成長は常に良いことではない
「売上や利益が伸びれば企業価値は上がる」と考えがちですが、成長するには設備や運転資本への再投資が必要です。その再投資が資本コストを下回る利益率しか生まないなら、成長するほど資金の出し手にとっては損になります。価値を決めるのは、成長率そのものではなく、ROICとWACCの差(スプレッド)と成長率の組み合わせです。
バリュー・ドライバー式
一定成長を仮定すると、企業価値は来期のNOPAT、成長率g、ROIC、WACCの4つで表せます。成長に必要な再投資率はg÷ROICなので、NOPATのうち残りがFCFとして資金の出し手に回ります。この式から、ROIC=WACCのとき企業価値はNOPAT÷WACCとなり、成長率に関係なく一定になることが確認できます。
押さえておきたい公式
| ROICとWACCの関係 | 成長(g↑)の効果 |
|---|---|
| ROIC>WACC | 企業価値が増える(価値創造) |
| ROIC=WACC | 企業価値は変わらない |
| ROIC<WACC | 企業価値が減る(価値破壊) |
具体例で確認
来期NOPAT=100、WACC=8%、成長率g=3%の企業で、新規投資のROICだけを変えてみます。
- ROIC=12%:100 × (1 − 0.03 ÷ 0.12) ÷ (0.08 − 0.03)=100 × 0.75 ÷ 0.05=1,500
- ROIC=8%:100 × (1 − 0.375) ÷ 0.05=1,250
- ROIC=6%:100 × (1 − 0.5) ÷ 0.05=1,000
成長しない(g=0)場合の価値は100 ÷ 0.08=1,250です。ROIC12%なら成長で価値が250増え、ROIC8%なら成長しても1,250のまま、ROIC6%なら成長によって価値が250減ることがわかります。
試験で問われやすいポイント
- 価値創造の条件はROIC>WACCであり、成長率の高さそのものではない、という点が中心です。
- ROIC=WACCのときは成長率を変えても企業価値が変わらないことを、式で示せるようにしておきましょう。
- 再投資率=g÷ROICを使って、NOPATからFCFを求める計算手順が問われやすいです。
- 記述式では、「増収増益なのに株価が上がらない理由」などを、スプレッドの観点から説明させる形が考えられます。
- ROICは会計上の利益に基づくため、のれんや一時的損益の扱いによって見え方が変わる点にも注意しましょう。
要点まとめ
- 価値創造の条件は、投下資本利益率が資本コストを上回ること
- 企業価値=NOPAT1×(1−g÷ROIC)÷(WACC−g)
- ROIC>WACCなら成長は価値を高め、ROIC<WACCなら価値を壊す
- スプレッド(ROIC−WACC)と成長率の組み合わせで価値が決まる
証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。
※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。
