ひとことで言うと

  • 信任義務とは、顧客から信頼されて業務を任された専門家(受任者)が、その信頼に応えて行動する義務です。
  • 信任義務は、忠実義務(顧客の利益を最優先する)と注意義務(専門家として十分な注意を払う)の2本柱で支えられています。

この記事では、証券アナリスト1次「職業倫理・行為基準」の学習ポイントのひとつ「信任義務と忠実義務・注意義務」について、意味と試験で問われやすいポイントを解説します。

分野 1次 科目Ⅲ/職業倫理・行為基準
大分類 (1) 証券アナリスト職業行為基準の意義
協会の学習ポイント CMAに求められる信任義務と、それを支える忠実義務や注意義務の関係について説明できる。

信任義務とは

顧客がアナリストや運用者に投資の分析や運用を任せるのは、その人の専門的な知識と誠実さを信頼しているからです。顧客は専門家の行動をすべて監視することはできず、専門家のほうが情報や知識の面で優位に立っています。このような関係では、専門家が自分の利益を優先したり、いいかげんな仕事をしたりしても、顧客はそれを見抜きにくいという問題があります。そこで、任された側に重い義務を課すのが信任義務(フィデューシャリー・デューティー)の考え方です。

忠実義務

忠実義務は、顧客の利益のために誠実に行動し、自分や所属する会社、他の第三者の利益を顧客の利益より優先してはならないという義務です。利益相反の回避や開示、顧客の取引の優先、顧客の資産や情報の不正利用の禁止などは、忠実義務から導かれる行動です。

注意義務

注意義務は、職業的専門家として通常期待される水準の注意を払い、慎重かつ適切に業務を行う義務です。民法上の「善良な管理者の注意(善管注意義務)」に相当する考え方です。十分な調査・分析にもとづく合理的根拠のある判断や、顧客の状況に適した投資かどうかの確認などが含まれます。

両者の関係

忠実義務は「誰のために行動するか」(顧客のため)、注意義務は「どのように行動するか」(専門家として十分な注意をもって)を定めているといえます。どちらか一方だけでは信任義務を果たしたことにはなりません。顧客のためを思っていても分析がずさんなら注意義務違反、分析が優れていても自分の利益を優先すれば忠実義務違反になります。

整理しておきたいポイント

項目 忠実義務 注意義務
中心となる問い 誰の利益のために行動するか どれだけ慎重・適切に行動するか
内容 顧客の利益を最優先し、自己や第三者の利益を優先しない 職業的専門家として通常期待される注意を払う
具体的な行動の例 利益相反の回避・開示、顧客取引の優先 合理的根拠のある分析、適合性の確認、記録の保持
違反の例 顧客の注文より先に自己売買する 十分な調査をせずに投資を推奨する

具体例で確認

ファンドマネージャーが、顧客の口座で大量に購入する予定の銘柄を、その注文より先に自分の口座で買ったとします。顧客の大量の買いで株価が上がれば、本人は利益を得られますが、顧客はより高い価格で買うことになります。これは自分の利益を顧客より優先しており、忠実義務に反します。

一方、別のファンドマネージャーが、顧客のためを思って運用しているものの、企業の決算内容をよく確認しないまま噂だけで銘柄を組み入れたとします。私的な利益を得ていなくても、専門家として必要な調査を怠っているため、注意義務に反すると考えられます。

試験で問われやすいポイント

  • 信任義務が、忠実義務と注意義務の2つから成るという構造。
  • 忠実義務(顧客の利益の優先)と注意義務(専門家としての注意)の定義の区別。
  • 事例を読んで、忠実義務違反か注意義務違反かを判断させる問題。
  • 信任義務が生じる背景として、顧客と専門家の間の情報や知識の格差があること。
  • 足切りのある分野なので、基本概念の定義は正確に押さえておきましょう。

要点まとめ

  • 信任義務は、顧客の信頼を受けて業務を任された専門家が負う義務。
  • 忠実義務は、顧客の利益を自己や第三者の利益より優先する義務。
  • 注意義務は、職業的専門家として十分な注意を払って業務を行う義務。
  • 両方を満たして初めて信任義務を果たしたことになる。

証券アナリストアカデミーのYouTube(@cma-fa-academy)では、学習ポイントに沿って論点を1つずつ解説しています。

▶ 証券アナリストコミュニティーに参加する

※学習ポイントは日本証券アナリスト協会「【2026年度】CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイント」より引用しています。